マネーフォワードがFreeeに勝訴「特許権侵害なし」と認められた理由に迫る


Freeeがマネーフォワードを提訴


Freeeとマネーフォワードのベンチャー企業同士の知財訴訟がありました。 事件の概要としては、クラウド会計を提供するFreeeが同業のマネーフォワードに対して特許権侵害を根拠とした差止請求訴訟を起こしたというものです。

マネーフォワードは、クラウド会計ソフトとして、「MFクラウド会計」のサービスを提供しており、仮に差止請求が認められてしまうと、現在のサービスを提供できなくなる可能性がありました。

この2社はクラウド会計では有名な2社であり、完全な競合環境にあります。 Freeeとしては、マネーフォワードを一気に突き放したいという狙いがあったとも考えられます。


Freeeの特許の内容


Freeeの特許の内容としては、銀行、クレジットカード会社等が提供するウェブ明細に記載された取引内容の記載(取引内容に含まれるキーワード)に基づいて、勘定科目を特定して自動仕訳をするというものです。

また、取引内容に含まれるキーワードが複数含まれる場合には、最も優先順位が高いキーワードと対応する勘定科目に自動仕訳をするというものです。

上述したように、差止が認められると、マネーフォワードは今後、自動仕訳機能を持つサービスを提供できなくなり、これによって、競争力を失ってしまう可能性がありました。


Freee側の主張


Freee側は、 『「マネーフォワードの方法は、「タクシー」と記載された取引に「旅費交通費」の勘定科目を付与し、「五反田」と記載された取引に「会議費」の勘定科目を付与し、「書店」と記載された取引に「新聞図書費」の勘定科目を付与し、「ドコモ」と記載された取引に「通信費」の勘定科目を付与しているから特許権の侵害』と主張しました。

Freeeの特許の内容は、入力(例えば、取引内容に含まれるANAの文字)と出力(例えば、旅費交通費という勘定科目)を対応付けたデータをいくつも保持するというものです。

これによって、取引内容欄に「ANA」と記載されている場合、「旅費交通費」という結果を出力し、自動仕訳を可能にするというものです。

また、取引内容に「店舗チケット」と記載されている場合、「店舗チケット」の一部である「店舗」と対応する「福利厚生費」や、「チケット」と対応する「短期借入金」などを出力するというものです。


マネーフォワードの製品の詳細


マネーフォワードの製品は、機械学習(コンピューターが、学習データから、データの判断に必要なアルゴリズムを自動生成し、新たなデータについてこれを適用して予測する)を利用して、入力された取引内容と対応する勘定科目を推測するものです。

すなわち、マネーフォワードの製品は、新たな取引についてもより高い確率で適切な勘定科目に自動仕訳できるというものです。

例えば、マネーフォワードの製品では、「店舗チケット」に対する出力は「店舗チケット」の一部である「店舗」と対応する「福利厚生費」や、「チケット」と対応する「短期借入金」のいずれでもない「旅行交通費」などの結果を出力します。

さらに、マネーフォワードの製品は、同じ言葉を含む取引内容であっても、金額に応じて異なる勘定科目を出力していることから、単にキーワードだけで勘定科目を選定していないとも言えます。


マネーフォワードが勝訴した理由


最終的には、単に対応テーブルを参照するという、Freeeの特許の範囲外と認定され、特許権の侵害が認められず、マネーフォワードが勝訴しました。

もしかしたら、このような認定をされる可能性があったことをFreee側は認識していたかもしれません。しかし、マネーフォワード側は、特許を1件しか保有していない状況のため、訴えられても、Freeeを訴え返すことができなかった可能性が高いです。

ライバル同士の会社は、お互いの特許権を侵害し合うということが良くあります。また、そのことをお互いに認識して冷戦状態を維持することは珍しくありません。

一方的に他社の権利を侵害していた場合は、一方的に攻められるということが考えられます。 そのような点で、特許権を持っていることによる防御の意味は大きく、また、特許権は新規事業参入へのチケットと言うことも可能です。


まとめ


今回は、方式が違うということで、特許権の侵害が認められず、マネーフォワードが勝訴しました。 しかしながら、仮に敗訴していたら、マネーフォワードの事業に与えるダメージは大きかったと言えます。 今回のFreeeの特許は、自動仕訳について、非常に広い範囲で権利化されているものの、特許そのものの有効性は否定されていません。

そのため、当該特許の内容について、独占的にこれからも実施できるという点では、Freeeの市場における優位性は、失われず、Freeeの特許は今後も競合にとっては脅威になる可能性があります。

特許を取得することは、自社の技術やサービスを守ることに大きな役割を果たします。 万が一法廷での争いとなった場合には、訴える側であっても、訴えられる側であっても、その存在は非常に重要なものとなります。

参照 : SHARES 弁理士 原田貴史のページ

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