導入前に要確認 ! 固定残業代制度のメリットと5つの留意点
法務



残業代の支払いが苦しい、残業代を削減したいという理由で、固定残業代制度の導入を考えている経営者の方からのご相談を受けることがしばしばあります。しかしながら、そもそも固定残業代制度は残業代を削減するための制度ではなく、導入したからと言って必ずしも残業代の削減という目的が達成できるとは限りません。

さらに言えば、固定残業制度を導入するにあたっては、以下に述べるとおり、手続面においても留意しなければならない点もあり、いくつかのハードルを越えなければなりません。


固定残業代制度とは


固定残業代制度とは、一定時間分の固定の残業代をあらかじめ支給し、当該一定時間内の残業であれば、残業代を支給しないという制度をいいます。

みなし残業代制度又は定額残業代制度と呼ばれることもあります。 かかる固定残業代制度は、法律上の制度ではありませんが、実際に採用している企業も多く、裁判例においても一定の要件を満たす限り許容されている制度です。


固定残業代制度導入の留意点


事後的に固定残業代制度を採り入れようとする場合、特に以下の各事項に留意する必要があります。


(1) 従業員の個別の同意の取得


現在支払っている賃金の中に、固定残業代を含ませる制度設計(基本給+固定残業代=現在の賃金)に変更する場合、確かに企業側としては、結果的に残業代の支払いを減らすことが可能となります。一方で、従業員側からみれば、基本給が減少することになりますので、明らかに不利益な変更となります。

したがって、そのような固定残業代制度を採り入れるにあたっては、従業員に制度内容をよく説明のうえ、従業員の個別の同意を取ることが必要です。

もし、個別の同意を取らずに、又は個別の同意を取れずに、強硬的に制度変更したとしても、従来の制度設計のままで計算された残業代が請求される可能性は否定できません。また、基本給をベースに退職金等を決めている場合、基本給が下がることで退職金等にも影響が出ますのでこの点も個別の同意が必要となります。


(2) 就業規則の変更、労働契約の変更等


固定残業代制度を採用するにあたり、支給する賃金の中で、基本給部分と固定残業代部分とが明確に区別され、その点が従業員にも周知できるようにされていなければなりません。

したがって、就業規則や個別の労働契約において、支給される賃金の中に、月何時間分の残業代が含まれているのか、固定残業代として支払われている金額はいくらなのか等を明記する必要があります。


(3) 固定時間分を超えて労働が行われた場合


固定残業代制度を取り入れた場合であっても、固定残業代として計算されている時間を超えて従業員が労働した場合は、当然にその超えた時間分の割増賃金を支払わなければなりません。

さらに、(2)とも関連しますが、「固定残業代として計算されている時間を超えて労働した場合に別途割増賃金を支給する」ことは、労働契約等に明記して従業員にもしっかりと周知する必要があります。

また、上述のとおり、固定残業代制度を導入していても、定められた時間を超えた場合には割増賃金が発生することになるため、従業員の労働時間の管理は必須です。固定残業代制度を導入したからといって労働時間を管理しなくてもよいということにはなりませんので留意が必要です。


(4) 最低賃金の確認


固定残業代制度の導入にあたり、基本給の減少が伴う場合、稀に基本給が最低賃金を下回る状態で設定してしまうケースが見受けられます。

したがって、固定残業代制度を採り入れるにあたり、基本給が各自治体の最低賃金を超えているか(基本給÷1ヶ月の平均所定労働時間が最低賃金を超えているか)は確認が必要です。


(5) 36協定の締結及び届出


事後的に固定残業代制度を導入する場合、既に従業員に時間外労働が発生しているものと思われますので、既に36協定の締結と届出はなされているかと思います。

仮に、今後発生するであろう時間外労働を見据えて、新たに固定残業代制度を導入するのであれば、このタイミングで36協定の締結と届出をする必要があります。


固定残業代制度を導入する企業側のメリットとは


以上のとおり、固定残業代制度を導入するにあたっての留意点を述べてきましたが、それでは、固定残業代制度を導入する企業側のメリットは何があるでしょうか。

上述のとおり、従業員の同意が取得できたなど一定の場合、企業側からしても賃金の支払総額を減らせるケースがあることは否定しません。しかしながら、上述のとおり、固定残業代制度は、そもそも残業代を減らすための制度ではないため(そのような目的で導入しようという企業はありますが)、必ずしも減らせるとも限りません。

むしろ、固定残業代制度を採り入れたとしても、上述の「固定残業代制度導入の留意点」(3)のように、定められた時間を超過して残業が行われた場合は、当然に割増賃金は支払う必要がありますし、定められた時間を下回った残業しか行われなかったとしても、あらかじめ定められた固定残業代を支払う必要があります。そう考えると、企業側にとって、残業代を減らせないばかりか、余分な残業代を支払う可能性さえある制度といえそうです。

それでも、メリットを見出すとすれば、固定の一定時間分の残業の計算がなくなるという点において給与計算の手間が省けるということはあるかもしれません。もちろん、それでも、定められた時間を超過した部分の割増賃金の計算は必要ですし、労務管理もしっかりと続ける必要があります。


まとめ


固定残業代制度について解説しましたが、いかがでしたでしょうか ?

ご不明な点がございましたら、悩む前にまずは専門家に相談することをおすすめいたします。お気軽にご相談ください。

参照 : SHARES 弁護士 大塚一暁のページ

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