3分でわかる ! 専門家が教えるアプリの商標登録
知財



商標登録とは、商品名やサービス名を日本国内において独占する制度です。
ですから、自社の商品名やサービス名の商標登録を怠った場合、誰かに先にその名前を独占されてしまい、自社がその名前を使えなくなる場合があります。

これは、アプリの名前に関しても、基本的には同様です。
ですから、自社でアプリを用いたサービスを提供している会社の皆様は、アプリの名前の商標登録を検討する必要があります。

しかし、アプリの名前に関して難しいことは、全てのアプリについて商標登録する必要性があるわけではないという事情があります。
しかも、商標登録するとしても、その「区分」(権利を獲得する分野)は、何にするか、非常に複雑です。

この記事では、非常に複雑な事情がある、アプリ名の商標登録についてできる限りわかりやすく解説していきます。



アプリの名前も商標ですか ?


(1) CDアルバムのタイトルが商標としての使用でないとされた事件


例えば、書籍のタイトルや、CDのタイトル、楽曲のタイトル、ゲームのタイトルなどについて、「これは商標としての使用ではなくて、書籍(あるいはCD、ゲーム)の内容を表しているに過ぎない」という見解があることを聞いたことがある方もいるかもしれません。

例えば、この分野で有名な判例として、「UNDER THE SUN 事件」というものがあります。あるミュージシャンが「CD」の区分で「UNDER THE SUN」という商標を商標登録していたのに対し、他人が同じ名前のタイトルのCDアルバムを販売したというものです。

この事件では、結局、「UNDER THE SUN」というアルバムのタイトルは、CDの内容を表しているに過ぎず出所を表示していない、つまり、商標としての使用でないため、商標権侵害には該当しないという判決となりました。


(2) アプリの名前が商標かどうかはケースバイケース


上では難しい判例の話をしましたが、この判例の話は、どうぞ忘れていただければと思っています。

私が皆さんに覚えておいていただきたい結論としましては、アプリの名前が商標と言えるかどうかはケースバイケースであり、また、「念のため商標登録しておく」ということも必要だということです。

なぜ上記の判例を忘れてくださいと言うかというと、判例というのは、事件の背景が変われば、違う判決が出るためです。
上記の事件と全く同じ条件の事件があったら、同じ判決になるでしょうが、それほどこの判決はシンプルではありません。

他人が「UNDER THE SUN」というタイトルのCDアルバムを販売した行為が商標権侵害でないと結論づけられたのには、他にも複数の事情があってのことなのです。

弁理士の中でもたまに、「CDアルバムのタイトルは商標ではないという判決が出ている」と断言する人がいますが、これは、正確な表現ではありませんので、注意しましょう。アプリの名前に関しても、同様のことが言えます。


(3) 「内容そのまま」のアプリ名は、商標登録しなくてOK


アプリの名前については、書籍やCDと比べて歴史が浅く、グレーな部分が多いですが、とりあえず今確かに言えることとしては、「アプリの内容をそのまま表したようなアプリ名は、商標登録する必要はない」ということです。

例えば、御社がオリジナルで作ったアプリであったとしても、その名前が「株価リサーチ」「企業名図鑑」「タイピング入門」といった、それこそ「アプリの内容そのもの」である場合は、商標登録を必要はありません。

これは、アプリの名前に独特のことではなく、商標登録全般に言えることです。


(4) それ以外のアプリは、念のため商標登録を検討しましょう


そして、(3)の「内容そのまま」のアプリ名以外は、念のため、商標登録について弁理士に相談することをお勧めいたします。

特に、御社のサービスをサポートするためのアプリではなくて、「アプリ自体を広く流通させたい」ような場合は、商標登録は非常に重要な手続きとなります。


かなり複雑 ! アプリの商標登録の区分は9類だけではない


「アプリ名」を商標登録する場合、その「区分」はどうなるでしょうか ?
これはかなり複雑な判断が必要になります。


(1) 第9類 コンピューターアプリケーション


「物」の「商品」としての「コンピューターアプリケーション」は第9類に該当します。音楽ファイルもゲームファイルも、それ自体を「商品」としてみた場合は、第9類です。

これは、アプリの分野では最も初めに思いつく区分ですので、比較的商標登録する優先度が高いです。


(2) 第42類 オンラインによるコンピュータープログラムの提供


こちらは、(1)の第9類と非常に似ているように見えますが、第9類とは異なり、「商品」ではなく「サービス業」の区分です。
こちらは、「アプリ」と言った時に2番目に頭に浮かぶ区分ですので、商標登録する優先度は高めです。

もし今回のアプリが、御社のインターネット上でプログラムを提供するサービスと連動している場合は、ぜひ商標登録しておきたい区分と言えます。


(3) 第35類 広告業など


アプリの収益モデルが、広告業によるものである場合、この区分でも権利を取得を検討しましょう。


(4) その他、アプリに関連のある区分


上記の、(1)(2)(3)は、「アプリといえば」という代表的な区分となりますが、その他にも、具体的なアプリの内容によって、たくさん関連する区分があります。

例えば、次のようなものがあります。

第35類 オンライン求人、マッチング
第38類 オンラインチャットや電子掲示板
第41類 オンラインゲーム、オンライン英会話教育


重要なのは、そのアプリが「どんなサービスをするためのアプリなのか」ということです。単に「第9類 アプリ」の区分で登録するだけでなく、そのアプリで提供するサービス内容も考えなくてはならないのです。

例えば、医療情報を提供するアプリであれば、第44類(医療情報の提供)の区分は必須となってきます。


アプリの商標登録の費用と、安く済ますための工夫


商標登録は、区分が増えるとほぼ区分数の倍数で印紙代が増えていきます。
そう考えると、アプリ名の商標登録はかなり費用がかかる場合もあります。

ここでは、商標登録にかかる費用を軽減させるためのいくつかの作戦をご提案します。


(1) アプリ名と会社名を同じにする


会社名は、いずれは商標登録しなくてはならないものだと思います。
そう考えると、会社名とアプリの名前を同じにすれば、単純に1件分の商標登録の費用が浮くことになります。

あるいは、例えば、「Amazon books」のような形で、会社名の後ろに普通名称をつけて、アプリの名前にするという手も考えられます。


(2) 「内容そのまま」のアプリ名にする


特徴的なアプリ名をつけてアプリ名でブランディングをするのではなく、「〇〇社」という自社名でブランディングをして、アプリの名前は普通名称で良いかな、というブランディングの作戦も、一つの手だと思います。


(3) アイコンは自社のロゴにする


実は、アプリのアイコンというのも、一種の商標です。アプリを広く普及させたいのであれば、このアイコンも大切にしなければなりません。
しかし、アプリ名とアイコン、両方商標登録するとなると費用がかかりすぎる・・・という場合は、アイコンを会社のロゴにするというのも良いてです。

会社のロゴは、会社がある程度大きくなったら、商標登録する必要性が高いため、これをアイコンと兼用にしてしまうという作戦です。


まとめ


いかがでしたでしょうか ? スマートフォンなどのアプリの商標登録については、まだまだ歴史が浅くて、難しい部分があるかと思います。
この記事を読んでみて、少しでも頭が整理されれば嬉しく思います。

また、不明な点や疑問点は、お気軽に私までご相談いただければと思います。
参照 : SHARES 弁理士 井上 暁彦のページ

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