「会社名」も商標登録が必要か ?
知財



「会社名も商標登録する必要があるでしょうか ? 」というご質問は、商標登録に関するよくあるご質問ベスト5に入るくらい、よくあるご質問です。

しかし、非常によくあるご質問ではありながら、この質問への回答は、結構説明するのが難しいテーマと言えます。
特に、中小企業にとって、会社名の商標登録というのは、どう考えたら良いのか ?

ここでは、「会社名」の商標登録について、詳しく説明していきます。



会社名も商標登録は重要


(1) 会社名も商標


まず、基本的なことからお話ししますが、会社名も一種の商標です。
ですから、商標登録することは重要な手続きです。

登記簿上の商号である「ABC株式会社」というフルネームを商標登録する会社もありますが、どちらかというとこれを省略した「ABC」だけで商標登録する会社の方が多いと思います。

商標とはビジネス上の「目印」「マーク」のことを意味しますので、会社名というのは、とても伝統的でスタンダードな商標といえます。


(2) 会社名を商標登録しなくても「普通に使う」ことはできます


さて、ここで説明が難しくなるのは、「会社名を商標登録しないとどうなるか ? 」ということです。 会社名というのは、法人登記した正式な名称であり、いわば法人の「本名」ようなものです。
ですから、個人が自分の本名を使う権利があるのと同じで、法人は、自分の会社名をある程度自由に使う権利があります。

例えば、「ABC株式会社」という会社が商標登録をしていなかったとします。
それで、他人が「ABC」という商標を商標登録してしまったとしても、ABC株式会社は、「ABC株式会社」という正式な会社名を「普通に使う」ことは許されます。

この「普通に使う」というのは、例えば、名刺に普通のフォントで「ABC株式会社」と書いたり、ホームページの会社概要の欄に普通の文字で小さく「ABC株式会社」と書いたり、パンフレットの最下部に小さく「ABC株式会社」と書いたり、といったことです。


(3) 会社名を商標登録しないで、使用が制限される場合


一方、自社の会社名といえども、制限される使い方もあります。

例えば、「ABC株式会社」を商標登録しないでいて、誰か他の人に「ABC」を商標登録されてしまったとした場合、ABC株式会社は、次のような使い方は、できなくなります。

● ホームページの最上部に大きく「ABC株式会社」と記載する
● パンフレットの最上部に大きく「ABC株式会社」と記載する
● 商品パッケージに大きく「ABC株式会社」と記載する
● 普通の文字ではなく「ロゴ」にして「ABC株式会社」と記載する
● 略称にして「ABC」と記載する


これらを見て、思ったより制限が厳しいと感じる方も多いのではないでしょうか ?
例えるならば、他人の本名に関してとやかくいうことはないけれど、それを使って商売をして、紛らわしい行為をするならば話は別・・・といった感じかと思います。 自由に会社名を使いたいならば、会社名も商標登録を検討した方が良いでしょう。


会社名よりも商品名やサービス名を優先して商標登録する方が良い場合も


さて、会社名も商標登録した方が良いと書きましたが、中小企業が予算がない中、「最優先」に商標登録すべきは何かを考えると、それは、必ずしも会社名ではない場合があります。

ここでは、「最優先に商標登録すべきなのは何か?」ということを解説していきます。


(1) 銘菓「萩の月」の製造元をご存知ですか ?


例えば、「萩の月」という仙台の銘菓があります。日本人の多くが知っている有名なお菓子ですが、このお菓子の製造メーカーを知っている方は、あまり多くないのではないでしょうか ?

このように、お菓子メーカーにおいては、ブランディングにおいて重要なのは、メーカーの「会社名」ではなく、お菓子の「商品名」だったりします。
それは、お菓子の場合、一番よくお客さんの目に触れ、認知されるのが、商品名だからです。


(2) 「需要者」に直接認知されるものから優先して商標登録する


したがって、お菓子メーカーの場合、メーカーの「会社名」より、お菓子の「商品名」優先して商標登録する場合も多いです。
これが、飲食店の場合であれば、多くの場合、一番優先して商標登録するのは、「店名」だと思います。
お客様に一番直接的に認知されるのが、「店名」だからです。インターネットを通じたサービスであれば、サービス名(サイトの名前)が優先されるかと思います。

このように、「商標登録する必要があるか ? 」「何を商標登録するか ? 」といったことを考える場合、自分の利益や不利益だけでなく、お客様の視点というものを考えて決める必要があります。

この「お客様」のことをもう少し広くいうと、商標の専門用語で「需要者」という言葉を使います。これは、エンドユーザーのみならず、取引先や小売店なども含む概念です。
会社名の商標登録について考えるときも、「もしこの会社名が使えなくなったら、取引先に迷惑をかけないか ? 取引先からの信用を失わないか ? 」と言った視点が必要です。


「会社名」を「ブランド名」にするという経営戦略


さて、この記事ではずっと「会社名の商標登録」についてご説明してきましたが、実は、近年、「会社名」とブランド名を統一する会社が増えてきています。

皆さんのよくご存知の会社で言いますと、大手メーカーなどで多数の例が見られます。

パナソニック(旧松下電器産業)
シャープ(旧 早川電機工業)
ケンウッド(旧 トリオ商事)
SUBARU(旧 富士重工業)



(1) ブランディングのためには一貫して同じ名前を使うのが有効


このように会社名をブランド名に変更する理由は、ものすごく簡単に言いますと、ある名前を一貫して使い続ける方がブランディング的に強いためです。

ですから、会社名、店舗名、商品名・・・など、それぞれに独立した商標を使うよりは、一貫した一つのブランド名をつけて、その一つのブランド名をきっちり商標登録するというのもおすすめです。

例えば、次のような形が考えられます。

<例1>
会社名:スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社
ブランド名 : スターバックス
店舗名 : スターバックスコーヒー
商品名 : スターバックス ラテetc.

<例2>
会社名 : シャネル 株式会社
ブランド名 : シャネル
店舗名 : シャネル



(2) 会社名=ブランド名にすると、商標登録のコストも半分になります


また、このように会社名とブランド名を同じにすると、会社名とブランド名をそれぞれ別に商標登録する必要あはりませんので、商標登録のコストも半分に抑えられます。これは、会社を立ち上げたばかりの経営者にとっては、結構大きなメリットかと思います。

ですから、例えば、今まで個人事業でやっていて、新しく会社を立ち上げるという場合、会社の名前は、ブランド名と統一するというのは非常に良い手だと思います。


まとめ


今回は、ご質問の多い「会社名の商標登録」についてまとめて解説しました。
会社名の商標登録についての知識だけでなく、「何を優先的に商標登録するか ? 」というった観点でも、ご参考にしていただければ幸いです。

ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
参照 : SHARES 弁理士 井上 暁彦のページ

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