商標の類似性と3つの観点について専門家がわかりやすく解説
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商標登録をしたいと思ったとき、考えなければならないことの一つに、商標の類似性があります。

今回は、商標の類似性とはどのようなものかをお伝えいたします。



商標の類似性とは何か


商標の類似性についてお話するにあたって、はじめに商標登録の全体の流れから捉えていくのが良いかと思います。
まず、商標出願を行う前に、必ずしなければならないことは、商標の調査です。
商標調査では、商標出願しようとしている名称が登録される可能性があるかどうかなどを判断します。

その判断の基礎となるのが、商標登録要件です。
商標登録要件は沢山ありますが、その一つに、商品の出所について誤認混同を生じさせないため、類似性の概念があります。 商標の類似性について考慮するときには、商標の有する外観、称呼及び観念という3つの観点があります。
以下では、類否の3つの観点についてわかりやすく解説します。


外観類似


視覚的に、つまり見た目が紛らわしいかどうか、という観点で判断します。
この外観類似は、主にロゴの商標出願をする場合に検討する必要があります。

実例をご紹介します。
こちらの犬の図ですが、類似か非類似のどちらだと思いますか ?


答えは、「類似している」です。
左の商標について、審決取消訴訟が起こされた際、東京高裁で類似との判断が下されました(東京高判平13年11月27日)。

判断の理由は、「実際に見た人が受ける印象の違いが、外観全体から直ちに受ける視覚的印象をさほど減殺するものではなく、両商標の外観は互いに類似するものというべき、」というものでした。
並べてみると細部が異なっていて、違う印象を受ける両商標ですが、例えば、異なる場所と時間において、個別に見た時に受ける印象を考えるとどうでしょうか。
ともに大型犬の立位の図形をシルエット状に黒塗りで表現されていて、どちらの犬も左向きで、駈けたり、跳躍したりしていない静的な状態である点において共通です。
そのため、同じ会社の商品だ、などと出所の混同を生ずるとして、類似とみなされました。


称呼類似


読み方が紛らわしいか、つまり耳で聞いたときに間違えやすいか、という観点で判断します。
こちらも実例をご紹介します。

「BARICAR」と「バルカー」は類似でしょうか ? 非類似でしょうか ?
実際に声に出してみると分かりやすいです。バリカー、バルカー。
両商標の違いは第2音の「リ」と「ル」のみであって、しかもこの音が弱音(弱く発音する音)であることがお分かりかと思います。
したがって答えは「類似している」です。

判例では、「両商標の称呼が1個の長音を含む3個という短音の構成からなること及び「リ」と「ル」とが帯有母音を異にすることを考慮に入れても、これらを一連に称呼するときは、語感、語調が互いに近似し、彼此混同されるおそれがある、」とされました(東京高判昭61年3月12日)。

つまり、もし、BARICARではなく、PARICARで出願されたとしたら、第1音が半濁音と濁音とで異なることから、称呼類似とされず登録された可能性が高かったのではないかと考えられます。


観念類似


意味内容が同一かどうか、つまりイメージされる印象や事柄が同じかどうか、という観点で判断します。
こちらの実例はどうでしょうか。類似でしょうか ? 非類似でしょうか ?


外観は異なっていますが、観念という観点では「類似している」が答えです。
「Afternoon」が「午後」を、「Tea」が「茶」又は「紅茶」を意味し、想起することは、日本人にとって極めて容易であり一般的ことといえます。

判例では、「両商標とも特段注目されるような書体などでもないから、外観ではなく、むしろ観念で印象付けられ、記憶するのが一般的として、観念類似で誤認混同されるおそれがある」とされました(東京高判平16年3月29日)。


まとめ


商標の類似性について3つの観点をお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。出願を考えている商標で、似たような形や同じ名前の商標がある ! と思った方もいらしたかもしれませんが、諦める必要はありません。
商標審査基準には「商標の類否の判断は、商標の有する外観、呼称及び観念のそれぞれの判断要素を総合的に考察しなければならない」と規定されています。

つまり、外観が似ている、というそれだけで登録を拒絶されると判断するのは早計といえます。
仮に、称呼が互いに類似する場合であっても、称呼のみで取引される実情がなく、外観、観念、称呼について総合的に判断すると、外観と観念の相違が称呼の共通を凌駕する場合には、両商標は非類似とされるケースもあります。

例えば、2つの商標の類否判断について示した平成23年(行ケ)第10252号 審決取消請求事件の判決の内容を参照すると、

『……以上のとおり,本願商標と引用商標とは,その外観,観念において大きく相違し,称呼において基本的に同一であるところ,海の母音である「あい」も,葉や陽の母音である「おう」も,漢字の音読みとしてありふれた読みであり,これに「K」と「Y」の子音を組み合わせた「KあいYおう」との称呼は2文字の漢字のありふれた読みからくるもので,外観,観念の相違に比較すると,識別力が弱いものである。
そして,本件において,この判断に反して特に考慮すべき取引の実情は認められないから,本件においては,外観と観念の相違が称呼の共通を凌駕するものというべきであって,指定商品について共通するものがあるとしても,本願商標と引用商標とは類似するものではないというべきである。』

と裁判所が判断を示したものがあります。

このように、商標が類似するか否かの判断は、外観・称呼・観念を総合的に検討・判断した上で、商標出願を行うことが、重要になってきます。いずれか一つが類似する場合であっても、まずは専門家に一度ご相談いただくことをおすすめいたします。

ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
参照 : SHARES 弁理士 原田貴史のページ

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