登録できる商標の選び方をプロが徹底解説! ~登録できない商標を選ばないために~

商標は商品やサービスの識別標識(マーク)です。ところが、弁理士として商標の相談や出願の依頼を受けてみると、商標を「商品やサービスの内容を表示するもの」と勘違いして理解していたり、全く登録できる可能性のない商標を依頼するクライアントが少なくありません。

これまで商標の選び方というと、「売れる商品のための商標戦略」、「企業のネーミング戦略」といったマーケティングの立場から解説されることが多く、登録できる商標あるいは登録できない商標を実務面で解説されることは皆無と思われます。弁理士のサイトでは商標法の条文に沿って、2,3の例を挙げながら解説していますが、必ずしも実践的なものとはいえず、実際の実務に役立つとはいえません。

そこで、登録可能性や権利行使という見地から、どのような商標を選んだらよいのか、あるいは選ばない方がよいのかを説明します。

できれば「地理的名称」を含む商標は選ばない

「地理的名称」を含む商標は、その地域等の商品やサービスの独自性を出せるため、商標としては適切と思われがちです。
ここで、「地理的名称」とは、「国家、首都、州、県、州都、省、省都、郡、県庁所在地(県都)、旧国、旧地域、地方、市、特別区、行政区画、繁華街、観光地(その所在地又は周辺地域を含む。)、湖沼、山岳、河川、公園等を表す名称や地図」が含まれます(審査基準参照)。
しかしながら、登録可能性あるいは権利行使という面からいえば、できれば「地理的名称」を含む商標は選ばない方がよいと考えます。その理由は以下の3点にあります。

(1)「地理的名称」だけからなる商標や「地理的名称+商品(サービス名)」の商標は標準文字の形態では拒絶される可能性が高い
例えば、缶コーヒーで有名な「GEORGIA」の商標は、単なる生産地(アメリカ合衆国のジョージア)の表示にすぎないとして特許庁は商標登録を認めず、コカ・コーラ社はこれを不服とし最高裁まで争ったものの上告は棄却されました(ジョージア事件)。また、「琉球蜂蜜」(2009-5497)、「原宿占い」(2003-89578)、「東北インターナショナルスクール」(2005-44567)なども拒絶されています。これらの商標は、商品の産地、販売地、サービスの提供場所等の内容を表示しているにすぎないため、商標の識別力が欠如しているという拒絶理由(商標法3条1項3号あるいは6号)が適用されます。
なお、標準文字ではなく、修飾文字にしたり、文字に図形を結合させれば、登録可能性がでてきます。
また、「夕張メロン」、「広島レモン」、「神戸シューズ」、「松阪牛」のような地域団体商標は、その団体が出願すれば登録されます。ただし、一般の個人や法人は登録できません。

(2)登録されても、指定商品や指定役務の範囲が限定されてしまう場合がある
修飾文字にしたり、図形を結合して商標登録されたとしても、指定商品や指定役務の範囲が限定されてしまう場合があります。
例えば鹿児島しゃつ(登録5757281)では、指定商品は「25類 鹿児島県産シャツ」として登録されています。これは出願時に拒絶理由通知がきて、「鹿児島県産以外のシャツは商品の品質誤認を生じる」(商標法4条1項16号)として、補正により「鹿児島県産シャツ」に限定され登録されたものと思われます。



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また、図形の一部に「地理的名称」を含んでいても、指定商品や指定役務の範囲が限定されてしまう場合があります。例えば、登録5477847の図形商標では「仙台」の文字を含むため、指定商品は「29類 宮城県仙台市で製造販売される食肉・・・」と限定されています。


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このように、指定商品や指定役務の範囲が限定されると、それ以外の商品は品質誤認を生じるため権利範囲外と解釈され、差し止めや損害賠償など権利行使するうえで不利になる場合があります。

(3)「地理的名称」は商標の構成上、付記的部分と認定される
「地理的名称」を含む商標のうち「地理的名称」の部分は、商標の構成で識別力を発揮する要部ではなく「付記的部分」と認定されます。つまり、「地理的名称」は商標の構成上で重要視されないということです。従って、「地理的名称」を含まなくても登録可能性があり、かつそのような形態で使用される場合があるのであれば、「地理的名称」を含まない商標で出願すべきです。

いわゆる「周知・著名商標」を含む商標は選ばない

一般の方が周知・著名商標としてまず思い浮かべるのは、「LOUIS VUITTON」、「CHANEL」、「GUCCI」といった一流ブランドですが、特許庁がどのような商標を周知・著名と認定しているかというと、日本国内の新聞や雑誌、テレビにその商標が掲載されたり放送されていることをもって、周知・著名と認定しています。なお、アマゾンや楽天などのインターネット通販で商標を使用している程度では特許庁は周知・著名と認定しません。また、外国で周知・著名であっても、日本国内で周知・著名と認定されない場合もあります。

また、普段なにげなく使っている名称が周知・著名商標である場合があります。例えば「エレクトーン」(ヤマハ株式会社)、「郵便局」(日本郵政株式会社)、「横浜中華街」(横浜中華街発展会協同組合)など。また、プロサッカーやプロ野球のチーム名は、たとえ商標登録されていなくても(未登録)周知・著名商標に該当します。例えば「アントラーズ」(株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シー)。

「周知商標や著名商標」を含む商標は、商標法4条1項10号や15号が適用され拒絶されます。例えば、インターネット上でメールサービスを行うために「ネット郵便局」という商標を出願しても拒絶されます。逆にこのような商標を日本郵政株式会社の許可を受けずにサービスに使用していると、権利侵害を主張される場合もあります。
また、横浜中華街で中華レストランを開業するために「横浜中華街 ○×亭」という商標を出願しても拒絶されます。この場合、出願人が横浜中華街発展会協同組合の組合員であっても特許庁は登録を認めてくれません。なぜかというと、もし認めると、商標の「希釈化」につながるからです。「希釈化」については各自検索して調べてください。
プロサッカーチームの鹿島アントラーズのサポーターが選手の人形を販売するために「アントラーズ人形」という商標を出願しても拒絶されます。

このように「周知・著名商標」を含む商標は、その知名度を利用できるので選んでしまいがちですが、出願しても拒絶されることが多く、逆に権利者から権利侵害を主張される場合もあるため、選ばない方がよい場合が多いです。
なお、商標法4条1項10号や15号については、周知・著名商標主から出願と登録の許可を受ければ適用を解消できる場合があります(同意書や承諾書を特許庁に提出)。ただし、出願人が周知・著名商標主の日本代理店のような特別な関係の場合を除き、周知・著名商標主が他人に出願と登録の許可を与えることはまずないと考えてよいと思います。

商標の末尾に数字やローマ字の1字又は2字を含む商標は選ばない

よく「カレン560」、「カレンX」、「カレン-XY」のように末尾に数字、ローマ字の1字又は2字を結合している商標がありますが、特許庁は「数字、ローマ字の1字又は2字」は「付記的部分」と認定します。つまり、「数字、ローマ字の1字又は2字」は商標の構成上で重要視されないということです。従って、「数字、ローマ字の1字又は2字」を含まなくても登録可能性があり、かつそのような形態で使用される場合があるのであれば、「数字、ローマ字の1字又は2字」を含まない商標で出願すべきです。

また、「数字だけ」、「ローマ字の1字又は2字」だけの商標を標準文字で出願しても拒絶されます。ただ、修飾文字や図形を結合させれば登録可能性があります。例えば、渋谷の「109」(東京急行電鉄株式会社)の商標は修飾文字で登録されています。


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なお、「XJZ」(登録3331930)のようにローマ字3字以上の場合は、原則として商標の構成で識別力を発揮する要部と認定されるため、標準文字でも登録可能性はあります。

識別力のない語同士を結合した商標や、商品やサービスの内容を表示しすぎている商標は選ばない

例えば商品に対する「コントローラ」や「市場」、サービスに対する「コンサルタント」や「センター」といった語は識別力のない語ですので、これらに識別力のない語を結合しても、識別力の欠如という理由(商標法3条1項3号)で出願しても拒絶されます。
具体的には、「ESコントローラ」(2001-51168)、「中古パソコン市場」(2009-46073)、「システムコンサルタント」(H04-139218)、「キャリアセンター」(2005-122685)などの拒絶例があります。

その他では、例えば「はちみつレモンらっきょう」(29類らっきょうの漬物 2001-105867)という商標は、「はちみつとレモンとらっきょうで作られた漬物」の意味合いを想起させますので、商品の内容を表示しすぎている商標のため、識別力の欠如で出願しても拒絶されます。「リフォームコンサルタント」(2002-84053)のようにコンサルティング(相談)する内容を表示しすぎている商標も、識別力の欠如で出願しても拒絶されます。

他人の先行登録商標に同一又は類似する商標は選ばない

他人の先行登録商標に同一又は類似する商標は商標法4条1項11号により拒絶されます。ここで、「同一」か否かは容易に判断できますが、「類似」か否かの判断は容易ではありません。
教科書的には「類似判断は、外観・称呼・観念を総合的に鑑み、実際の取引の実情を考慮して・・・」などと書かれていますが、実務では「称呼」(商標の読み方)が一番重視されます。
ローマ字のスペール(外観)が違っても、その読み方(称呼)が同一か類似していれば、「類似」と判断されます。例えば、「RAX」と「LAX」はスペール(外観)が違いますが、「ラックス」という同じ称呼ですので、類似と判断されます。

また、文字と図形の結合商標の場合、その文字と同一又は類似の先行登録商標が存在すれば、いくら図形が存在して外観が違うと主張しても特許庁は認めず、類似と判断されることが多いです。
例えば、「ピーチ姫」の文字と少女の図形とを結合した商標の場合、他人の「ピーチ姫」の先行登録商標が存在すると、拒絶されます。

このように、商標においてその称呼(読み方)は類似判断において極めて重要なのですが、近年の特許庁は、類似判断を狭く、つまり緩めに判断して、その分登録しやすいという傾向があります。例えば、私が扱って登録になった案件で「カロナビ」(9類 登録5792076)がありますが、審査段階で引用商標の「かるナビ」に類似するという拒絶理由を受けました。審査基準によれば、「同数音の称呼からなり、異なる1音が50音図の同行」に該当しますので、教科書的には明らかに「類似」ですが、「ナビ」は識別力の低い語であり、「カロ」と「かる」の識別力の高い部分で判断すべき・・・といった内容の意見書を提出して拒絶理由を覆した例があります。

なぜ、特許庁が類似判断を緩めに判断して登録しやすくなったかというと、おそらくインターネットの影響が大きいと思います。インターネットが普及していない時代では、需要者が商品の購入やサービスを受ける場合、対面又は電話によることがほとんどのため、商標の称呼(読み方)が重要視されてきました。近年のようにインターネットが普及してくると、需要者は商品やサービスを説明するホームページなどのサイトを参照して、商品の購入やサービスを受けることが多くなりました。その結果、商品やサービスを説明するサイトは文字で説明しているため、商標の称呼は従来よりも重要視されなくなったのだと思われます。

いずれにせよ、「類似判断」は素人で判断せず、実務経験の豊富な弁理士に判断を委ねるのが一番確実です。

識別力のない語や先行登録商標が存在している語がある場合であっても、識別力のある語と結合された商標を選べば、登録できる場合がある

識別力のある語の例としては、例えば、9類(電子機器やコンピュータプログラム等)における「クラウド」、「ウルトラ」、「マーケット」、「ノート」等です。私が扱って登録になった案件で「ULTRA FINE GLASS\ウルトラ ファイン ガラス」(登録5744097)がありますが、「ファイングラス」という先行登録商標が存在しても登録になりました。これは「ウルトラ」という語が識別力のある語であると特許庁が認定したということです。

識別力があるか否かは、指定する商品や役務(サービス)によっても異なります。例えば、「美容」という語は、44類(美容)には識別力のない語ですが、3類の化粧品や5類のサプリメントでは識別力のある語です。
また、「システム」という語は、42類(システムの設計)には識別力のない語ですが、41類(知識の教授、セミナーの企画・運営または開催)には識別力のある語です。

このように、識別力のない語や先行登録商標が存在している語がある場合であっても、識別力のある語と結合させた商標にすることにより、登録できる場合がありますので、商標選択の余地を広げる意味で重要と考えております。

他人の先行登録商標に同一又は類似する商標が存在しても、登録できる場合がある

特許事務所に調査を依頼して、他人の先行登録商標に同一又は類似する商標が存在しているという調査報告書を受理すると、多くの場合その商標を諦めるか、別の商標に変更していると思います。ところが、このような場合であっても、ある方法を用いれば、登録できる場合があります。その方法とは「不使用取消審判」(商標法50条)です。不使用取消審判というのは、商標権者などが日本国内において、登録商標を継続して3年以上使用していない場合、その商標権が取り消されるという制度です。

この制度のよいところは、「使用していない」という立証は審判請求人ではなく、商標権者側が行う点です。そのため、その立証ができずに諦めて商標権が取り消される場合が多く、不使用取消審判の成功率はかなり高いと言われています。商標権が取り消されれば、他人の先行登録商標が存在しないことになるので、同一又は類似する商標を登録することが可能になります。なお、先行登録商標の商標権者が倒産したり、死亡している場合には、「登録商標を継続して3年以上使用していない場合」に該当することが多いですが、その旨を特許庁に主張しても登録を認めてくれません。不使用取消審判を請求してその商標権を取り消す必要があります。

周知著名でない他人の先行登録商標同士を結合した商標は、ほとんど登録できる

例えば、「ABC」という他人の登録商標と「DEF」という他人の登録商標が存在しても、「ABC DEF」という商標を出願した場合、ほとんど登録できます。私が扱って登録になった案件で「高級白雪スノーアイス」(登録5647246)がありますが、「白雪」、「SNOWICE」の他人の先行登録商標が存在しても登録になりました。

絶対登録したいというクライアントが商標選択で悩んでいる時、半分冗談、半分本気で、「他人の先行登録商標を2つ選んで、適当に結合してゴロのよい商標にしたらどうですか?」・・・とアドバイスしたことがあります。なぜこれが確実に登録できるかというと、登録商標を含んでいるため識別力については問題がなく、一体の商標であると主張すれば非類似と認定されるからです。ただし、他人の先行登録商標の一方が周知著名であれば、出願しても拒絶されます。また、ほとんどの場合、出願した後、拒絶理由通知を受けます。この拒絶理由通知に対しては、先の例では「ABC DEF」や「高級白雪スノーアイス」は一体の商標である旨を意見書で主張すれば、拒絶理由を覆せます。

周知著名でない外国の他人の商標は、拒絶されることなく登録できる

これは、けっして外国の他人の商標をどんどん商標登録しましょう・・・と奨励しているわけではありません(念のため)。
ただ、外国の他人の商標については、他人の許可がなくても、特許庁は拒絶することはできず登録されてしまいます。また、一旦商標権が成立すると、その他人が無効審判を請求しても無効にすることも困難です。なぜかというと、「周知著名でない外国の他人の商標に同一又は類似する商標は登録することができない」という規定が商標法に存在しないからです。そのような規定が存在しない以上、特許庁は出願を拒絶したり、商標権を無効にできないのです。なお、周知著名の外国商標であれば拒絶されます。

このケースについて過去に特許庁は商標法4条1項7号の公序良俗規定を用いて商標権を無効にしたことがありますが、裁判所は、この規定を拡大解釈すべきではないと判断して裁判で負けています。従って、国内の代理店などは、周知著名でない外国の商標を国内で使用する場合には、早めに商標登録することを推奨します。

周知著名でない国内外の他人の図形を商標として出願しても、拒絶されることなく登録できる

これは、けっして他人の図形を勝手にパクっても大丈夫なので、どんどん商標登録しましょう・・・と奨励しているわけではありません(念のため)。
ただ、他人の図形などの著作物を利用した商標については、他人の許可がなくても、特許庁は拒絶することはできず登録されてしまいます。また、一旦商標権が成立すると、著作権者が無効審判を請求しても無効にすることも困難です。なぜかというと、「他人の著作物を利用した商標は登録することができない」という規定が商標法に存在しないからです。そのような規定が存在しない以上、特許庁は出願を拒絶したり、商標権を無効にできないのです。

これは法律の不備というものではなく、著作物という創作を保護する著作権法と、創作を保護するのではなく、商標に化体された業務上の信用(Good will)を保護する商標法との違いによります。なお、商標法では上記のような権利の抵触が生じた場合、商標権の効力が制限されることにより、権利の調整を図っています(商標法29条)。
著作権者から見たら、自分の著作物を勝手に商標登録されてしまう場合があるということですから、もし著作物を商品やサービスに使用する予定ができたら、早めに商標登録することを推奨します。

まとめ

以上、登録可能性や権利行使という見地から、どのような商標を選ぶべきか、選んでもよいのか、選ぶべきではないかを説明しましたが、これらはほんの一例にすぎません。
商標を選ぶ時は、商標登録することを第一義に考慮すべきではないと思います。やはり、その企業や個人の商品やサービスに対するコンセプトを第一義にして選択すべきと思います。

商標権は商品やサービスに商標を独占して使用できる強力な権利ですので、商標登録できるか否かはビジネス戦略上きわめて重要であることは事実です。
従って、商標登録しやすい、しにくい、あるいは商標登録しても有効な権利になる、ならないというのは確実にあるわけですから、これらを頭の隅に入れながら、適切に商標を選択されることをおすすめします。

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