従業員とのトラブルを未然に防ぐ!賢い雇用契約書の作り方

新しく人を雇い入れる時に交わす雇用契約書。実は、雇用契約の書面化は、法律では義務付けられてはいないのです。「じゃあ、雇用契約書(労働契約書)は必要ない?」と思うのは早計。実際には「必要」になります。

雇用契約書は義務ではない。でも実際には「必要」なもの


その理由として、

1)口頭でも契約成立しますが、のちのち「言った、言わない」の争いになる可能性が高くなります。雇用契約書(労働契約書)は、労使(雇用者・被雇用者)双方が約束したことを、証拠付ける書面にもなるのです。

2)労働基準法により一定の労働条件は、書面で明示して伝えなければなりません。(労働基準法第15条第1項及び労働基準法施行規則第5条第1項)。
・この労働条件の明示義務に違反した場合、使用者は30万円以下の罰金に処せられます。(労働基準法第120条第1号)
・したがって、労働条件通知書等を書面で交付しない場合には、雇用契約書(労働契約書)に明示義務のある内容を盛り込まなければなりません。
※詳しくは、次の「意外と知らない、雇用契約書(労働契約書)の中身」を参照。

3)労働契約法第4条1項に「使用者は、労働者に提示する労働条件および労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする」、同上2項において「労働者および使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む)について、できる限り書面により確認するものとする」という法の要請があります。

このような理由から、法律で義務付けられていなくても、実際には雇用契約書(労働契約書)が必要だということが、お分かりいただけるかと思います。

意外と知らない、雇用契約書(労働契約書)の中身


では、具体的に雇用契約書(労働契約書)には、何を記載したらいいのでしょうか?

注目していただきたいのは、上記の2)でご紹介した「一定の労働条件」のことです。これには、『必ず明示しなければならない事項』と『定めがある場合は明示しなければならない事項』があります。(労働基準法第15条第1項及び労働基準法施行規則第5条第1項)

まずはこれらの内容を把握して、雇用契約書(労働契約書)に「明示事項」を盛り込みましょう。(『必ず明示しなければならない事項』の昇給以外の部分は、書面にて明示することが必要です)

1)必ず明示しなければならない事・・・絶対的明示事項
① 労働契約の期間※
② 就業の場所・従事する業務の内容
③ 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交代勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項
④ 賃金の決定・計算・支払の方法、賃金締切・支払時期、昇給に関する事項
⑤ 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

※期間の定めのある契約の場合
① 更新の有無の明示・・・例えば、「自動的に更新する」「更新する場合がある」「契約の更新はしない」など
② 更新基準の明示・・・例えば、「契約満了時の業務量」「勤務成績、態度」「能力」「会社の経営状況」「従事している業務の進捗状況」など

2)定めがある場合は明示しなければならない事・・・相対的明示事項
① 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法、支払時期に関する事項
② 臨時に支払われる賃金(退職手当除く)、賞与などに関する事項
③ 労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項
④ 安全衛生に関する事項
⑤ 職業訓練に関する事項
⑥ 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
⑦ 表彰、制裁に関する事項
⑧ 休職に関する事項

なお労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険の適用に関する事項は、労働基準法上では書面で明示しなくてもよい事項ですが、トラブルを避けるためにも、雇用契約書(労働契約書)に盛り込んでおいたほうがよいでしょう。

パートや短時間労働者にも雇用契約書が必要


また、パートタイム等短時間労働者を雇い入れたときは、上記の明示事項に加え、

① 昇給の有無
② 退職手当の有無
③ 賞与の有無
④ 雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口(平成27年4月1日施行)

について、書面で明示しなければなりません。これら以外の事項についても書面で明示するように努めるものとされています。(パートタイム労働法第6条)

よくあるトラブルは、雇用契約書で未然に防ごう!


ほかにも、トラブル防止のため、何点か気をつけるべき点を挙げてみました。ぜひ参考にしてください。

1)配置転換の可能性があるなら、採用時の雇用契約書に明記を
入社後に担当職務や勤務場所を変更する可能性がある場合、採用時の雇用契約書や就業規則に「配置転換の有無」が記載したほうがいいでしょう。配転命令をするには労働契約上の根拠が必要であり、通常は就業規則等の規定が配置転換命令の根拠とされています。

これを明確に定めた契約書を交わしていないと、職種限定または勤務地限定の雇用契約と解釈され、実際に人事異動を命じた時に、「契約内容と違います!」と騒ぐ従業員が出てくる可能性がありますのでご注意ください。

2)万が一、会社に損害を与えた場合の損害賠償に関する文言も
労働基準法では、雇用契約(労働契約)締結する際、違約金を定め、または損害賠償額を規定する契約を結んではならないとする規定が存在します(労働基準法第16条)。

これは違約金や損害賠償の金額をあらかじめ定めて、労働者を身分的に拘束することがないようにと設けられた規定です。ただし、実際に会社に損害を発生させた社員に対して、その被った損害の賠償請求をすることまで禁止しているわけではありません。

したがって、雇用契約書(労働契約書)と身元保証書には、実際に発生した損害に対する賠償義務を定めた条項を盛り込んだほうがいいでしょう。(実際に裁判等では、損害額が全額認められるケースは少ないのですが…)

3)就業規則の内容と一致しているかチェックを忘れずに
「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において無効となった部分は、就業規則で定める基準による」(労働契約法第12条)と定められています。

つまり、雇用契約(労働契約)の内容が、就業規則の内容より従業員にとって不利な場合は、その部分の雇用契約(労働契約)は無効となり、就業規則が適用されます。

例えば、就業規則に「従業員には交通費を支給する」と規定してあるのに、雇用契約書(労働契約書)には「従業員には交通費は支給しない」と記載されている。この場合、会社は交通費を支給しなければなりません。したがって、就業規則がある会社は特に気をつけておきたいところです。

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