今後は「パートにも賞与支給」? 話題の『同一労働同一賃金』を考える

今年3月より、政府において、いよいよ実現に向けた具体的な検討がされるようになった「同一労働同一賃金」。同一労働同一賃金とは、ざっくり言えば“同じ仕事をする人には同じだけの賃金を与えましょう”という概念のこと。

大まかな概要については既にニュース等で把握されている方も多いと思いますが、具体的な取扱いについては未だ不明な点が多く、報道の見出しだけを見て「今後はパートやアルバイトにも賞与を支給しなければいけなくなるのか?」などと不安に駆られている事業主の方も少なくないようです。

そんな中、ようやく先日、首相官邸にて開催された第5回働き方改革実現会議の中で、同一労働同一賃金に関わるガイドライン案が提示されました。さっそく、その概要を見ていくことにいたしましょう。

是正されるべきは「不合理な待遇差の解消」


このたび示されたガイドライン案では、正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との待遇差について、問題になる例とならない例が具体的に示されています。

参照 : 首相官邸『第5回 働き方改革実現会議』議事次第 資料3 同一労働同一賃金ガイドライン案

内容を見る限り、「今後は正規・非正規関係なく、何でもかんでも同様の待遇としましょう」といった趣旨ではなく、あくまで「正規・非正規という雇用形態の違い“のみ”で生じている不合理な待遇差はなくしていきましょう」ということの様です。正規であれ非正規であれ、実態として同じレベルで働いているのであれば待遇に差をつけるべきではないことが明文化されました。
一方で、職務や能力に基づく合理的な理由のある待遇差は問題とはならないこととされています。

例えば、会社の業績等への貢献に応じて支給される賞与については、下記の通り記載されています。

<問題とならない例①>
・賞与について、会社の業績等への貢献に応じた支給をしているA社において、無期雇用フルタイム労働者であるXと同一の会社業績への貢献がある有期雇用労働者であるYに対して、Xと同一の支給をしている。

<問題とならない例②>
・B社においては、無期雇用フルタイム労働者であるXは、生産効率や品質の目標 値に対する責任を負っており、目標が未達の場合、処遇上のペナルティを課され ている。一方、無期雇用フルタイム労働者であるYや、有期雇用労働者であるZ は、生産効率や品質の目標値の達成の責任を負っておらず、生産効率が低かった り、品質の目標値が未達の場合にも、処遇上のペナルティを課されていない。B 社はXに対して賞与を支給しているが、YやZに対しては、ペナルティを課して いないこととの見合いの範囲内で、支給していない。

<問題となる例①>
・賞与について、会社の業績等への貢献に応じた支給をしているC社において、無期雇用フルタイム労働者であるXと同一の会社業績への貢献がある有期雇用労働者であるYに対して、Xと同一の支給をしていない。

<問題となる例②>
・賞与について、D社においては、無期雇用フルタイム労働者には職務内容や貢献等にかかわらず全員に支給しているが、有期雇用労働者又はパートタイム労働者には支給していない。

引用 : 首相官邸『第5回 働き方改革実現会議』議事次第 資料3 同一労働同一賃金ガイドライン案 6ページ

このように、あくまで「雇用形態に応じた職責の相違」に基づき、待遇に差を設けることは問題とはなりません。ところが、単に「雇用形態の違い」のみで一律に支給の有無を決めることは今後是正されるべきとされています。特に飲食店等では、実態としてベテランのパート・アルバイトが正社員以上に活躍している様なケースを散見しますが、このような場合には要注意です。

その他、非正規雇用労働者については賃金のみならず、福利厚生、キャリア形成・能力開発などを含めた処遇の改善が目指されるべきであることも明言されています。

今後は雇用形態に応じた「職責の明確化」を


同一労働同一賃金の実現に伴い、今後は関連法令の改正等が進められる見込みとなっており、企業においても法に則した対応が求められることになります。これから重要になってくるのは「正規と非正規についての職責の違いを明確にすること」です。雇用形態が異なるだけで、実態として正規も非正規も同じ働き方をさせている様なケースは、今後法令違反となり得ます。

今一度、御社におけるパート・アルバイト等の定義を見直し、非正規雇用労働者が担う業務の範囲や権限、責任を改めて明確にされることをお勧めします。取り決めた内容は、正社員用とは異なる雇用契約書、就業規則としてまとめ、周知することが重要です。

今回示されたガイドライン案から、同一労働同一賃金の浸透によって目指されるべきは、「労使双方が共通の認識の元で、各々の立場から最大限活躍できる職場の実現」なのではないかと強く感じさせられました。



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