加圧トレーニングの特許に教わる「自然法則」に該当するポイント
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画像 : 特許第2670421号

皆さま、加圧トレーニングをご存知でしょうか ?
加圧トレーニングは、筋力向上を目的としたものであり、専用のベルトを腕や脚に巻いて血流を制限した状態でトレーニングをするというものです。

加圧トレーニングを行うことで、成長ホルモンが大量に分泌され、新陳代謝が活発になるなどの効果があります。

この記事の目次

加圧トレーニングが会社にもたらした利益


現在では、KAATSU JAPAN 株式会社は、「加圧インストラクター」などの民間資格を発行しており、「加圧インストラクター」になるには、トレーナー講習が必須となっています。

また、加圧トレーニングに関連するグッズも販売されています。
この加圧トレーニング、圧倒的な支持を多くの顧客から得て、多大なる収益を企業(KAATSU JAPAN 株式会社)にもたらした基幹事業です。

ベルトの巻き方などに注意が必要であるものの、その方法そのものは極めてシンプルな加圧トレーニング、真似しようとと、「誰でも」「簡単に」真似できたのかもしれません。
特に、加圧トレーニングが急速な勢いで顧客を獲得していることを目の当たりにした同業者は模倣を試みることは自然な流れです。

しかし、この加圧トレーニング、長年、KAATSU JAPAN 株式会社が認定する、上述した加圧インストラクターでなければ行うことができませんでした。
その理由は、KAATSU JAPAN 株式会社が、加圧トレーニングの特許を取得していたからです(特許第2670421号)。


加圧トレーニングの特許範囲


加圧トレーニングの特許範囲ですが、 「筋肉に締めつけ力を付与するための緊締具を筋肉の所定部位に巻付け、その緊締具の周の長さを減少させ、筋肉に負荷を与えることにより筋肉に疲労を生じさせ、よって筋肉の増大を図る筋肉トレーニング方法であり、筋肉に疲労を生じさせるために筋肉に与える負荷が、筋肉に流れる血流を阻害するものである筋力トレーニング方法」 となっています。

何が書いてあるか、よくわからないと思いますが、上記で説明した加圧トレーニングの方法について特許が取られていると理解して頂いて問題ありません。

このような筋力トレーニング方法を特許にする際に注意しなければならないのは、発明の効果(筋肉の増大)を得るため手段が人間を主としたものではなく、物(専用のベルト)を主とした表現でなければならないという点です。
そうではなければ「自然法則を利用」したものに該当せず、特許を取れません。

自然法則については『いきなりステーキの特許に教わる ! 拒絶された特許を取得する方法』で解説しておりますので、ご覧ください。

例えば、「スクワット10回を5分周期で10セット行う筋力トレーニング方法」や「親指だけで腕立て伏せをする筋力トレーニング方法」などは、筋力を増大するための手段が人間を主としたものであるため、特許になりません。
出願した場合、人為的な取り決めであり「発明ではない」と認定されます。


筋力トレーニング方法を特許化するためには


上記の加圧トレーニングの権利範囲は、 「緊締具を筋肉の所定部位に巻付け、その緊締具の周の長さを減少させ、筋肉に負荷を与えることにより筋肉に疲労を生じさせ、もって筋肉の増大を図る筋肉トレーニング方法」 という表現になっており、緊締具(専用のベルト)によって筋力の増大が図られるという表現になっています。

「緊締具(専用のベルト)を巻いて筋力トレーニングを行うことで筋力の増大が図られる」という表現にしなかったのは、「発明でない」と認定されるのを回避するためであると推察されます。

このように、発明の表現の方法によっては、筋力トレーニング方法のようなものであっても、筋力を増大するための手段が緊締具などの物によって達成できるという表現にすれば、特許にできる可能性があります。


まとめ


なお、加圧トレーニングの特許ですが、現在は期限が切れてしまっているため、加圧トレーニングを行っても特許権の侵害には該当しない状態となっています。

しかし、20年物間の期間、市場を独占できるメリットは大きく、これだけの期間があれば業界の中での圧倒的な地位とブランド力を構築できるということを容易に想像ができます。

なお、KAATSU JAPAN 株式会社は、「加圧トレーニング」について役務「四肢の基端付近に圧力を加えることによって、筋肉増強を図るトレーニングの教授」について、商標権を取得しています(登録5099742)。
商標権としては、全部で9つ取得されており、筋力トレーニングだけではなく、ビデオディスク・ビデオテープ・DVD、衣服、ベルト、チューブなど様々な分野で権利化されており、構築したブランドを守る体制を構築しています。

ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
参照 : SHARES 弁理士 原田貴史のページ


画像出典 : 特許公報

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