アパレルブランドの商標登録の必要性
知財



アパレル分野は、従来商標登録の件数がとても多い分野ではありましたが、近年は、個人でビジネスをされている方なども商標登録することが多くなり、ますます商標登録が重要な分野となってきています。

ここでは、アパレル系の事業をされている方に向けて、アパレル分野の商標登録が重要な理由と、商標登録するときのポイントをお伝えします。


この記事の目次

中小のアパレルブランドでも商標登録が必須な理由とは


中小のアパレルブランドも商標登録をした方がいい理由について解説いたします。


(1)アパレル業界は、非常に商標登録の件数が多い


特許庁のデータベースで検索しますと、アパレル業界は、2016年1月1日から2017年1月1日までの1年間で、19716件の商標登録出願がなされています。

これは、全ての業界の15%となり、非常に多い数字です。


(2)アパレルブランド名を商標登録しないと、将来その名前を使えなくなる可能性があります。


さて、商標登録の基本的な効果のお話ですが、アパレルブランドのブランド名は、商標登録しなければ、将来的に使えなくなる可能性があります。

商標登録という制度は、そのブランド名を日本国内で独占する制度であり、しかも、早い者勝ちというルールになっています。ですから、もし、あなたがABCというブランド名をずっと使っていたとしても、後から別の人がABCという名前を商標登録してしまったら、あなたは、今後一切ABCという名前を使えなくなる可能性があるのです。

さて、「アパレル業界は商標登録の件数が多い」と書きましたが、それはつまり、不運にも、他人が類似の名前をたまたま商標登録してしまう可能性も高いということです。

今まであなたがABCというブランド名を10年使い続けていたとしても、11年目には使えなくなる可能性があります。商標登録は、同じブランド名を長く使う上では必須の「保険」のようなものなのです。


(3)アパレル業界の商標登録が多い理由


アパレル業界での商標登録が多い理由は、主に、2つあると思います。

① アパレルは「ブランディング」が大事だから

アパレルの分野は、「ブランドが命」と言っても過言ではない業界だと思います。シャネル、エルメス、ルイヴィトンなど、世界を代表するブランドと言えば、真っ先にアパレルブランドを思いつくのではないでしょうか。

しかし、ここで注意しなければならないのですが、この「ブランド」というのは、誰もが知っているような超有名ブランドだけを指すものではありません。 ブランドというのは、その名前やマークに、お客さんの信用が蓄積されている状態をいいます。

例えば、お客さんが、「〇〇社の作った商品だから安心して買えるね」と言ってくれる状態が、〇〇社のブランド力です。 ブランド力がなければ、お客さんは、たくさんある商品の中からわざわざあなたの商品を選んでくれません。これは、特にアパレル業界では重要で、どんな小さな会社にも当てはまることです。

商標登録は、ブランド名を守る、非常にとても大事で、強力な制度なのです。


② 「商品」は、商標登録をしないと危険

実は、アパレル業界に限らず、「物の商品」を扱う業界は、商標登録の件数が多い傾向にあります。これは、単純に、一度商品(物)を作ってしまったら、それを作り直すことはできないから、という理由があります。

もし、一度、衣服を製作して販売した後に、他社から、「そのブランド名はうちの商標権を侵害しているから、使うのをやめてくれ」と言われたら、どうなるでしょうか ?
大量の売れない在庫を抱えてしまうことになります。小さい会社であれば、その事件一回がきっかけで、倒産ということもありえます。


取引先に迷惑をかけることも・・


また、アパレルの商標登録について考える場合は、常に、自分の利益のみならず、「需要者」という視点も考えなくてはなりません。(ここでいう「需要者」というのは、商標業界の専門用語ですが、お客様(エンドユーザー)と、取引先の両方を指す言葉となります。)

もし、あなたがブランド名の商標登録を怠ったばかりに、誰か他人に商標登録されてしまい、お客様に愛されたブランド名が使えなくなったら、どうなるでしょうか ?
まず、あなたのアパレルブランドを愛してくれているお客様は、悲しむことと思います。

そして何より、一番困るのは、あなたのアパレル商品を取り扱って販売してくれていた、小売店などの取引先です。 ABCというブランドに人気があったから、今までその商品が売れていたのに、ブランド名が変わってしまったら、今まで通りには売れません。場合によっては、そのせいでお店全体の売り上げが激減することもあるでしょう。

このように、商標登録は、自分の商品に関わってくれる方々のためにするものだと言っても過言ではありません。


増加するアパレル分野の商標権侵害事件


近年ではアパレル分野の商標権侵害事件が増加しています。


(1) しまむらの損害賠償事例


商標権侵害事件では、多くの場合は、「使うのをやめてくれ(差止請求)」と言われて、それに従って使用をやめれば、それで終わりということが多いです。お金を支払え(損害賠償請求)がなされることは、割合としては少ないといえます。(損害賠償請求ともなると弁護士に依頼しなければ難しい場合が多いので、そうなると、少額の損害賠償請求は割に合わないためだと思います。)

しかし、割合としては少ないと言っても、アパレル業界でも、損害賠償請求事件というのは少なくありません。
例えば、平成14年の事件で、株式会社しまむらの販売していたポロシャツが、他社の商標権を侵害していたとして「1236万円」の損害賠償を命じられた事件がありました。

なかなか大きな金額ですね。これは、しまむらという会社が大きい会社なので、販売した数も多く、損害額も大きかったためと思われます。
しかし、中小のアパレル企業であっても、損害額が大きくなるケースはあります。それは、長い期間販売し続けた場合です。しまむらの場合、大きな企業で目立つため、商標権侵害の事実もすぐに発見されたと思います。しかし、小さいアパレルブランドの場合は、すぐに発見されず、その分使用期間が長くなり、損害賠償額も大きくなる可能性があります。


(2) 20年間アパレルブランドをやってきて、商標登録しないで大丈夫だったけど ?


こういう方は、たくさんいらっしゃると思います。しかし、これからの社会では、この常識は当てはまらないものだとお考えください。

それは、インターネット社会の影響です。昔は、小規模なアパレルブランドの名前が商標権侵害していたとしても、誰も気がつきませんでした。もし気がつくとしたら自分が最初に気がつき、自主的に使うのをやめて終わり、という流れだったと思います。

しかし、近年は、小さなアパレルブランドであろうと、地方限定であろうと、インターネットで簡単にバレてしまいます。アパレル事業者に限らず、近年、小さな(訴訟にまで至らない)商標権侵害の案件が非常に増えていますが、それは、間違いなくインターネット社会の影響と言えます。


アパレルの商標登録で重要になる3つのポイント


ここではアパレル商標登録で重要になる3つのポイントについて解説いたします。


(1)商標登録の費用は、「区分」により決まる


商標登録は、その商標を「何の業種に使うのか ? 」を登録します。
そしてその「業種」を、「区分」というもので表します。

商標登録の費用は、この「区分」の数が増えることにより増加します。
1区分、2区分、3区分と増えるごとに、大雑把にいうと、区分数の倍数で印紙代が増加するので、区分の選択が費用に与える影響は非常に大きいです。

アパレルの場合は、メインの区分は、第25類(衣類)となります。
これだけですむならば、最低限の1区分ですので、商標登録の費用は安く上がります。

ただし、油断してはならないのは、アパレル企業が取り扱っているのは、衣類だけとは限らないということです。例えば、次のような区分も、アパレル事業に関連するものです。

第3類 「化粧品関係」
第14類 「ジュエリー、アクセサリーなど」
第18類 「バッグ」
第25類 「被服、靴など」
第26類 「髪飾りetc.」
第35類 「小売」

上の、第35類「小売」というのは、少々特殊な区分となります。オリジナルブランドではなく、他社製品を販売しているような場合に選択する区分です。

例えば、ABCというショップの名前で、他社商品の被服、バッグ、アクセサリーを販売しているアパレル系のセレクトショップの場合は、35類の小売で権利を取得すれば、1区分で安価な費用で商標登録できます。


(2) 商標登録のタイミングは ?


アパレルブランドの場合、商標登録のタイミングというよりは、「商標登録について弁理士に相談するタイミング」というのが重要になります。
結論として、アパレルブランドの場合、名前を決定する前、候補を出した段階で、弁理士に相談するのがベストです。

弁理士が商標登録のご相談を受けた場合、最初に何をするかというと、商標の調査をします。ABCというアパレルブランド名を商標登録したいと言われたら、上で説明した「被服」などの分野で、ABCという商標がすでに商標登録されていないか、特許庁のデータベースで調査するのです。

もしここで、すでにABCという商標が商標登録されていたとしたら、このABCという商標は、商標登録できません。もし、すでに商品を販売するなどの形で使い始めているとしたら、この「商標を使用する行為」は、他人の商標権を侵害する違法行為になりますので、直ちにやめなくてはなりません。

つまり、名前を決めてロゴを作ってしまってから弁理士に相談したり、製造販売を開始してから弁理士に相談した場合、その後に名前を変えなくてはならない可能性があるため、大きな金銭的なリスクがあるのです。


(3) どんな形で商標登録する ? (文字 or ロゴ、カタカナ or アルファベット)


これは、ケースバイケースで、かなり細かい問題でして、一概にどちらが良いとは言えません(ここでは、そこまで細かく書く子ことができず、すみません)。

中小のアパレル企業にとってとても重要なのは、商標をどういう形で出すかについては、自分で確定しないで、商標登録するときに弁理士に相談して、メリット・デメリットを聞いた方が良い、ということです。

例えば、もしあなたが、弁理士に、「ABCという商標を、文字とロゴ、両方で商標登録してください」と確定した風に言ったとします。
その場合、弁理士は、「かしこまりました ! 」と言って、何も言わずに両方商標登録する可能性があります。
しかし、実際は、文字とロゴ、両方を商標登録する必要はなく、片方で良い場合も多いのです。

もちろん、文字とロゴ両方登録する場合、お客様の費用は倍になります。
しかし、弁理士としては、報酬が倍になる嬉しいですし、普段から大企業のお客様に慣れていますので、メリット・デメリットなどはわかった上で依頼しているのだろう、と考えてしまう場合があります。


まとめ


いかがでしたでしょうか ? アパレルブランドの方にとって商標登録はとても重要であることがお分かりいただけたら幸いです。
また、より良い形、より良いタイミングで商標登録ができるよう、ヒントになればと思います。

中小のアパレル企業の場合、初めて商標登録するという方も多いです。
そういう方は、何から手をつけて良いのかわからないと思いますので、ぜひまずは、お気軽に弁理士にご相談いただければと思っています。

ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
参照 : SHARES 弁理士 井上暁彦のページ

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