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『平成』の商標はだれのものか?
日本人なら誰でも知っている単語として『平成』というものがあります。説明するまでもなく現年号です。すべての国民が知っている言葉を自分の商標として使えたら、みんなが覚えてくれて、人気の商品・サービスになること間違いないでしょう。
商標登録は早い者勝ちですので、いち早く出願しなければなりません。
でもちょっと待ってください。商標は先願主義で誰よりも早く出願した出願人に権利を与えるといっても、誰もが使用したがる商標を一個人や一法人に独占させて付与していいのでしょうか。
結論としてはダメです。
先日のコラムで書きましたが(参照:商標登録申請の前に読んでおきたい ! 商標登録の拒絶理由の仕組みと審査の流れについて)、誰もが使いたがるような商標は拒絶理由となります。
実際に現元号は商標登録できないものの例として商標審査基準に示されています。審査基準とは審査官が登録か拒絶かを判断する際に基準とするルールブックのようなものです。審査基準には下記のような項目があります。
4.現元号を表示する商標について
商標が、現元号として認識される場合(「平成」、「HEISEI」等)は、本号に該当すると判断する。
商標が、現元号として認識される場合(「平成」、「HEISEI」等)は、本号に該当すると判断する。
とあります。ここでいう本号、というのは拒絶理由、ということになります。
審査基準は審査官のバイブル、ダメなものはダメで認めない、つまりどんな商品だろうとサービスだろうと商標『平成』で出願されたものは拒絶理由とする運用がなされています。
現元号ということは前の元号ならいいのか
商標審査基準には現元号の場合のみ拒絶理由となる旨の記載があります。言い換えれば、現年号でない年号は商標として出願しても他の拒絶理由に該当しなければ登録になる可能性があるということです。
『昭和』『大正』『明治』の単体での商標登録は現存しているものでも相当数登録例が見られます。もちろん『平成』の単体での登録商標はありません。これはカタカナ書き『ヘイセイ』でもローマ字書き『HEISEI』でも同様です。
それならば『平成』を自分の登録商標とするためには、元号が変わった日以降に査定又は審決されていればよいということになります。
判断時は査定・審決時となる
第3条に該当するか否かは、査定されるとき又は審判に上がって審決されるときと解されます。
もし生前退位がなされる場合には、いつから次の元号になるのか、事前に周知されるはずです。元日からなのか4月1日からなのか、いずれにしろ新しい年号となる日は前もってわかるはずです。
そのタイミングで登録査定・登録審決になるように出願してればよいことになります。どうしても商標『平成』を権利化したいならば、極論いまから出願をし、あの手この手で拒絶確定するのを伸ばし状況をみるというのも一案となります。
とはいえ実際には、新年号になったタイミングで前元号を出願するケースが多いのではないでしょうか。
最後はくじ引き!?
商標は先願主義といいますが、同日出願の場合は後先関係なく最初として扱われます。同一類似の商標と同一類似の商品役務で出願が時分に関係なく同日になされた場合は、まずは当事者同士の話し合いで一の出願人に決めていきます。
それでも決まらない場合は特許庁長官が行う公平なくじによって誰が登録できる権利をもてるのかが決められます。
余談ですが、公平なくじとして筆者がみたのは、以下の方法でした。
・当事者同士がじゃんけんをし、勝った方からサイコロ2個を振ります。
その出目の大きかった方から白・赤・青・緑・黄などの色玉の中から自分の色玉を決めます。
それを回転式抽選機(ガラガラ)に入れてよく回したのちに最初に出てきた色玉を指定していた出願人がその商標の先願人として扱われることになります。
なお、くじは特許庁長官が行うと条文上には記載されていますが、長官はおりません。
その出目の大きかった方から白・赤・青・緑・黄などの色玉の中から自分の色玉を決めます。
それを回転式抽選機(ガラガラ)に入れてよく回したのちに最初に出てきた色玉を指定していた出願人がその商標の先願人として扱われることになります。
なお、くじは特許庁長官が行うと条文上には記載されていますが、長官はおりません。
欲張ってはいけません
誰もが欲しがる商標だからといって使用意思もないのに出願してはなりません。欲張ってあの商品もこのサービスもと指定商品役務をたくさん記入して出願してしまうと別の拒絶理由に該当してしまいます。
その場合は使用証明等の提出が必要となりますので、実際に使用している場合はともかく、本当に使用する予定のある商品サービスだけを記載しましょう。転売を目的に商標権取得なんてもっての外です。
また、万が一権利化できても3年間その商品サービスに商標『平成』を使用していなければ取消審判の対象になってしまいますので注意してください。
まとめ
今回は登録できない商標の例として現年号を取り上げて説明しました。他にも登録できない例はありますが、専門家であれば登録に導く方法をご指南できます。「こんな商標はとれないと聞いたけど・・・」そんな場合でも一度商標の専門家に問い合わせることをおすすめいたします。
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