他社から商標権侵害の通知書(警告書)が送られてきたらどうする?
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初めて商標権侵害の通知書(警告書)を受けた人は、本当に驚くようです。面白いことに、他人が自分の商標権を侵害することは想定していても、自分が他人の商標権を侵害することがあるとは考えていない人が多いことがわかります。

他社から商標権侵害の通知書(警告書)が送られてきたときの鉄則は、とにかく慌てずに対処すること。
ここでは、失敗しない、被害を最低限に抑える方法をお伝えします。

この記事の目次

1.最初にすべきことは?

(1)弁理士に相談する(商標権侵害の判断は難しい!)

他社から商標権侵害で警告された場合に一番大事なのは、まず、何よりも先に弁理士に相談することです。専門家に相談することが嫌いな人も、商標権侵害の場合だけは、絶対に自分で判断しない方が良いです。

例えるならば、どんなに医者嫌いで風邪を引いても絶対に病院に行かないような人でも、コレラに感染した場合は病院に行った方が良いですよね。それくらい、商標権侵害事件は対処の難しい症状だとお考えください。

なぜ、商標権侵害は対処の難しい症状なのか?
それは、「本当に、商標権侵害しているのか、損害賠償に応じる必要があるのか」のグレーゾーンが広く存在するためです。 しかも、商標権侵害の事件は大きな事案でない限り、裁判をしてまで決着をつけることはしません(裁判費用の方が多額になる場合も多いからです)。
そうすると、相手方としては、「最終的に裁判をしたら負けるかもしれないけれど、警告してやめてくれればラッキー」というくらいの案件でも、警告書を送ることが多くあります。
したがって、弁理士に相談せずに相手の言い分をそのまま鵜呑みにしてしまうのは、とても危険なのです。

また、これには逆パターンもあります。相手の言い分に納得できないからといって、素人判断で「うちは侵害していない」とつっぱね続けた結果、最悪、刑事罰の対象となるようなことも考えられます。
やはり、最初に弁理士に相談することが肝心でしょう。

なお、とても運の良いことい、日本では、最初の相談は無料でしてくれる弁理士も存在します。かくいう私も、相手の言い分が正しいかどうかの判断くらいまでは、無料でやっています。その上で、反論する文書を書く場合などは、有料でお仕事を承っています。
気軽に弁理士に相談してみることをお勧めします。

(2)「専門家に相談しているから期限を延長して欲しい」と返事をする

他社から警告書を受け取って、最初に弁理士に連絡をしたら、次にすることは、相手がたに取り急ぎの返事をすることです。 その内容は、「いただいた文書の内容を専門家に相談して吟味して回答しますので、返事の期限を10日延長してください」といったものが適切です。

なぜ、取り急ぎこのような連絡をすることが大切なのかと言いますと、それは、「法律に則って話し合う姿勢」を見せるためです。

商標権侵害事件の場合、(上にも少し述べましたが)、相手方は裁判まですることを望んでいません。費用対効果が悪いためです。したがって、裁判まで行かずに決着をつけるために、「話し合う姿勢を見せる」ことが非常に重要なのです。

しかも、ここでの「話し合う姿勢」というのは、「法律論に則って話し合う姿勢」です。なぜならば、いくらこちらが話しあう姿勢を見せたとしても、法律ではなく一般常識に基づき自己主張をしてしまったり、明らかに間違った法解釈による主張をしてしまったりすると、相手側としては、「これは埒が明かない」と考えますよね。すると、「本当は嫌だけれど裁判をするしかないか」という結論になることが考えられるのです。

最初に、「専門家に相談している」と伝えるのは、このような意味合いがあります。

2.警告書が届いた場合にやってはいけない3つのこと

さて、次に視点を変えて、警告書が届いた時にやってはいけない、最もやってはいけないことを書きます。
もちろん、これ以外にもやってはいけないことはいっぱいあるのですが、ここでは、私の経験上、「とてもよくある」なおかつ「とてもよくない」ことベスト3を選んでご紹介します。

(1)無視

これは、いうまでもありませんが、本当にやめたほうが良いです。上にも述べましたが、商標権侵害事件の場合、相手方は裁判までしたくないと思っていることが多いです。
しかし、話し合う姿勢がないとなると、仕方なく、民事訴訟や刑事訴訟を起こす選択肢をとる可能性が高まります。

(2)安易に「損害賠償」に応じる

商標権侵害事件においては、主に2つの主張がなされます。

差止請求・・・商標を使うのをやめてくれ
損害賠償請求・・・あなたが勝手に商標を使ったせいで損害が出たのでお金を払え



このうち、差止請求(使うのをやめて)は、必ず警告書に書かれていると思います。一方で、損害賠償請求(お金を払え)は、書かれているケースは稀です。

他社から送られてきた警告書を見て、明らかに自社が商標権侵害していると判断した場合であっても、損害賠償責任が生じるとは限りません。
また、損害賠償責任が生じるとしても、その損害額を決めるのは難しいことです。ですから、損害賠償に関しては、安易に応じることは控えましょう。

また、これは残念ですが、ごく一部の弁理士が、自分の多額の報酬を確保するために、「専門家に相談するのにかかった費用」を含めた金額を損害額として請求するような文章を書いて、クライアントに送付させることがあります。このような主張は法律上や判例上認められるとは思えず、応じる必要はありません。

(3)先使用権に全てをかける

勉強熱心な方は、「先使用権」という権利をご存知かもしれません。これは、ざっくり言いますと、他社にに商標登録されてしまったとしても、先に自分が同じ商標を使っていて、かつ、「有名になっていた」場合は、継続して使用が認められるというものです。

商標権侵害事件において、「うちの方が先に使っていた」という言葉はよく聞きます。ですから、このような法律を耳にすると、「うちの場合はそれに該当するんじゃないか」と思ってしまう方が多いようです。

もちろん、先使用権というのは法律上認められた権利であり、これに該当するならば、その主張をするのは正しいことです。
しかし、その時に、注意しなければならないことが2つあります。

1つ目に、先使用権に該当するには、「有名になっていたこと」が条件となるということです。この要件をクリアしていると証明することは、簡単ではありません。

しかも、2つ目に、証明することが簡単ではない上に、クリアできるかているかどうかは、裁判までやって見ないと決着がつかないという「不確かさ」があります。

ですから、「先使用権」を最後の切り札として認識しておくのは良いですが、それだけに頼って他の対処方をおろそかにするのは非常に危険と言えます。

3.弁理士に相談してやってもらうべきこと

最後に、弁理士に相談すると言っても、どのようなことを相談したり依頼したりすれば良いのかわからないという方のために、ぜひ弁理士に相談するべきポイントをご説明します。

(1)相手の権利に穴がないか確認する

これは、自分でするのは難しいので、弁理士にしてもらうことといえます。
商標登録は、その商標を「何の業種に使うか」を登録しますが、案外この「何の業種に使うか」の記載に穴があることがあります。

例えば、何かを教える仕事をしている会社が、第41類の「知識の教授」だけを書いて、「セミナーの開催」を書いていない場合などはよく見かけます。

あるいは、第41類の「知識の教授」で権利を取っているけれども、実際には第35類の「経営コンサルタント」をメインでやっているような場合もよくあります。

さらにいうと、上のような場合において、権利の取り方を間違ったのではなく、実は、「経営コンサルタントでは権利を取れなかった」という場合もあります。

堂々と警告書を送ってきても、案外、権利内容には不安がある場合もあるものです。相手の主張をはねのける鍵が見つかる場合がありますので、相手の権利内容はよく確認しましょう。

(2)返事の文章を書いてもらう

相手方への返事の文章は、できれば弁理士に書いてもらうのが良いと思います。
相手方としては、どのような返事であったとしても、法律に則ってきちんと話し合う姿勢を見せるだけで、ある程度安心するものです。

これは覚えておくと良いと思うのですが、警告書を送った相手がたも、結構どんな対応をされるのか、ドキドキしています。専門家を交えて話し合う姿勢を見せて、安心させてあげるのが肝要です。

(3)決着をつけたら、再度争わないように契約書を書いてもらう

これは案外見落としがちなことですが、例えば、話し合った結果、現在ABCというお店の名前を使っているけれども、それを、今後はABC’という名前に変更するということで決着がついたとします。

こういう場合には、今後、ABC’という名前を使うことに対して相手がたが文句を言わないよう、きちんと約束をしてもらうことが重要です。 そのための契約書は、相手方の弁理士が作る場合も多いと思いますが、こちらで作成する場合は弁理士に相談しましょう。

※自分が商標権侵害されてしまった場合の対応はこちら

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