特許?商標?著作権??「Yahoo! JAPAN知的財産権保護プログラム」の利用について、弁理士が解説します
知財


「インターネット販売(ネットショップ開業)」のおかげで、個人商店でも全国のお客様を顧客にし得る時代。それを手軽に可能にしてくれる頼もしい存在が、「電子商店街(サイバーモール)」です。そんなサイバーモールの代表格のひとつ「Yahoo!ショッピング」をご利用になっている方も多いのではないのでしょうか。

商品の品揃えや価格などについて、多くの商品を比較・検討しやすいサイバーモールにおいて、成功されている出店者の方々は、オリジナリティのある商品を製造・販売されているケースが多いものと思料しますが、その「オリジナリティ」に寄与してくれるのが、ご自身所有の「知的財産権」ですよね。

発明を保護する「特許権」や、物品のデザインについての「意匠権」、ブランドを保護する「商標権」など、さらに、書籍や音楽コンテンツなどの著作物に与えられる「著作権」も知的財産権の一つ。これらの「◯◯権」は、権利者だけが利用・使用できる独占排他的な権利ですから、商品に生かすとそのオリジナリティに直結するわけです。

そこで、成功されている出店者の方々(以下、「出店者等」といいます)が特に気になるのは、ご自身の「知的財産権が適切に守られているか」でしょう。せっかく人気商品に育てたのに、相乗りされたり、自身以外の販路で販売されたりすることは、権利の侵害だったり、権利の価値を希釈されているおそれがありますからね。

また、Yahoo! JAPANでは、「ヤフオク!」の名称で、インターネット・オークションも運営しています。不要になった商品を、その価値を認めて「欲しい」という人に、適正な価格で手軽に譲渡できるのが魅力なインターネット・オークションは、事業者に限らず利用できる、裾野の広いものです。 しかし、ここで自身の商品が不適切に売買されているのを発見してしまったら、出店者等の「知的財産権保護」への不安は、さらに増大してしまうことでしょう。

そんな方々の不安を軽減してくれるのが、「Yahoo! JAPAN知的財産権保護プログラム」という制度です。今回は、その概要と、そのプログラムの利用に必須となる知的財産権について、ポイントを解説します。

この記事の目次

便利な「プログラムB」とその利用のハードル

Yahoo! JAPANのサイトによれば、「Yahoo! JAPAN知的財産権保護プログラム」には、「プログラムA」と「プログラムB」の2種類のプログラムが存在します。

「どちらのプログラムもヤフオク!やYahoo!ショッピングで権利が侵害された出品物を発見した場合に、権利者からの申告に基づき、Yahoo! JAPANが該当する違反出品物を削除するなどの措置を行う制度」とのことですが、ここでは まず、敢えて「プログラムB」から見ていきたいと思います。

「プログラムB」は、事前に登録しておくと、権利が侵害されている出品物を発見した場合に、ウェブフォームで削除依頼の申告を行うことができるものです。これは非常に楽ですよね。しかし、利用に関して以下のハードルがあります。

①対象となる「知的財産権」が、限られている
②事前登録に審査がある



まず、①ですが、「プログラムB」の対象となる知的財産権は、以下の4つのみです。

●著作権
●商標権
●パブリシティ権
●育成者権


つまり、ご自身の商品に利用している知的財産権が、ここにないもの(例えば「特許権」や「意匠権」など)である場合は、「プログラムB」は利用できないため、後述する「プログラムA」を利用することになります。

また、ここにある4つの権利の特徴が、②(事前登録の審査)にも影響してきます。4つの権利のうち、「著作権」と「パブリシティ権(著名人がその氏名、肖像について有する顧客吸引力・経済的利益を排他的に支配する権利)」については、(審査や登録など特別な手続きを経ての)登録をせずに生まれる権利です。しかし、それ故に、自身が本当にその権利を保持しているのか、証明しづらいわけです。

これは、Yahoo! JAPAN側にとっても、事前申請の審査において、「この出店者が『権利侵害されている』といっている商品は、本当に著作物なのか」「この出店者は、この商品の真の著作権者なのか」「この商品に使用されている肖像に、真に顧客吸引力があって、パブリシティ権があると言えるのか」について、拠りどころにできる明確な判断基準がないともいえます。

そして、事前申請の結果「ご申請いただいても登録をお断りする場合があります。」とありますので、著作権とパブリシティ権について、申請者が正当な権利者であることに少しでも疑義があれば、登録が断られても不思議ではないわけです。 また「登録をお断りした場合、個別の理由についてのお問い合わせには応じかねます。」ともありますので、断られた場合はなかなか対応が難しいと言えます。

実際に公開されている登録団体を見ても、大手のコンテンツ制作会社や放送局が名前を連ねていますので、著作権でいえばメジャー流通している書籍やCD、DVD等のコンテンツの発売元や音楽出版社、パブリシティ権でいえば、著名な芸能人の肖像を利用したグッズなどの発売元、あるいはその芸能人の所属事務所申請でないと、登録が断られることはありそうです。

「プログラムB」利用には「商標登録」が有利

では、小規模な事業を営む出店者にとって、「プログラムB」の利用はハードルが高過ぎるのでしょうか?いえ、残りの2つの権利 ―「商標権」と「育成者権」の利用が考えられます。これらは、公的機関の審査を経て登録されることで発生する権利ですので、事前申請時に、権利の登録番号を報告することで、出店者等が正当な権利者であることを証明できる(=Yahoo! JAPAN側も確認しやすい)ということです。

「育成者権」については、“種苗法に基づき、植物の新たな品種に対して与えられる知的財産権”ですので対象商品は限られますが、「商標権」については、あらゆる商品について権利化が可能です。例えば、自費出版している書籍やDVDなどでも、それらの商品や(制作・出版等)サービスについて、出店者等が”目印“となる名称やロゴなどを必ず付すようにして、その名称等を「商標登録」すれば、商標権が得られるのです。

他にも商標登録にはいろいろな条件がありますので、専門家である「弁理士」に相談しましょう。また、商標登録が原則「早い者勝ち」の制度であること、また(出願から)登録まで、スムーズにいっても8ヵ月程度を要することから、早めの相談をお勧めします。

「プログラムA」の利用と、“代理人”の活用

自身の所有する知的財産権が「プログラムB」の対象ではない、あるいは「プログラムB」に事前申請したものの登録を断られてしまったなどの理由で、「プログラムB」が利用できなくても、あきらめるにはまだ早いです。もうひとつ「プログラムA」があります。

「プログラムA」は、権利が侵害された出品物を発見した場合に、その都度、証明できる資料を用意して、Yahoo! JAPANへ郵送で削除依頼の申告を行う方法です。
そして、こちらのほうは対象が「あらゆる知的財産権が対象です。」とあります。

ここで、知的財産権とはどの権利を指すのか、あらためて考えてみると、「知的財産基本法」(第2条2項)によれば、

●特許権
●実用新案権

●育成者権
●意匠権
●著作権
●商標権


が、知的財産権に該当します。赤字の3つにつきましては、「プログラムB」対象外でしたので、「プログラムA」を利用することになります。
また、同法では《その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。》とも記載されているので、判例にしたがって(プログラムBの対象にもなっている)
《パブリシティ権》も、知的財産権のひとつとして「プログラムA」の対象になると考えてよろしいでしょう。

このように対象が広いというメリットがある一方、すこしデメリットに感じるのは、「その都度、証明できる資料を用意して、Yahoo! JAPANへ郵送で削除依頼の申告を行う」という点ですよね。提出書類もかなり多いです。それほど頻繁に機会がない出店者等であれば問題ないでしょうが、頻繁に削除の申告を行う必要がある(、けど、「プログラムB」は利用できない)場合は、面倒に感じるかもしれません。
そうした場合は、「Yahoo! JAPAN知的財産権保護プログラム」特有のルールを活用すると、楽になります。

それは… 「代理人」を利用することです。

他のサイバーモールの、同種の(ブランドを保護する)サービスでは、出店者等の本人以外が手続きをすることを、明確に認めていないものもありますので、これは活用しない手はありません。
そして、代理人になれるのは、※弁護士資格、および弁理士資格を有する方以外は、代理人とは認められませんとのことです。

従いまして、

●特許権・実用新案権・意匠権・商標権・育成者権に基づいた削除申告をする場合は、これらの権利を取得する際に依頼した 「弁理士」に、代理を相談してみる

●これから商標権を取得して、それに基づいてのプログラムの利用を検討している場合は、商標登録の手続きも含め「弁理士」に代理を相談してみる

●著作権やパブリシティ権に基づいた削除申告をする場合は、これらの権利に詳しい弁理士・弁護士に、代理を相談してみる


ことが、申告手続の負担を軽減しながら、同プログラムを利用していくのが、知的財産の保護にはベストでしょう(※なお、代理人制度は、「プログラムA」のみならず「プログラムB」の手続きについても認められています)。

まとめ

以上、「プログラムB」の登録には、それなりにハードルがあることをご説明しました。また「プログラムA」も、「Yahoo! JAPANは、受領した書類ごとに、利用規約などに基づいて対応すべきかを検討します。ただし、必ずしも削除などを行うことをお約束するものではありません」と記載がありますので、すべての削除申告が認められるとは限りません。

しかし、出店者等が「自分の知的財産権が侵害されている!」と感じた、他者による出品・販売を発見したにもかかわらず、放置しておけば、出店者等の商品のオリジナリティやブランド力は、どんどん毀損していくおそれがあるのです。せっかくの「Yahoo! JAPAN知的財産権保護プログラム」ですから、その利用にトライしない手はありません。代理人(弁護士・弁理士)制度も検討しながら、ぜひご自身の無形財産である「知的財産(権)」を大事に保護、ご活用ください!

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