「部分意匠」って何??意匠登録の権利範囲を広くする方法を弁理士が解説します
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すてきなデザインの製品を開発した人は、その製品を独占的に販売するために「意匠登録」を受けようとします。しかし、意匠登録には、その製品の全体のデザインを意匠登録するという一般的な方法以外に、その製品の一部のデザインについてのみ意匠登録を受けることができる「部分意匠」という制度があります。
この「部分意匠」の制度を利用すると、通常は意匠登録の範囲を広くすることができます。ここでは、そのような「部分意匠」のメリットについて解説します。

この記事の目次

「意匠登録」の効力

「意匠登録」を受けると、その工業製品のデザインを独占的に使用することができます。「独占的」ですので、他人が無断でそのデザインを模倣した製品を製造したり販売したりすれば、その製造や販売を中止させたり、更には損害賠償を請求したりすることができるのです。
「模倣された!」と言うためには、そのデザインがまったく同じである必要はありません。他人のデザインが、いわゆる「類似」のデザイン、つまり似たようなデザインであれば、製造や販売の中止や損害賠償などを求めることができます。

しかし、この「類似」という範囲は決して広いものではありません。例えば、一般の消費者の人たちが買い間違えない程度に、デザインを変えられてしまったら、もはや「類似」とはならなくなってしまい、みなさんがせっかく意匠登録を受けていたとしても、その意匠権を行使して、他人による製造や販売の行為を止めることはできないのです。

「部分意匠」とは?

もし、あなたが、すてきなデザインのコーヒーカップを開発したとしましょう。そのコーヒーカップのデザインの特徴として、取っ手の部分がこれまでに見たことがない斬新なデザインであったとします。「これはきっと売れるぞ!」と思い、すぐに弁理士に依頼して、そのコーヒーカップ全体について意匠登録を受けたとします。

その後しばらくして、デパートやネットショップで、自分のデザインとそっくりの取っ手のコーヒーカップが売られているのを見つけました。あなたは、すぐにそのコーヒーカップの製造や販売を中止させたいと思いましたが、良く見てみると、取っ手のデザインはそっくりなのですが、カップの本体はまったく違ったデザインをしています。

今回、あなたが意匠登録を受けたのは、あくまでもコーヒーカップ全体のデザインについてです。つまり、その他人が販売しているコーヒーカップのデザインが、あなたの意匠登録と類似しているかどうかは、「あなたのコーヒーカップ全体のデザイン」VS「その他人のコーヒーカップ全体のデザイン」で判断されます。

両者はカップ本体のデザインは違っているため、コーヒーカップ全体のデザインとして、一般の消費者の人たちが買い間違えるまで似ているとはいえません。その場合、残念ながら、あなたは、せっかく意匠登録を受けたにもかかわらず、その取っ手部分をマネしたコーヒーカップの製造や販売を止めることはできないということになってしまいます。

しかし、それでは、納得できないことと思います。それもそのはずです。
あなたのコーヒーカップのデザインの特徴は、「取っ手部分」にあったからです。
従来は、製品全体のデザインしか意匠登録を受けることはできなかったのですが、このような特徴のある「部分」のみを模倣して、製品全体のデザインは類似しないようにするといった悪質な行為から意匠を保護するため、現在は「部分意匠」という制度を利用できるようになっています。

「部分意匠」で意匠登録を受けるほうが適しているケース

これまで見てきたように、みなさんが開発した製品のデザインのうち、ある部分だけがとても特徴的で、その部分のデザインを保護したいと思うときは、「部分意匠」として意匠登録を受けることをおすすめします。

そうした場合に、もし一般的な方法(全体意匠)で意匠登録を受けてしまうと、その独創的で特徴ある部分を取り入れながら、製品全体のデザインでは意匠権侵害を避けるような巧妙な模倣から、あなたの製品を守ることはできなくなってしまいます。

また、「全体意匠」で意匠登録を受けると、その製品全体のデザインと同じか類似しているデザインにしか権利範囲は及びませんが、「部分意匠」の制度を利用して意匠登録を受けると、製品のデザインのうち、その部分以外のデザインはどのような形状であろうが関係なくなるため、実質的に意匠権の権利範囲が広くなることになります。

まとめ

「部分意匠」の制度と、そのメリットについて、ご理解いただけたでしょうか?
意匠出願は、単純にその製品の図面を提出すればいいというわけではありません。意匠出願の方法を含めて、しっかりと戦略を練ることが大切です。
すてきなデザインの製品を開発されたときは、ぜひ「意匠に強い」弁理士までご相談ください。

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