商標登録の早期審査を受ける条件とは?(9ヶ月の審査待ち期間を2ヶ月にできるかもしれません)
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この記事の目次

1.商標登録の待ち期間が長期化しています。

皆さんご存知でしょうか。
現在、商標申請してから、審査結果が通知されるまでの平均待ち期間が9ヶ月程度となっています(2019年4月現在)。 なんで商標の審査に9ヶ月もかかるの?
と思う方もいらっしゃるかと思いますが、審査に時間がかかるのではなく、審査がとても混んでいて、審査が始まるまでに長い時間がかかるのです。

ちなみに、少し前までは、審査の待ち期間は6ヶ月程度だとご案内していました。しかし、最近この期間が長期化する傾向にあります。理由は単純に、商標出願の件数が増えているからのようです。

6ヶ月でも十分に長いのですが、9ヶ月ともなりますと、1回補正が入ったりすると1年以上になる場合も普通にあります。そこまで長いと、登録になる頃にはビジネスの事情が変わっていることもあり、中小企業には不便な状態になっていると思います。

しかし、実は、この9ヶ月の待ち期間を2~3か月にまで減らすことができる、「早期審査」という制度があります。 どんな場合に早期審査を利用できるのか、この後分かりやすく説明していきます。

2.早期審査を受ける条件は?

まず、早期審査を受けるには、条件があります。この条件が、けっこう複雑なので、弁理士でも理解するのが少し難しいくらいです。 しかし、一般の方は、もちろん、この早期審査の条件を正確に把握する必要はありません。最低限押さえるべきところだけ抑えて、後は弁理士に任せると良いでしょう。

(1)最大の条件は「その商標をすでに使っていること」

最も重要な条件は、「その商標をすでに使っていること」です。逆に言いますと、この条件さえ満たせば、後は弁理士側で検討してくれて、なんとかしてくれる場合が多いです。もちろん、何とかならない場合もありますし、早期審査を使わない方が良い(使うことにデメリットがある)場合もありますが、そこも含めて、弁理士がアドバイスしてくれるでしょう。

なお、この「その商標をすでに使っていること」には、厳密には「使う準備を相当進めている」場合も含みます。しかし、準備を相当進めている場合って、どの程度のことを指すのか難しいですよね。ですから、そこの判断は弁理士に任せると良いと思います。まだ商品の販売などを始めていなくても、ある程度、ビジネスが具体的に進んでいる場合は、弁理士に相談してみると良いでしょう。

(2)用意する書類は?

「その商標をすでに使っていること」、または「使う準備を相当進めていること」がわかる書類が必要となります。

例えば、衣類でしたら、その衣類にタグをつけてそのタグに商標が記載されている写真を提出するような方法が考えられます。 サービス業の場合は、ウェブサイト上でその商標を使ってサービスを宣伝しているならば、そのウェブサイトの写しを提出するような方法が考えられます。

(3)書類の提出で注意すること

「その商標をすでに使っていること」を証明するための書類を用意するときに、よく陥りがちなミスが、次の2つです。

(a) 使っている商標と、商標登録する商標が同一でない
(b) その商標を使っている様子はわかるが、誰が使っているのかわからない

(a)は、「100%完全に同一でなければならない」ということはありませんが、この同一性の要件を甘く見ると痛い目にあいますので、細かい部分まで気をつけて、同一の商標を用意しましょう。

(b)もよくあるミスです。出願人がその商標を使っていることがわかるように、補足の資料を提出しましょう。

3.早期審査を是非使った方が良い場合とは?

審査待ち期間の短縮は、どんな人にもメリットがあるとは思いますが、その中でも特に早期審査をするメリットが高いのは、次のようなケースかと思います。

(a) amazonブランド登録をしたい
(b) 同じ名前を使っている人がいてやめさせたい
(c) 商標権侵害をしていると他人から警告された
(d) 他人の類似する登録商標が見つかったので、商標登録になるかどうか早く決着をつけたい

上記のうち、(a)と(b)はそのままの意味ですので、わかるやすいかと思います。

(c)と(d)は、少し言葉が足りずわかりづらいかもしれませんので、補足しようと思います。

(c)はどのような場合かと言いますと、例えば、ABCDという商標を使っていたところ、ABCという商標の商標権者から、「御社のABCDはうちのABCに類似しているので、使うのをやめてください」と警告書を受けたような場合です。
このような場合、ABCとABCDが本当に類似しているのかどうかはっきりさせるために、「ABCDで商標申請してみる」という手段が考えられます。なぜならば、このABCDの商標登録になれば、ABCDを使う問題がないと判断できるためです。
こういう場合、商標権侵害で警告を受けているわけですから、早期審査を使って早く決着をつけることが有効です。

(d)はどのような場合かと言いますと、例えば、すでにABCという商標を使って商品を販売していたとします。そろそろ商品が順調に売れ始めたので商標登録をしようと思って商標調査をしたところ、ABCDという商標が商標登録されていることがわかりました。弁理士が言うには、ABCとABCDは審査において「類似」と判断される可能性があるとのこと。しかし、絶対に商標登録にならないというわけではなく、最終的には、商標申請してみなければわからないという判断でした。
こういう場合、すぐに早期審査を使って商標申請して、自社のABCが商標登録になるかどうか確かめることが有効です。もし、自社のABCが無事に登録になれば、その後もABCを使い続けて何の問題もないことになります。一方で、審査官に「ABCDと類似している」と指摘されて登録NGだった場合は、ABCの使用を停止する(名前を変える)ことを検討しなければなりません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
早期審査は、それなりに面倒な手続きではありますが、そのメリットは非常に大きなものがあります。弁理士に商標登録を依頼するときは、早期審査について相談してみると良いと思います。最近は、特に待ち時間が長期化しているため、早期審査に力を入れている弁理士も増えているかと思います。
私の事務所でも、最近は、早期審査の要件を満たす方はなるべく早期審査が受けられるよう、費用体系や事務の体制を整えています。

参照 : SHARES 弁理士 井上 暁彦のページ

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