商標検索の結果、商標登録になるかどうかが怪しい時はどうする?
知財


商標登録できるかどうかの調査を弁理士に依頼したけれど、「商標登録になるかもしれないけれど、ならないかもしれません。」と言われて、「結局どうしたら良いの?」と困ったことはないでしょうか?

「商標登録にならない可能性がある」という調査結果を受けて、それでも商標申請するのか、はたまたやめるのか判断が難しいですよね。
そもそも、商標登録の問題以前に、その商標を使った商品の製造は中止するべきなのか、そこまでする必要はないのか。そういったことは、教えてくれない弁理士も多いと思います。「最終的にはお客様の経営判断となります」といって、それ以上は口を出さないようにしている弁理士も多いようです。

しかし、結局どのように行動したら良いのかがわからないのでは、商標調査をしてもらった意味がありませんよね。 ですから、私の事務所では、なるべく、お客様のその時の事業の状態に合わせて、今後どうするか経営判断できるような、アドバイスをするようにしています。

ここでは、今まで私が弁理士としてお客様にしてきたアドバイスを整理して、弁理士の商標調査結果を受けてどう行動したら良いか、すっきり解決するように説明していきます。

例えば、私の事務所では、商標調査の判定基準として、次のようにA〜Eで表すことが多いです。

<判定の説明>

A判定登録になる可能性が高いです(登録にならなかった場合返金)
B判定登録になる可能性が高めですが、若干懸念事項があります(70〜80%程度)
C判定登録になる可能性はあるものの、その見込みは五分五分をやや上回る程度です(55〜65%程度)
D判定登録になる可能性はゼロではないものの、その見込みは五分五分を下回ります(35〜45%程度)
E判定登録になる可能性は極めて低いです

※ 上記はあくまで、私の事務所で用いる独自の基準であり、一例としてあげています。

ここで、A判定の場合は、全く問題ありませんね。逆に、E判定の時も、問題ないかと思います。

それでは、B〜D判定の時は、どう行動したら良いでしょうか? 非常に迷うところだと思います。

この記事の目次

1.まだ商標が決定していない場合は、原則として、A判定でなければ出願しない

これは特にメーカー様の場合ですが、まだ商品名が確定していない段階(商標を変更できる段階)ならば、基本的には、A判定以外の場合は商標申請しないことをお勧めします。

なぜかというと、一般的なメーカー様の場合、最終的に商標登録になるのを待たずして、その商品の製造販売を始めることが多いためです。つまり、商品の製造販売を始めたのちに、「やっぱり商品名が商標登録になりませんでした。商品名を変えなくてはなりません」となどということになったら、非常に大きな損失となります。

商標登録の審査は非常に長い時間がかかります。2020年現在では、平均14ヶ月と発表されています。したがって、審査の結果を待ってから製造販売するということは、なかなか現実的ではありませんよね。ですから、怪しい商標は徹底的に避けるというのがセオリーとなります。

2.すでに使い始めている場合は、B判定で出願することも止むを得ない

最近は、個人レベルで新規参入されるメーカー様も増えまして、そういう皆様は、商標登録を後回しにする場合もあります。つまり、ブランド立ち上げ時は資金がないため、販売を開始して、ある程度利益が出てから商標登録するという方針の方です。(もちろん、商標登録しない状況で販売を開始するのはリスクがありますが、そのリスクは仕方がないという考え方です)。

こういう場合、商標調査の段階で、すでに商品名が決まっていて、しかも製造販売を始めていますので、弁理士の出した判定が悪くても、「それでは別の名前に変えます」と簡単には言えない場合がありますよね。そういう時は、止むを得ずB判定の商標で商標申請する場合もあります。
B判定くらいであれば、焦っていますぐ商標を変更するよりも、審査結果を待ってから対処しようという方針をとることが考えられます。

この場合は、審査期間を短縮するため、「早期審査」という特別な制度を使用することがオススメです。「早期審査」という制度は、いわゆる緊急性を有する商標について、割り込み審査が認められる制度で、この場合のように「その商標をすでに使用している」ときは、しっかりした証拠を提出すれば、早期審査が認められます。早期審査が認められると、14ヶ月程度かかる審査待ち期間を、3ヶ月程度に短縮することができますので、非常にメリットが大きいです(2020年現在)。

※特許庁HPより:早期審査の概要

3.C判定、D判定の場合、商標を少し変更して出願することも検討する

すでにその商標を使用しているのに、C判定、D判定、といった悪い結果を受けてしまった場合は、どうしたら良いでしょうか?

その場合は、やはり、商標を変えることを視野に入れざるをえません。

ただし、この場合であっても、商標を変更することでのダメージをできるだけ小さくしたいですよね。ですので、まず、現在使用している商標を残しつつ「少し変更する」ことで、B判定くらいにできないかを検討します。例えば、ABCという名前を〇〇ABCに変更する、といった具合です。

しかし、この方法は万能ではありません。まず、追加する〇〇の部分はある程度特徴的な言葉でなくてはならない点に注意が必要です。例えば、日本ABCとか、ABC食堂(飲食店jにおいて)などは、ABCの類似の範囲を出ないものと考えたほうが良いでしょう。

また、〇〇がある程度特徴的な言葉であったとしても、〇〇ABCという言葉が、あまり一体的でない言葉である場合、つまり、「〇〇」と「ABC」はっきり2つに分けて観察されるような場合は、ABCとの類似関係は依然として残る可能性があります。

最後に、どうしても商標の変更はできないという場合は、C判定、D判定でもチャレンジして商標申請するほかありません。この場合も、早期審査を使用することがオススメです。

4.ダメ元でC判定、D判定でチャレンジするのが有効な場合とは?

近年は、OEMとネット販売の組み合わせで、とても気軽に商品を製造販売できる時代ですので、まだ実際に使用するめど(商品化のめど)が立っていない段階で、どんどん商品名やブランド名の商標申請をする方も増えました。

そういう、「今すぐ使うわけではない」という場合は、商標登録になるかどうかをあまり悩むよりも、とりあえずダメ元でも商標申請して、審査結果を待つのも有効な手です。

まとめ

中小企業や個人事業の方もしっかり商標登録をするようになったのは、本当にここ5〜10年くらいのことで、まだまだネットなどで情報を見ても、商標登録についてよく理解できないことは多いと思います。

皆様の将来有望な事業が、商標登録の失敗で台無しになってしまわないよう、少しでも役に立てたら幸いと思っていますので、疑問などがありましたらお気軽にご相談ください。

参照 : SHARES 弁理士 井上 暁彦のページ

参考:SHARES LAB
『商標の類似の判断で一番大切なこと』
『商標登録は自分でできる ? 弁理士に依頼するべき5つの理由』

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