この記事では、「中小企業の知財戦略」におけるその必要性や具体的な取り組み内容について、ご紹介したいと思います。
この記事の目次
中小企業における知財戦略の必要性
2019年度の中小企業白書※1)によれば、中小企業の経常利益は過去最高の水準にある一方で、人手不足の深刻化および労働生産性の伸び悩みなどの課題も浮き彫りになっているのが現状です。このような状況では、中小企業では知財の優先度が「正直低い」というのが現実ではないでしょうか。
しかしながら、昨年、米アップル社がiPhoneに使用される技術において、他社が保有する知的財産を無断で使用していたということで、米国連邦裁判所より約3,000億円もの損害賠償命令が下されました※2)。
また、製薬業界では、医薬品を保護する特許が満了してしまった途端に、製品の売上げが9割近くも減少するという話を耳にします。
激化するグローバル競争において、ビジネスを有利に展開するため知的財産の存在感を増してきているのも事実、中小企業でも事業戦略に知財を活用する必要性が高まっています。
参考:
■※1)中小企業庁:2019年版「中小企業白書」
■※2)アップルがクアルコムの3つの特許を侵害、米連邦裁判所が判決
知財戦略の具体例
研究開発方針策定への活用(パテントマップ)
一連の研究開発を通じて様々な特許を出願します。それは技術の基本特許にはじまり、その改良・周辺技術に関する特許など様々な広がりをもっています。これら一群の“特許網”の関係性を見える化するツールとして「パテントマップ」を活用することができます。パテントマップによって、①自社の財産の所在、および②研究テーマの方向性・強化すべき技術ポイントを明確にすることができます。
また自社のパテントマップだけでなく、他社のパテントマップを作成することで、他社との比較・差別化が可能となり、研究開発パートナーの選定にも活用することができます。
このようなパテントの可視化は、最近では外部の特許事務所や調査会社に依頼することができ、実際に大手企業の多くはそのようなサービスを活用しています。
ライセンスへの活用
自社が保有する特許を他社へライセンス(実施許諾)することで、保有する特許権を活用してライセンス収入を得ることができます。また、他社と契約する際、特許を保有していれば、その内容を契約書に盛り込むことで、当該技術・製品は他社から特許侵害されないということを担保することができます。これにより協業先との共同契約締結を円滑に進めることができます。
資金調達への活用
自社の保有する技術・製品が特許や商標によって保護されていることで、銀行などの金融機関から資金調達する際、信用性の面より有利に働くことがあります。知財戦略に必要な人材
大企業の多くは、自社に知的財産に関する組織・人材があり、知的財産を運用する体制が整っています。一方、そのような組織・人材を有していない中小企業では、
①経営者が知的財産の重要性を理解すること
②企業内で知財担当者を育成すること
知財担当者は、“知財の担当責任者”として、自社の知財状況を把握し、企業の事業戦略に知財面より進言していくことになります。
知財担当者は状況に応じて専門家である外部特許事務所の弁理士よりアドバイスを受け、知財課題に対する解決方法を策定しますので、知財担当者に求められるスキルとして「高いコミュニケーション能力」が挙げられます。
まとめ
今回の記事では、「中小企業の知財戦略」について、簡単に紹介させて頂きました。この記事が独自の技術を保有している中小企業の多くの方々参考になれば幸いです。
この記事が「勉強になった!」と思ったらクリックをお願いします