アメリカで商標登録するときの注意点~初めての外国商標登録シリーズその1~
知財


外国を見据えてビジネスをしている方は、一度は、外国での商標登録について考え、自分で調べてみたことがあるかもしれません。 しかし、インターネットで検索しても、結局、自分が具体的にどのように行動すれば良いかわかりませんよね。書いてあることも、サイトによってまちまちかと思います。

ビジネスがグローバル化していると言われてはいるものの、日本の小さな企業が外国で商標などの権利を当たり前に取得するようになったのは、ごくごく最近のことです。ですから、世の中の多くの情報は、中小企業向けとは言っていても、本当の初心者向けにはなっていないのが現状です。
この記事では、外国の中でも、最も大きな市場の一つであるアメリカでの商標登録について、本当の初心者向け、初めて外国で商標登録について検討する人向けに説明します。

この記事の目次

1.アメリカで商標登録をするのはどんなとき?(必要性、目的は?)

まず、そもそも、アメリカで商標登録する必要があるのは、どんなときでしょうか。
外国での商標登録は結構費用がかかりますので、何でもかんでも商標登録するという方針は得策ではありません。まずは、必要性から考えるのが重要です。

(1)アメリカで商標を使用する場合とは

まず、最も基本的なこととして、「アメリカで商標登録をする必要がある場合」というのは、当然、「アメリカで商標を使用する場合」です。そして、「アメリカで商標を使用する場合」というのは、主に、「(地理的に)”アメリカにいる人”に向けて商品やサービスを提供する場合」となります。なお、ここでのアメリカは、ハワイやグアムなども含みます。

アメリカに実際に店舗や営業所を構えてビジネスをする場合はわかりやすいですが、近年は、インターネットの普及によって、日本にいながらにして、アメリカで商標を使用している場合もありますので、注意しましょう。

(2)「実際にアメリカで自社商品が売れているか?」で考えましょう

「でも、インターネットって世界中からアクセスできるわけだから、うちのウェブサイトも当然、アメリカからアクセスできるよね。しかし、そこまで考えるならば、全ての国で商標登録しなくてはならないのでは?」という疑問を持たれる方もいるかと思います。

その疑問はもっともです。実際、インターネットで商標を使用するとき、現状、「どの国において商標を使用しているか」というのは非常に判定が難しくなります。

例えば、インターネット上で商品を販売していたとしも、日本語だけのサイトで、明らかに日本人に商品を販売することしか想定していないようなサイトであれば、日本でしか商標を使用していない、したがって、アメリカで商標登録をする必要はない、とも考えられます。

しかし、そのような考え方も、徐々に崩れ始めています。ウェブサイトの自動翻訳機能などが充実し、日本語だけのサイトから外国人が物を買うようなシチュエーションも増えているためです。

そう考えると、もう、「法律的に、アメリカで商標を使用しているか?」を検討するよりは、「実際問題、アメリカで自社商品が売れているか?」を考えるのが現実的で重要な考え方となってきます。
つまり、言い換えると、「自社は、アメリカで売上げが上がっているのか?」「アメリカでこの商標を使って商売をできなくなったら困るか?」をよくよく検討して、アメリカで商標登録するかどうかを決めるということです。

(3)損害賠償を避けるために商標登録する

アメリカの大きな特徴として、「訴訟社会」ということがあります。日本よりも損害賠償請求などは簡単にされると考えた方が良いでしょう。

ですので、何らかの形でアメリカで商標を使う場合(商品を販売する場合など)は、商標登録をするか、まだ商標登録はしないとしても、「自分がアメリカでその商標を使用することが他人の権利を侵害していないか」を調査するのが重要となります。

なお、アメリカにおける商標調査で気をつけなくてはならない点として、アメリカで他人の権利を侵害していないかきちんと調査するためには、「登録商標」だけの調査では足りずに、「実際に使用されている商標」を調べなくてはならないという点があります。

これは、アメリカが、「使用主義」という独特な考え方を採用していることによります。使用主義については後ほどきちんと説明しますが、つまり、商標登録されていなかったとしても、「その商標を使っている」という事実だけで、商標権のような独占権が認められる場合があるということです。

2.アメリカでの商標登録は、「国際出願(マドプロ)」と「直接出願」どちらがオススメ?

アメリカで商標登録する方法は、大きく二つあります。
一つ目は、アメリカの特許庁に直接手続きする方法です。ここで、日本在住者がアメリカの特許庁に手続きをする場合は、必ずアメリカの弁理士を使う必要があります。

二つ目は、「国際出願(通称マドプロ)」という制度を使う方法です。これは国際事務局というところに手続きをして商標登録をする方法なのですが、国際事務局は日本の特許庁内に支部がありますので、国際出願をする場合は、(最初の段階では)アメリカの弁理士を使う必要はありません(後々、アメリカの弁理士を雇う必要が出る場合があります)。

(1)アメリカでの商標登録は直接出願の方がオススメ?

このように2つの手段があるのですが、実は、アメリカでの商標登録は、「できれば国際出願(マドプロ)よりも直接出願を使いたい」と考える日本の弁理士が多いと思います。
もちろんケースバイケースではあるのですが、数ある外国の中でも、「アメリカは、国際出願よりも直接出願をオススメするケースが多い国”No1.”」というのが、多くの日本の弁理士の意見ではないでしょうか。

直接出願は、国際出願とは異なりアメリカの弁理士を雇う費用がかかりますが、その分、確実にアメリカの法制度にあった形で手続きをすることができるというメリットもあります。実は、長い目で見ると、トラブルや余計な出費を防止できるケースも多いのが特徴です。

(2)アメリカの商標登録で国際出願(マドプロ)が好まれない理由

アメリカでの商標登録において国際出願(マドプロ)があまり好まれないのは、アメリカが「使用主義」という厳しい思想に基づいて、独自のルールを徹底しているためです。

アメリカは、「商標登録できる商標は、実際に使用するものに限る」という思想を徹底しているため、他の国では提出が求められない「使用の証拠」の提出が必要だったり、使用していない商品に権利範囲が及ばないよう審査官の要求が厳しかったりします。

それにより、せっかく国際出願を使っても、結局、途中でアメリカの特許庁へ直接手続きする必要が出てきて、アメリカの弁理士を雇う必要が出てくるケースが多いです。 すなわち、国際出願による手続きの簡素化や、アメリカ弁理士の報酬を節約するメリットが得られないケースが多いのです。

それならば、「最初から信頼できるアメリカの弁理士に依頼して、最適な内容でアメリカの特許庁に提出する方が良いよね」というのが、日本の弁理士が経験則上感じていることです。

(3)まずは外国商標に強い日本の弁理士に相談するのが確実

各国出願、国際出願のいずれを選ぶにせよ、まずは、外国商標に強い「日本の弁理士」に相談するのが確実です。 各国出願の場合は、日本の弁理士は直接手続きすることはできませんが、外国商標に強い日本の弁理士であれば、信頼できる提携先のアメリカの弁理士を確保しています。必要に応じて、そちらを介して調査や手続きをしてもらいましょう。

国際出願の場合は、日本の弁理士が代理人となって、国際事務局に手続きをしてくれますので安心です。

なお、ご自身が英語に自信がある場合、アメリカの弁理士に直接、商標登録を依頼することもできます。 ただ、個人的には、この方法は、アメリカ外資の会社など、かなりアメリカの文化を知っていて、なおかつ商標登録にもある程度慣れている会社さんでなければ、おすすめしません。

私の経験上、日本の弁理士はかなり親切で、明朗会計、最初のお見積もり以上は費用を請求しないケースが多いと思います。その点アメリカの弁理士も同じだと思って、初心者の方が右も左もわからずにたくさん相談していると、タイムチャージでどんどん課金されていく場合があります。
親切さにおいても、外国の弁理士は日本の弁理士以上に”まちまち”な印象があります。慣れていない方は、まずは日本の弁理士に相談しましょう。

3.「使用主義」に基づく、アメリカの商標登録の難しいところは?

これまでにも少し触れましたが、アメリカの商標登録においては、結構独特で、難しい制度があります。

そのほとんどは、アメリカの「使用主義」に基づくものです。したがって、「使用主義」の考え方、原則を理解すれば、アメリカでの商標登録手続きに失敗する可能性は、ぐっと少なくなると思います。

使用主義とは、「もし商標登録していなくても、使用の事実があればそれを保護する」という思想です。 一方、その反面で、「使用していない商標には権利を与えない」ということも徹底されます。

それを踏まえた上で、例えば、下記のような点を注意して手続きすれば、アメリカでの商標登録は成功しやすくなると思います。

(a)商標の完全同一

実際に使用している商標(もし、現在商標を使用していない場合は、将来的に使用する商標)と、商標登録する商標が完全同一になるように注意する

(b)指定商品・役務を限定

指定商品・役務は日本の特許庁で求められるものよりも具体的に特定する。使用の予定がない指定商品・役務は極力省くようにする。

(c)詳細な調査

ビジネス規模がある程度大きい場合は、商標登録されている商標だけでなく、「商標登録されていないけれど実際に使用されている商標」も調査する。

まとめ

いかがでしたでしょうか。アメリカでの商標登録は、一見、審査がうるさくて面倒に思う部分がありますが、「使用主義」の本質を理解すれば、案外、理不尽が少ない制度ともいえます。アメリカでの商標登録に強い日本の弁理士に相談すれば、大きな問題を避けやすい国だと思います。

費用なども、外国の場合どれくらいかかるか非常にわかりづらいと思いますので、わからなくて悩んでいる方は、一度、アメリカでの商標登録に強い弁理士に相談してみることをお勧めします。

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