商標権消滅で訴訟提起!商標権を継続させるための基本を解説します
知財


つい先日、林家木久蔵ラーメンの製造事業者が林家木久扇氏の事務所を提訴したニュースがありました。林家木久蔵ラーメンを製造している事業者が商標権の期限が切れているのにライセンス料を支払っていたので林家木久扇氏の事務所に対して返金訴訟を提起した旨の内容でした。

J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)で調べてみますと商標「林家木久蔵」は2015年に更新されずに消滅し、2021年に再出願されています。更新されなかった理由はわかりませんが、商標権が消滅した後も継続して商標が使用されていますので、重要な商標だったと考えられます。

そこで商標を継続して守っていくための基本を解説します。

この記事の目次

1,商標権の期限の基本

商標登録すればその商標を使用する権利が発生します。自ら商標を使用することはもちろん、他人にライセンスを許諾して使用してもらうことも可能です。商標「林家木久蔵」の場合はライセンスを許諾されていたようですね。

商標権の期間は登録から10年または5年になっています。この10年または5年は商標権の登録料を支払うときに選択できます。

それでは、10年または5年の期限になった途端に商標権が無くなるとどうなるでしょうか?

大事に使用して世の中に周知された商標。商標権が切れて、他人が使用したらどうですか。商標権者はもちろん困りますが、世の中に同一商標が多数現れ、競業秩序が乱れます。

したがって、商標権は更新できるようになっているのです。更新すれば永久に商標を使用できます。大事な商標を更新していけば商標権者は安心ですし、世間の取引も正常に保たれます。

ちなみに商標権を更新できるのは満了日の6か月前から満了日までです。その間に特許庁に必要な印紙と一緒に更新登録申請をおこないます。

2,期限渡過したらどうする

商標権を更新して維持していくことは重要です。でも、商標権の更新を忘れていて更新期限が過ぎれば、商標権は消滅します。何とかしなくてはなりません。

追納による商標権の更新

更新期限が過ぎた場合、商標権の満了日の後半年以内であれば、更新料を倍額支払うことで商標権を満了日にさかのぼって更新させることができます(商標法第20条第3項)。更新を忘れていて半年以内に気づいた場合、この方法をとります。

回復理由書等の提出

更新できなかったことに正当な理由があった場合、満了日から半年経過後であってもさらに半年の救済期間が設けられています(商標法第21条第1項)。更新料を倍額払う以外に、理由を記載した書面等を提出する必要があります。その理由は期限渡過せざるを得なかった正当な理由です。まちがっても忘れていましたなどとは言えませんのでご注意ください。

新たに出願

最後の方法は同じ商標を出願することです。商標は特許権や意匠権と違い、新規性の要件がありません。そのため、新たに出願することで全く同一の商標を登録できます。ただし、商標権が消滅した後に他人が商標登録出願していれば、後願として拒絶されるおそれがあります。できるだけ早く気づいて出願しなおさなくてはなりません。

3,期限管理方法

運転免許証の更新期限であればお知らせが届きますが、商標権の更新期限は誰が知らせしてくれるのか?

答えは誰も知らせしてくれません。

原則、自分で管理することが必要です。商標権の期間は10年または5年と長いのでなんらかの方法を取らないと忘れてしまいます。ここで一般的に行われている期限管理方法を説明します。

パソコンで管理

表計算やデータベースソフトで期限管理します。単に期限を入力しておくのではなく、期限が近づいてきたら色を変えるなどの設定をしてくことをおすすめします。

パソコンで管理するので導入コストが安くて簡単ですが、パソコンを買い換えたり、担当者が変更されたりした時に注意が必要です。データや設定を移行したり、担当の引き継ぎを忘れたりしないようにしてください。ミスが生じやすいタイミングですので、細心の注意が必要です。

なお、期限管理できるソフトやクラウドサービスが市販されていますので、それらも選択肢として挙げられます。

特許庁のお知らせサービス

特許庁が令和2年4月1日から更新期限をお知らせするサービスを開始しました(特許(登録)料支払期限通知サービス )。商標登録番号を入力しておくことで、満了日が近づけばメールでお知らせしてくれます。登録できるのは最大30件までですので、権利数が少ない企業や個人向けです。

弁理士に依頼

弁理士に期限管理を依頼することも可能です。ほとんどの弁理士が自らシステムを構築したり市販のソフトウェアを導入したりしています。商標登録を依頼された弁理士に相談されてはいかがでしょうか。

期限管理会社に依頼

商標権の期限管理を業務にしている会社があります。更新期限が近付けば期限管理会社が商標権者にお知らせしてくれます。 なお、期限の管理方法は商標権に特化したものではなく、特許権や意匠権などにも適用できます。

まとめ

事業が継続されれば、それに付随した商標権を更新しなくてはなりません。うっかり忘れてしまうのは一大事です。期限管理方法をいくつか挙げましたので、自分に合った管理方法を見つけてください。また1つの方法に頼らずに、複数の方法をミックスしてみてはいかがでしょうか。

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