芸名(バンド名、ユニット名を含む)は商標登録した方がいい ! そのメリットを弁理士が徹底解説
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この記事の目次
こんにちは。弁理士の井上です。
ここでは、私の専門分野の、芸名やバンド名、ユニット名などの商標登録について解説していきます。


芸名の商標登録は保険に似ている


商標登録という制度は、そもそも保険に似た制度です。商標登録をするには、国に「印紙代」を支払わなくてはなりません。お金を支払って、独占権という形で、保証を買うのです。

特に、芸名の商標登録の場合、この「保険的要素」が非常に強くなります。将来、芸名をめぐるトラブルがあるかどうかは、誰にもわかりません。しかし、万が一そのようなことがないようにするための、「保険」が芸名の商標登録です。


芸名を商標登録するメリット


芸名を商標登録するメリットは、おそらく、ただ一つです。つまり、その芸名を安全に安心して一生使い続けることができるようにすることが、唯一のメリットだといえます。

もちろん、これは、商標登録だけで完璧な対策となるわけではなく、例えば、各種契約などについても気をつけなくてはなりません。しかし、まず、一番強くて確実な保証が商標登録だといって良いでしょう。


芸名をめぐるトラブルは、「身内」に関するものが多い


私がみてきた中でも、芸名をめぐるトラブルというのは色々なものがありますが、対外的なものよりも「身内」でのトラブルが多いのが特徴的だと思います。


音楽の芸名で身内トラブルが一番多いのは、事務所とのトラブル


音楽の芸名に関していうと、身内トラブルで一番多いのは、所属アーティストの芸名をめぐる、事務所とのトラブルです。

例えば、あるアーティストが音楽事務所に所属して活動していたとして、その音楽活動があまり上手くいかない場合があります。こういう場合、アーティストは、事務所を移転したり、事務所から独立して自分で音楽活動をすることを考える場合があります。

その時問題となるのが、「事務所を辞めても、今の芸名を使い続けられるか?」という問題です。特になんの縛りもない場合は問題なく使用できるのですが、音楽事務所の側で芸名を商標登録してしまっているということがよくあります。

また、商標とは別の話でいうと、音楽事務所と所属アーティストの契約書(通常、「マネジメント契約書」などということが多いです。)で、事務所を辞めた時の芸名の使用を制限している場合もあります。


なぜ音楽事務所は、事務所を辞めた後の芸名の使用を禁止したいのか


よく誤解されるのは、私は別に、音楽事務所が嫌いということではないということです(笑)
音楽事務所のお客様からのご依頼も、いっぱい受けています。ですので、音楽事務所の側に立って考えることもあります。

所属アーティストの芸名というのは、音楽事務所にとっては、お金と時間をかけて育ててきた「自社商品のブランド名」のようなものですので、ブランド力がある程度高まったところで簡単に他所に移られるのは困る、というのは、ある程度もっともな話だと思います。

特に、個人の芸名ではなく、バンド名やユニット名の場合、メンバーがある程度入れ替わったとしてもそのバンドやユニットは成り立つわけですから、その 名前のブランド力というのはとても強いです。これを、あっさり持って事務所を出られたら大変、というのは確かにあります。

ですから、芸名の商標登録というのは、事務所とアーティストの信頼関係と深く関係していると言えるのです。


次に多いのは、バンドメンバー内での芸名トラブル


さて、音楽事務所との間での芸名トラブルの次に多いのは、バンドメンバー間での芸名トラブルです。
ご相談で多いのは、バンドをやめるメンバーが、「自分がこのバンドをやめたあとは同じバンド名で活動するのをやめてくれ」といった、というものです。

こういうことをきっかけに、バンド名の商標についてご相談に来る方がとても多いのです。


その他のトラブルの事例


音楽関係以外では、有名な占い師から、自分の芸名で偽サイトを作られていたという相談がありました。このサイトを作った人は、なんと、その占い師だけでなく、複数名の有名な占い師の偽サイトを作っていました。

インターネット上での商標権侵害って、実は結構難しくて、侵害行為をしている人に連絡をする手段が見つからなかったり、その人を特定するのが難しかったりするんです。

こういう時に、商標権は結構強い権利といえます。なぜかというと、商標権というのは権利侵害していることが明白にわかりやすいためです。違法行為があることが明白であれば、プロバイダーなどを通じて侵害行為をしている人に連絡することがしやすいのです。


芸名は、「商標」ではないと聞いたけど


実は、この質問については、私のお客さんからこのような質問があったことはありません。 どちらかというと、専門家として、私がきっちり説明をしたいという気持ちで、私自身のためにいつもお客様にご説明している事項となります。

例えば、私が、音楽分野について、「〇〇太郎」という芸名を商標登録しているとします。この時、関係のない他人が、「〇〇太郎」という芸名を名乗る行為は、「商標の使用」に該当するのか ?
名乗るだけでは、「〇〇太郎」という言葉を商標として使用しているとはいえない、つまり、商標権侵害とはいえない、という見解が強いです。

だから、芸名を商標登録する必要はない、という考え方もあり得ます。しかし、それは、少し危険な考え方かと思います。 「〇〇太郎」という芸名で活動する場合、「〇〇太郎」という芸名を使う方法は、単に「名乗る」だけの方法とは限らないためです。

例えば、ポスターに大きく「〇〇太郎」と書くこともあるでしょうし、ホームページに「〇〇太郎」のロゴを表示することもあるでしょう。これは、れっきとした商標としての使用、つまり、商標権侵害となります。


商標権の強さ


私が芸名の商標登録をお勧めする理由として、「商標権」という権利が、日本の現実社会において非常に強い権利である、ということがあります。 芸名に関しては、例えば、「不正競争防止法」といった法律でも守られる可能性があります。

しかし、「不正競争防止法」などで相手の行為をやめさせるには、弁護士などの専門家を使って、訴訟までやらなくてはならない場合も多いです。なぜかというと、不正競争防止法という法律に違反しているかどうかは、判断がとても難しく、裁判をやってみなければなんともいえないケースが多いためです。

その点、商標権侵害は、侵害しているかどうかの判断は比較的簡単です。また、正直なことを言いますと、侵害しているかどうかがグレーな時も、「商標登録」という確固とした登録があるので、相手が引き下がってくれて、大きな争いにならないケースも多いということもあります。

これは、現実問題として、大きな武器になります。


まとめ


さて、芸名(バンド名やユニット名を含む)の商標登録について、かなり突っ込んだお話をしてきましたが、いかがだったでしょうか ?
芸名の商標登録を考えている方は、お気軽にご相談ください。

参照 : SHARES 特許業務法⼈アイリンク国際特許商標事務所 井上 暁彦のページ

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