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そもそもビジネスモデル特許とは
皆さんは、Amazonの「1click(ワンクリック)」をご存知でしょうか ?
その名前の通り、Amazonのサイト内で1clickで決済できる買い物のシステムです。実はこれは、Amazonが特許を取得しているビジネスモデルなんです(権利範囲については、ここでは説明を省きます)。
Amazonのワンクリック特許は、世界でも最も有名なビジネスモデル特許の一つで、その昔、ビジネスモデル特許が脚光をあびるきっかけになったものでもあります。それから時代は移り変わり、このようなビジネスモデル特許の取得数は一時期減っていました。
しかし、最近また、ビジネスモデル特許が脚光を浴びてきています。特許庁の統計を見ても、ビジネスモデル特許の取得数は、確実に増えてきているようです。
コンピュータやインターネットを利用していなければビジネスモデル特許にはなりません
「ビジネスモデル特許」という言葉ですが、実は結構誤解している方もいます。実は、ビジネスモデル「そのもの」は、特許にはならないんです。 特許になるのは、ビジネスモデルを ”インターネットやコンピュータを利用して実現するシステム” です。
つまり、インターネットやコンピュータを使わない、人間の取り決めだけのビジネスモデルは、特許にならないので注意しましょう。
ビジネスモデル「そのもの」は特許にはならない
ビジネスモデル特許は、 ”マネタイズ” 部分を守るためのもの
上で説明した通り、ビジネスモデル特許はインターネットやコンピュータを利用して実現するシステムですから、ビジネスモデル特許を取得したとしても、その「ビジネスモデルの全て」を守ることはなかなか難しいです。それでは、ビジネスモデル特許を取る目的とはなんでしょうか ?
私は、そもそもビジネスモデルとは、”マネタイズする(収益を上げる)ための仕組み”だと考えています。
そして、ビジネスモデル特許とは、そのビジネスモデルの中の、”マネタイズ部分”を守るためのものと捉えています。 この観点がないと、お金を出してビジネスモデル特許を取得しても、ただのセールストークのネタにしかならなくなる場合がありますので、注意しましょう。
ビジネスモデル特許を取得するメリット、デメリット
ビジネスモデル特許を取得する最大のメリットは、そのビジネスモデルを独占するために、競合・後発に対して「参入障壁」を築けることです。これによって、特許取得した人は、先行者利益を確保できるようになります。
逆にデメリットもありますが、それは、そのビジネスモデルの仕組みが公開されてしまうということです。
特許法の基本的な考え方として、「優れた発明は、世の中に公開して、世の中の発展に役立ててほしい」というものがあります。
つまり、特許法上、特許権という独占権は、優れた発明をした人が、その発明を公開してみんなにシェアした時に、すぐに真似をされてバカを見ないよう、「発明の公開の対価」として認められるものなのです。 ですから、安易な形でビジネスモデル特許を取得してしまうと、マネだけされて利益を確保できないといった状況に陥ることもあるので注意しましょう。
ビジネスモデル特許を取得するときの注意点
ビジネスモデル特許を取得するときは、弁理士に依頼するのが通常だと思います。このとき弁理士は、あなたのビジネスモデルを正確に理解し、特許を取得できるように尽力してくれると思います。
ただし、特許の怖いところは、特許になればそれで良いというものではない点です。弁理士が特許出願をして、特許を取得したとしても、それが必ずあなたのビジネスの利益になるものだとは限らないですので、きっちり弁理士と話をして、権利内容を確認しましょう。
「ビジネスモデル」は “マネタイズするために仕組み” ですので、ビジネスモデル特許では、そのマネタイズ部分を守る必要があります。ビジネスモデル特許の取得をするときは、必ず、「その特許が、あなたのビジネスの”マネタイズ(収益を上げる)部分” を守るための ”参入障壁” となっているかどうか」をしっかり注意しましょう。
大手家電メーカープリンタービジネス例
例えば、大手家電メーカーがやっているプリンタービジネスが有名です。プリンタービジネスでは、プリンタ本体ではなく、消耗品であるカートリッジで利益を上げていますので、メーカは、そのカートリッジ部分の特許取得に多くの費用をかけています。これも、マネタイズ部分を特許で守る、という発想となります。
繰り返しになりますが、ビジネスモデル特許を取ったからといって、そのビジネスモデルの全てを守れる訳ではありません。それを踏まえた上で、コアになる ”マネタイズ部分” をしっかり守れる権利内容になっているか、弁理士に確認しましょう。できれば、信頼できる、ビジネスモデル特許専門の弁理士に相談するのが一番良いかと思います。
ビジネスモデル特許取得の費用
なお、費用についてですが、ビジネスモデル特許だから特別に費用が高くなったり安くなったりということはなく、一般的な特許を取得する費用と変わりないと考えてください。
ただし、そのビジネスモデルの構成部分の数が多かったり、その構成が複雑だったりすると、明細書のページ数が多くなり、費用が高くなることがあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ビジネスモデル特許を取得するメリット、デメリットなどの理解の助けになれば幸いです。
あとは、費用対効果等から判断して必要性が感じられれば、ビジネスモデル特許を取得すべきなのですが、この判断はなかなかに難しい判断となります。もっとも重要な観点は「マネタイズしている部分を特許で守れるか」なのですが、それが可能かどうかの判断が、そもそも難しいのです。
ビジネスモデル特許を扱っている弁理士はそれなりの人数おりますが、実は、ビジネスモデル特許は、専門性の高い分野でして、本当にビジネスモデル特許が得意な弁理士は多くありません。
ビジネスモデル特許は、登録になる確率が低めなことから、なれない弁理士に依頼すると、確実に登録にすることを優先して弱い権利範囲にしてしまう場合があるので相談する場合は、ビジネスモデル特許専門の弁理士に相談してみることをお勧めいたします。
なお、アイリンク国際特許商標事務所では、ITベンチャー企業に在籍してビジネスモデル特許を専門にしている弁理士が、無料の相談に加え、特許を取れるかどうかの無料の簡易調査も行っております。
ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
参照 : SHARES 特許業務法⼈アイリンク国際特許商標事務所 井上 暁彦のページ
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