いきなりステーキの特許に教わる ! 拒絶された特許を取得する方法
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画像 : 特許5946491号

立ち食いステーキで人気の「いきなりステーキ」、今では行列のできるお店になり、2月にはニューヨークにも出店するなど絶好調ですね。

このような「いきなりステーキ」での肉の提供のシステム、実は、特許になっていたことをご存じでしょうか。


この記事の目次

いきなりステーキの特許とは


特許出願の内容ですが、当初は、以下のようになっていました。

(1)お客様を立食形式のテーブルに案内するステップ
(2)お客様からステーキの量を伺うステップ
(3)伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップ
(4)カットした肉を焼くステップ
(5)焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップ
を含むステーキの提供方法


上記内容ですが、「お客様から伺った量のステーキを立食形式のテーブルに運ぶ」というものですが、一度は、審査官によって拒絶されています。

拒絶された理由ですが、「ステーキを提供する手順という人為的取り決めを示すものであり、自然法則を利用しているものではない」というものでした。


自然法則とは


審査官が何を言っているのかというと、上記(1)~(5)は人間が行う手順で、その手順そのもの、また、それぞれの手順をどの順番で行うかというのは、人間が単に取り決めたものであるから「自然法則を利用したものに」該当しないということです。

自然法則とは、人間が経験的に自然の中から見出した法則を意味し、人間が人為的に取り決めた手順などは自然法則には該当しないこととなっています。
つまり、自然法則(万有引力の法則や、オームの法則)を利用しない、人手によるものは、日本では特許としては認められていないのです。

いきなりステーキの出願ですが、このように一度は拒絶されるものの、上記内容を修正することで最終的には特許になります。

どのように修正すれば「自然法則を利用したもの」に該当するようになり、一般的には、上記拒絶を解消できるか想像がつかないとは思います。
修正した内容ですが、人手ではなく、物によって、発明の目的が達成できるという見せ方にすることで、特許になりました。

具体的には、

(1)お客様を立食形式のテーブルに案内するステップを達成するための
「お客様を案内したテーブル」と対応する「テーブル番号が記載された札」
(2)お客様からステーキの量を伺うステップと対応する「お客様の要望に応じてカットした肉を計量する計量機」
(3)焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップを達成するための「お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印し」


上記を発明の構成とすることで、人手ではなく、物によって、発明が達成できるという見せ方にすることで特許になりました。

このように、物によって、発明の目的(効果を得られる)という見せ方をすることで、ステーキを提供できるという一見人為的な取り決めに見えるものであっても特許にできるという好例です。


特許を取ったことによる公告的な効果


なお、その後、いきなりステーキを運営するペッパーフードは特許が取れたことをプレスリリースしました。 このニュースは様々なメディアに大々的に取り上げられ、結果的にいきなりステーキの周知に大きな役割を果たしました。

また、いきなりステーキの店舗の入り口には、特許番号とともに、いきなりステーキのシステムが特許取得済であることが大々的に表示されています。

やはりこのような表示があることで、お客様に「ちゃんとしている」「革新的なシステムでステーキを提供している」という印象を与えます。
このように、特許を取ることで、市場を独占するというだけではなく、ブランドの向上や、サービスの信用度の向上、広告の面でも大きな威力を発揮します。


まとめ


今回は、いきなりステーキの例について説明させていただきました。このように、一見すると特許にならないものであっても、見せ方次第では特許にすることも可能です。

また、競合分野での特許が少ないこともあり、その分、特許取得による競合との差別化が容易であり、取得することによる効果が大きいということも言えます。 「こんなものは特許にならない」と思われるものであっても、一度専門家に相談することも有効であるといえます。

ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
参照 : SHARES原田国際特許商標事務所 原田 貴史のページ


画像出典 :Yahoo!ニュース いきなり!ステーキの特許化について

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