こんにちは。
ベンチャー企業・中小企業の法務支援を専門に行う弁護士の中野友貴と申します。
本記事では、これから起業をしようという皆様にとって最も重要なもののひとつ、創業者株主間契約について解説します。
この記事の目次
創業者株主間契約とは
創業者株主間契約とは、簡潔にいえば、一緒にビジネスを継続することができなくなった場合に、どうするのか ? を決めておく契約です。複数名の創業メンバー間で締結するべき契約です。
ずっと一人でビジネスをするという人ばかりではありませんので、多くのベンチャー企業・中小企業を始める皆様に関係がある契約です。
夢やビジョンを共有できると創業時には確信したメンバーとともに起業をしても、トラブルが起こることは非常に多いといえます。
例えば、目指すビジョンのズレが生じた場合、プライベートな都合でビジネスを継続できなくなった場合、他のビジネスから引抜きがあった場合、仲違いした場合など、ビジネスをともに継続していくことができなくなります。 私達に限って…ということが通用しないと思っておいた方が良いでしょう。
創業者は、互いに会社の株式を持ち合います。
株式を持つということは、会社に対して様々な権利を持つことと同じです。持株比率によりますが、定款の変更や、株式の発行、ストックオプションの発行、株式の譲渡、役員の選任などを行うことを拒否できます(通常のベンチャー企業・中小企業がこれらを行うためには、株主総会の決議が必要であるからです)。また、株主として、会社の各種書類の閲覧を請求することができます。
創業メンバーがビジネスの途中で辞めます…となった場合であっても、メンバーが株式を持っている限り、このような権利が失われることはありません。どんなに仲違いしていても、会社に深く関与できてしまうのです。
そこで、このような場合に備えて、創業者株主間契約を結んでおくことになります。
創業者株主間契約で結ぶべき事項
創業者株主間契約では、このような辞めた場合を想定して以下のような規定を準備するとよいでしょう。ただし、ビジネスの内容によっては様々なリスクが考えられますので、以下で必要十分というわけではありません。
1 創業メンバーが辞める場合には、その株式を、他の創業者やその指定する者が買取りできる旨の規定(買取条項)
2 創業メンバーが辞めた場合には、創業したビジネスと競業するビジネスを行ってはならない旨の規定(競業避止条項)
3 創業メンバーが辞めた後に、M&Aによる売却などを行う場合には、辞めたメンバーも、残存メンバーが決定したM&Aに応じなければならない旨の規定(強制売却条項)
2 創業メンバーが辞めた場合には、創業したビジネスと競業するビジネスを行ってはならない旨の規定(競業避止条項)
3 創業メンバーが辞めた後に、M&Aによる売却などを行う場合には、辞めたメンバーも、残存メンバーが決定したM&Aに応じなければならない旨の規定(強制売却条項)
など以下では、それぞれについて簡単に説明していきます。
買取条項
創業メンバーが辞める場合には、辞めたメンバーの株式を持たせておくことが望ましくないことが通常ですので、その株式を買取りできる旨の規定を設けるとよいでしょう。
この場合、注意するべき点として、以下のような事項があります。
(1) いくらで買取することにすべきか
非公開会社の株式評価は客観的評価が困難であるため、買取価額を定めることとなります。
非公開会社の株式評価は客観的評価が困難であるため、買取価額を定めることとなります。
(2) 誰が買取るか
買取できる者を誰にするのかを定めておく必要があります。他の創業メンバーやその指定する者などでよいでしょう。会社とすることも検討されますが、会社が自己株式を取得するため場合には財源規制が課されており、通常、ベンチャー企業がこの規制を回避することが困難です(そのため、買取できる者を会社以外にも定めておくべき)。
買取できる者を誰にするのかを定めておく必要があります。他の創業メンバーやその指定する者などでよいでしょう。会社とすることも検討されますが、会社が自己株式を取得するため場合には財源規制が課されており、通常、ベンチャー企業がこの規制を回避することが困難です(そのため、買取できる者を会社以外にも定めておくべき)。
(3) 買取できる株式数をいくつにするか
全て買取できるという条件もありえるところですが、一定の期間、ビジネスに参画していれば、会社の発展に貢献をしているという評価もできます。
そこで、すぐにやめた場合には全株式を買取できるが、一定の期間が経過することにより、買取できる株式数が減っていくという設計もありえるところです(リバース・べスティング条項)。
全て買取できるという条件もありえるところですが、一定の期間、ビジネスに参画していれば、会社の発展に貢献をしているという評価もできます。
そこで、すぐにやめた場合には全株式を買取できるが、一定の期間が経過することにより、買取できる株式数が減っていくという設計もありえるところです(リバース・べスティング条項)。
競業避止条項
新規ビジネスを行う場合、新技術やノウハウなどを最大限に活用して行いますので、辞めた創業メンバーがこのようなノウハウなどを活用して、競業するビジネスを起ち上げてしまうこともありえるところです。
そこで、このような事態を防止するために、競合するビジネスを禁止する規定にすることが考えられます。 この場合、競合を禁止する期間や、地域などの制限には一定の合理性が求められますので、法令や裁判例を踏まえて検討すべきです。
強制売却条項
M&Aによるエグジットを行う場合には、買収者側は、基本的に株式の100%を欲します。ところが、辞めた創業者が保有する株式があると、買収者側は100%を取得できないことになりますので、ディールできず、せっかくのM&Aによるエグジットの機会を失うことになります。
そこで、一定の場合には、売却に応じることを定めておくとよいでしょう。
まとめ
以上のようなことを契約書に規定することになります。基本的な留意点などが分かっていれば、具体的な文言については弁護士に依頼することをお勧めします。
創業者間のトラブルは、避けられないことが多々あります。同じ夢を見たメンバーが辞めてしまう事態は望ましくはないことですが、しっかり備えておけば、リスクは最小限にすることができます。本記事が創業者の皆様のご参考になれば幸いです。
ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
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