ビットコインのE-Commerceへの活用、注意点~その2
法務



前回ビットコインのE-Commerceへの活用、注意点で、仮想通貨を利用したE Commerceの発展の可能性や、特に海外との取引でその利便性が発揮されることを説明しました。
そのうえで、仮想通貨利用にあたって、注意すべき法律上の注意点として、仮想通貨業者の選定について説明しました。

今回の投稿では、引き続き仮想通貨の利用の開始を検討するにあたって注意すべき事項として、仮想通貨の種類の選択について、法律的観点と金融論を交えて説明します。



利用する仮想通貨の選定について


(1) 仮想通貨とは ~電子マネーとの違い~


仮想通貨取引所を選んだとして、次に、どの仮想通貨を利用するかを決める必要があります。仮想通貨には様々な種類がありますので、それらの違いを把握する大前提として仮想通貨がどのようなものを理解するべきです。さらに、仮想通貨の概念の理解には、類似概念との違いを理解することが有益だといえるでしょう。

仮想通貨に似て非なるものとして、Suica、Pasmoなどの電子マネーがあります。仮想通貨と電子マネーは、いずれもそれ自体は目に見えない電磁上の記録でありながら財産的価値を有する点、両者ともに支払手段としての機能を持つ点で共通します。仮想通貨については、いわゆる仮想通貨法の施行により、資金決済法の下で法律上の定義づけがなされました(資金決済法2条5項)。他方、電子マネーは、資金決済法の「前払式支払手段」という概念に該当します。
「仮想通貨」と「前払式支払手段」の資金決済法上の定義を比べると、以下のような違いを指摘することができます。

① 前払式支払手段は発行者を予定しているのに対し、仮想通貨は発行者を予定していないこと
例えば、SuicaであればJR東日本が、Pasmoであれば(株)パスモが発行者であるのに対し、ビットコインについてはその発行主体は存在しません。

② 前払式支払手段を使用できるのは特定の相手方との関係においてのみであるのに対し、仮想通貨は、不特定の者と間で代金の支払いに利用でき、かつ購入、売買できます。
例えば、Suicaを利用できる店舗は、Suicaを導入している特定の店舗に限られます(実際は幅広く普及しており街中の色々な所で使用できますが)。他方、ビットコインであればそのようなことはありません。

③ 前払式支払手段は通貨あるいは通貨に相当する単位を用いて価値を記録すること想定しているのに対し、仮想通貨には通貨建資産は含まれません。
例えばSuicaであれば、Suicaポイントという単位で残高は記録されますが、1Suicaポイントは1円と等価値とされています。他方、ビットコインにはBTCという独自の単位が用いられ、BTCの価格は通貨との関係で一定でありません(相場が変動します)。


仮想通貨の信用力は何に由来するのか


仮想通貨に対する権利の根本的な特徴を把握するうえでは、前述の①~③のうち、①仮想通貨には発行者がいないという点が重要になります。電子マネーの場合は、大まかに言ってしまえば発行者が利用者に代わって支払いをするのと同様の状況であり、電子マネーの保有者は法的にも発行者に対して権利を有する状態にあり、発行者の信用力がその財産的価値の裏づけとなります。他方、仮想通貨については、そもそも電子マネーの発行者のような立場の者が登場しません。

ですから、仮想通貨を持っているということは、仮想通貨という財産的な価値を有するデータをコントロールできる状態であるということを意味するにとどまり、誰かに対して法律上の請求権を有しているということを直ちに意味するものではありません。そのため、仮想通貨の財産的価値は、第三者(=発行者)の信用力がその裏づけとなるということは原理的に想定できないのです(この問題意識は、会社の発行する株式や債券が、その会社の業績や信用力と連動することと対比した方が、わかりやすいかもしれません)。
なお、仮想通貨取引所に仮想通貨を預けている場合には、仮想通貨取引所に対して預けている仮想通貨の引渡しを請求できますが、それは別の話です(それは仮想通貨そのものの信用力の話ではありません)。

では、仮想通貨の信用力の裏付けは何か ? というと、根本的には、現実に仮想通貨が財産的価値として利用され、流通しているという状況にあると理解すべきでしょう。
仮想通貨のマーケットでの利用が広がり市場規模が拡大することで、通貨そのものの強さが増すということです。


どの仮想通貨を選択すべきか


以上を踏まえると、例えば、海外との取引の決済手段として利用するなど、仮想通貨の暴落などによる不測の損失を避けたい場合に、どのような仮想通貨を選択すべきか、推測がつくかと思います。
基本的には、取引量・流通量の多いメジャーな仮想通貨を選ぶべきだということになるでしょう(投資目的であれば別の考慮もあるでしょうが)。取引量・流通量が多ければそれだけ価値の裏づけがあると見ることが出来るからです。
仮想通貨は一般的に国の通貨(日本円や米ドルなど)よりも価格の変動が激しいですが、取引量・流通量が少ないマイナーな仮想通貨や新規の仮想通貨などの場合ですと、暴落のリスクがいっそう高まるということになるのだと思います。

もっとも、ここでの考察は、仮想通貨の権利としての法的性質を踏まえた原則的・原理的な考察ですので、個別の仮想通貨の安全性や価格を保証するものではないことを、くれぐれもご注意ください(仮想通貨の法的権利をわかりやすく理解いただくために、その価値・信用力と結びつけて論じた、とご理解いただければと思います)。


なお、日本円や米ドル等の通貨の所有者もその通貨の上に権利を有するのみであるという点は仮想通貨と共通します(日本円を保有することは、発行者である日本政府に対して法的な権利を有する状態にあるわけではありません)。このように一見すると仮想通貨と同様の構造にあるにも見えるにもかかわらず、国の通貨の場合は、その国の信用力が通貨の強さの裏づけとなるのはなぜでしょうか。これは自国通貨での債券(国債)の発行など、その国が自国通貨を単位とした取引について責任を負う主体となっているからです。

このことから仮想通貨についても仮想通貨を用いた起債(債券の発行)などの取引が増えてきた場面では、それらの取引あるいは取引関係者の信用力が対象の仮想通貨の強さに影響してくるということになるでしょう。そのような状況では、上で述べたような取引量・流通量にのみ着目した原理的な考察だけではなく、他の要素への考慮が必要となってくるでしょう。


まとめ


仮想通貨は、発行者等の信用力に依拠しない、通貨そのものの信用力に依拠する財産としてデザインされており、法律上の定義でもそのことが確認されています。
そのため、仮想通貨の信用力は、根本的には仮想通貨の取引量・流通量に依拠すると考えられます。
そこで、仮想通貨を決済手段として利用することを主目的とする場合には、相場の暴落のリスクを回避する観点からマイナーな仮想通貨や新規の仮想通貨の利用は避けたほうが無難でしょう。 仮想通貨の取引量についてはウェブサイトなどの一般情報で簡単に見つけることが出来ますので、そちらを参照するとよいでしょう。

ご不明な点がございましたらお気軽にご相談ください。
参照 : SHARES 弁護士 鈴木 康之のページ

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