ビットコインのE-Commerceへの活用、注意点~4
法務



前回の投稿までに、仮想通貨を利用した海外E Commerceの発展の可能性、仮想通貨利用にあたっての注意点として、仮想通貨口座を開く仮想通貨業者の選定や、仮想通貨の選択、仮想通貨利用についての当事者間の合意を確認する必要性について述べました。

参照 : ビットコインのE-Commerceへの活用、注意点
参照 : ビットコインのE-Commerceへの活用、注意点~その2
参照 : ビットコインのE-Commerceへの活用、注意点~その3

今回の投稿では、仮想通貨の利用の開始を検討するにあたっての注意事項の最終項目として、仮想通貨の不正利用のリスクに対する対策について説明をします。

仮想通貨の安全性(マネーロンダリングのおそれなど)について
仮想通貨については、犯罪に利用されるのではないか、悪用されるのではないかなどといった漠然とした不安を抱いている方が多いと思います。
現に、今年の7月には、仮想通貨を利用した極めて高額な資金洗浄(マネーロンダリング)を理由とする海外での逮捕事例が報道されました。

また、仮想通貨取引所がサイバー攻撃を受け、個人情報が流出したというような報道もなされています。
では、本当に仮想通貨は危ないのでしょうか。この点については、仮想通貨の仕組みについてもう少し見てみる必要があります。



仮想通貨取引の透明性


仮想通貨については従来の通貨による支払よりも安全性が高いという論調もネット上では見られます。その根拠として、ブロックチェーン(分散型台帳)技術の上に成り立つ仮想通貨取引においては、取引記録が他の参加者にも公開されていることから、不審な取引があれば追跡可能であるという、取引記録の透明性が高いということがあげられます。

しかしながら、この説明は仮想通貨取引の一面をとらえているに過ぎないというべきです。なぜなら、たとえ個々の仮想通貨取引が公開されていても、その取引に用いられた仮想通貨口座と取引を行った人物を結びつけることが出来なければ、不正利用の防止という観点からは意味がないからです。


仮想通貨口座の匿名性とそれに対する立法での対応


そこで、日本では、いわゆる仮想通貨法の施行により、マネーロンダリング防止を目的とする犯収法(犯罪による収益の移転防止に関する法律)が改正され、対応策が導入されました。具体的には、改正犯収法により、仮想通貨交換業者には、仮想通貨の売買等を行う口座の開設など一定の取引を実施する際には取引相手についての本人確認等の手続の実施や確認記録の作成(犯収法第4条、第6条)などの義務が課されることとなりました。

このようにして仮想通貨口座の保有者のIDが確認されるので、取引所など仮想通貨交換業者を通じた取引の場合には仮想通貨取引の匿名性が低くなり、仮想通貨取引の不正利用を防止できるという発想です。このような仮想通貨取引所に対する本人確認手続の義務化は国際的な流れとなっていますが、海外ではいまだ仮想通貨取引に対する本人確認手続が法制化されていない国もあります。

また、そもそも仮想通貨取引は、その構造上P2Pネットワークを通じた取引であるため、中央管理者としては機能しえない仮想通貨交換業者を規制しても構造的に仮想通貨取引を全て捕捉できているわけではありません。
つまり、仮想通貨交換業者を通さずとも仮想通貨口座を開いてユーザー間で直接取引をすることも可能であるため、仮想通貨口座の保有者が本人確認手続を通じて明らかにされるとは限らないわけです。さらに、仮想通貨の中には、個々の取引の中身の匿名性を高めるようにデザインされたもの(匿名性仮想通貨などと呼ばれます)もあります。


仮想通貨取引の不正利用リスクに対する注意点


これらのことを踏まえ、仮想通貨導入を検討するにあたっては、仮想通貨取引の透明性には限界があるということを理解し、不正利用等に巻き込まれないようリスク管理を行うべきでしょう。

具体的には、取引を行う前に相手方の存在や素性などを確認すること、自身の口座情報をきちんと管理すること(特に秘密鍵は仮想通貨の管理と直接結びつくものであり最重要です)、仮想通貨取引所選択にあたってその取引所のセキュリティ態勢をチェックすること、パスワードを定期的に更新することなどが考えらえるでしょう。


まとめ


仮想通貨取引については、個々の仮想通貨取引の記録を参加者間で共有することによって取引の追跡を可能とする点で、従来の中央集権型の台帳よりも一面では優れています。
もっとも、仮想通貨口座を作成するのはプログラムのダウンロードで簡単に出来てしまうので、銀行口座のように口座開設に当たって本人確認が必ず実施されるわけではありません。仮想通貨法によって、仮想通貨取引所を通じて取引をするユーザーについては本人確認が義務付けられましたが、全ての場面をカバーできているわけではありません。

そこで、仮想通貨を支払手段として導入するに当たっては、不正利用の危険にさらされるリスクがあるのだということを認識したうえで(犯罪収益の洗浄に使われるおそれ、口座が何者かによって不正利用されるおそれなど)、取引を開始することが肝要です。

そして、その注意点は、相手方の素性確認・口座情報の管理・業者のセキュリティレベルのチェック・パスワードの定期的な更新などで、仮想通貨取引だからといって何か特別に難しくなるわけではなく、従来の銀行取引やネット銀行の利用などを応用して考えればよいのだと思います。

ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
参照 : SHARES 弁護士 鈴木 康之のページ

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