利用規約の作成・利用時には要注意 ! 改正民法で新設された「定型約款」に関するルール
法務



2017年5月26日に「民法の一部を改正する法律」が成立し、6月2日に公布されました。改正施行は、公布の日から起算して3年を超えない範囲内とされています。充分に準備をして、円滑に移行できるようにすべきです。

改正法の改正点は、多岐にわたりますが、今回は、利用規約や約款等の規定の仕方や運用に影響を与える「定型約款」に関する改正をご説明します。

ビジネスにおいて利用規約・約款等を準備して運用している事業者や、これから作ろうとしている事業者は、注意が必要です。



定型約款とは


サービスを提供する場合、その利用条件等について逐一、ユーザと契約内容について交渉して締結することは困難です。事業者は、事前に規約・約款等を用意して、それに同意してもらうという運用を執ることが多くあります。

このような、一方の当事者が多数の取引相手のために準備している契約条件のまとまりを「定型約款」といいます。
ウェブサービスを利用する際の利用規約や、ホテルに宿泊するときの宿泊約款、飛行機に乗るときの旅客運送約款等、このような約款や規約などと呼ばれて運用されているものが定型約款に該当します。

これまで、民法では、このような定型約款に関する定めがなかったため、定型約款はどのような場合に無効になるのか ? などの問題点がありましたが、改正民法では、このような疑問を一定程度解消しています。


定型約款を契約内容にするために必要な手続き


(1)背景


定型約款は、相手方の関与がない間に、一方の当事者が準備しておくものです。相手方としては、定型約款が契約内容になることを知らずに契約してしまうこともありえます。

このような場合にも、定型約款が契約内容となってしまえば、相手方の知らぬうちに定型約款に拘束されてしまうことになるため、極めて不都合です。


(2)どのようにすれば定型約款のとおりの合意があったと認めてもらえるか


そこで、改正民法では、定型約款が契約内容になることについてユーザが知ることができるように、a.定型約款を契約の内容とする旨の合意すること、またはb.あらかじめ定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示することが必要とされます。

これを踏まえると、オンライン申込みを行う多くのウェブサービスであれば、オンライン申込時に利用規約を示して同意を得ることや、利用規約の中に「利用規約が契約内容になること」を明示することが重要であるといえます。


定型約款の内容に関する規制


(1)背景


定型約款の内容は、一方の当事者が作成するため、自分の都合のよい内容ばかりを定めておき、相手方にとって非常に不利な条件が定められてしまうこともありえます。

このような場合にまで定型約款の内容が契約の内容とされてしまうと、相手方にとって、極めて不都合です。


(2)定型約款の内容に関する規制


そこで、改正民法では、「相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重するものであって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして、民法第1条第2項(信義則)に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるもの」については、合意したとみなされない(無効になる)と定めています。

定めている利用規約の中に上記のような規定があれば、たとえ「利用規約に承諾します」などの表示をもらったとしても、効力を生じないこととなります。
定型約款の内容がこのような条項になっていないかをチェックする必要があります。


利用規約の内容の提示義務


(1)背景


定型約款の内容が契約内容になる場合、相手方としては、契約内容をきちんと把握するために、定型約款の内容を知る必要があります。


(2)定型約款の提示義務


そこで、事業者は、相手方の請求に応じて、定型約款の内容を示さなければならないという義務が明示されました。
これに違反して請求を拒んだ場合、定型約款が契約内容として扱われないこととなってしまいます。

ただし、既に書面で交付している場合や、オンライン上に定型約款を公表している場合には、改めて示す必要はありません。


定型約款の変更手続き


(1)背景


原則として、契約の内容は、両当事者の合意がなければ変更されません。しかし、定型約款では、多数の当事者と画一的な契約をしているため、一方的な変更も認めなければ事業者にとって運用が困難となります。

一方で、どんな場合でも契約条件を一方的に変更できるとしてしまえば、相手方にとっては思わぬ条件に変更されてしまい著しく不利益です。


(2)個別の合意がなくても変更できる場合


以上を踏まえて、改正民法では、次のa,bを充たす場合には、個別的な合意をしなくても定型約款を変更できることが定められました。

a. 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき、
b. 定型約款の変更が、変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき


このうち、b の考慮要素の一つとして、「定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無」と規定されていますので、利用規約にもきちんと「利用規約を変更することがある旨」を規定しておくことがお勧めされます。

なお、a,bの要件を充たさないと思われる利用規約の変更については、契約が両当事者の合意に基づくという原則どおり、ユーザの同意を得て変更する必要があります。


(3)定型約款の変更手続き


改正民法では、定型約款の変更手続きとして、以下の事項をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければ効力が生じないと規定されています。

・定型約款を変更する旨
・変更後の定型約款の内容
・効力発生時期


多くの利用規約などには、利用規約の変更手続きを定めています。その内容も、改正民法を踏まえた規定にしておく必要があるでしょう。


まとめ


今後、利用規約等の定型約款を作る場合には、改正民法に十分に留意して行う必要があります。

また、現在、利用規約を用意している場合には、一度、見直しを行ってみてはいかがでしょうか。
ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
参照 : SHARES 弁護士 中野 友貴のページ

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