皆様はホームページのフッターなどに小さく特定商取引法に基づく表示という記載があるのをご覧になったことはありませんか?
通信販売事業者には特定商取引法により、広告をするにあたって一定の事項を表示することが定められているため、ホームページ上で「特定商取引法に基づく表示」として商品や事業者についての諸々の事項を表示しているのです。
ではこの特定商取引法とはどのような法律でしょうか。
特定商取引法が対象とする事業
特定商取引法とは正式には「特定商取引に関する法律」といい、消費者トラブルの多い特定の7つの取引類型を対象に消費者取引の公正を確保するために設けられた法律です。
7つの取引類型とは「訪問販売」「訪問購入」「電話勧誘販売」「通信販売」「特定継続的役務提供」「連鎖販売取引」「業務提供誘因販売」です。
またこのうち「特定継続的役務提供」には次の6つの指定業種が該当します。
「エステティックサロン」「語学教室」「家庭教師派遣」「学習塾」「パソコン教室」「結婚相手紹介サービス」です。(但しこれら7つの取引類型及び6つの指定業種の事業者が全て対象となるわけではなく、さらに細かい要件があります)。
これらの事業を行っている事業者の方は特定商取引法が求める規制について注意が必要です。なぜならば規制に違反すると業務停止命令等の行政処分や罰則の対象となる可能性があるほか、消費者との間で解約や違約金をめぐるトラブルに巻き込まれるおそれがあるからです。
では次に特定商取引法が定める主な規制についてご説明します。
特定商取引法による規制
特定商取引法による規制は業種ごとに細かく定められておりますが、最も関心が高いと思われるのはクーリング・オフに関する定めです。クーリング・オフとは、消費者が期間内に書面で事業者に申し出ることで一方的に契約を解除できるというものです。
上記の7取引のうち、通信販売を除く6取引にはクーリング・オフ期間が定められております。クーリング・オフ期間は「訪問販売」「訪問購入」「電話勧誘販売」「特定継続的役務提供」は書面交付後8日間、「連鎖販売取引」「業務提供誘因販売」は20日間となっております。
“書面交付後“と書きましたが、ご注意いただきたいのはこれら6つの取引類型には書面の交付が同じく特定商取引法により義務付けられており、この書面(法定書面)を交付しないとクーリング・オフ期間が進行しない、つまり8日あるいは20日を過ぎても消費者からのクーリング・オフに応じなければならなくなるということです。
法定書面を交付しても記載内容に不備があった場合でも同様です。法定書面を交付しなかったために契約後1年も経過してから消費者からクーリング・オフを行使されたというケースも実際にあります。
さらに書面不交付や書面不備は罰金や業務停止命令の対象となります。
一方で「通信販売」はクーリング・オフできません。消費者のなかにはクーリング・オフできると思っている方も少なくありませんがこれは誤りです。もっとも「通信販売」の場合は広告において返品の可否・条件を表示することが求められており、表示がない場合には消費者が商品を受け取った日から8日間は解約・返品ができることになるので注意が必要です。
では次に、上述のように大切な意味をもつ法定書面ですが、どのような形式、内容の書面なのかご説明したいと思います。
法定書面
法定書面の交付義務は、上記の7つの取引類型のうち、「通信販売」を除く6つの取引類型に課されております。
「訪問販売」「訪問購入」「電話勧誘販売」には申込書面と契約書面の交付が、「特定継続的役務提供」「連鎖販売取引」「業務提供誘因販売」には概要書面と契約書面の交付がそれぞれ義務付けられております。
記載内容についても詳細に定められており、商品や役務の種類・対価・支払い方法や事業者の氏名・住所などの他、クーリング・オフや、また「特定継続的役務提供」と「連鎖販売取引」の場合には中途解約についての記載が求められております。
中途解約については違約金の上限規制があります。例えばエステティックサロンとの契約(契約期間が1か月以上で契約金額が5万円を超える場合に限る)が役務提供開始後に中途解約された場合、エステティックサロンは違約金として提供済の役務の対価に相当する額の他、2万円又は契約残額の10%に相当する額のいずれか低い額しか請求することができません。これを上回る違約金を規約で定めたとしても上記以上の違約金は請求できないのです。書面に“お支払いいただいた代金は施術開始後は一切返金できません“などと記載すると消費者との間でトラブルになってしまいます。
また書面には8ポイント以上の文字及び数字を用いることが求められております。さらにクーリング・オフに関する記載事項は赤枠の中に赤字で記載することが必要です。
おわりに
以上のように、特定商取引法は事業を厳しく制約する性質をもつものです。しかしだからといって対応を怠れば消費者との間で思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。トラブルになると解約や返金をめぐり消費生活センターや訴訟の対応に多大な労力を費やすことになりかねません。逆に順守することにより事業にたいする信頼性が増し、事業を発展させる契機ともなります。
初めにご紹介した7つの取引類型に該当し特定商取引法の対策を取られていない事業者様はお早目にご準備なさることをおすすめいたします。特定商取引法について詳しくお知りになりたい方には消費者庁による特定商取引ガイドが参考になると思います。
しかしなおご不安がある場合は是非専門家にご相談ください。特定商取引法に詳しい専門家であれば、御社が該当する事業者かどうかを判断し、適切な対策をお手伝いすることができますのでどうぞお気軽にお問い合わせください。