取締役が変わったら注意!役員変更登記と役員の責任について
法務


友人に頼まれてとか、親族に頼まれてなど会社の取締役になることを依頼されて、軽い気持ちで取締役になってしまったという話を聞くことがあります。
その後、取締役を辞めた後もその登記を放置しているとどうなるのでしょうか。

今回は、取締役の負う責任と役員登記を怠った場合のリスクについて解説します。

この記事の目次

商業登記簿とは


国が作成する商業登記簿に、会社の商号や住所、役員などの重要な事項を記録し、誰でも見ることが出来るように広く開示することにより、会社の信用の維持と取引を円滑にするための制度です。
商業登記簿には、会社の商号、住所、発行された株式数、役員など様々な事項が記録されていますが、役員に関する情報は、会社が取引を行うにあたっては特に重要な情報です。

仮に、代表取締役が変わったにも関わらず、その変更登記がなされていない場合には、誰が代表取締役なのかということが第三者には分からず、取引ができなくなってしまいます。

そのため、商業登記簿に記録されている情報の信頼性を担保するために、役員に関する情報を含めて登記すべき事項に、変更があった場合には2週間以内に登記をするものと登記義務が課されています。

取締役の責任


取締役がその職務を行うにあたり、過失によって会社や第三者に対して損害を与えた場合には、その取締役は会社や第三者に対して損害を賠償する責任があります。
また、代表取締役の不祥事によって損害を与えた場合であっても他の取締役は、代表取締役を含め他の取締役の監督義務があることから責任を負う可能性があります。

取締役に名義を貸した者の責任


例えば、取締役の人数が足りないなどの理由により、会社の業務を行わなくて良いので取締役として名前だけ貸して欲しいと頼まれて取締役になったとします。会社の業務に関わっていないという理由で、責任を免れることはできるのでしょうか?

判例では、このような場合でも、取締役としての監督義務を負うことから、責任が認められた事例があります。

また、適法に選任手続きがなされておらず、実際には取締役ではないのに、取締役である旨の虚偽の登記がなされた場合であっても、その虚偽の登記に協力した場合にはその者も取締役としての責任を負うとされた事例があります。

取締役を退任したにも関わらず、登記変更しない場合


例えば、取締役が辞任により退任し、既に取締役ではないにも関わらず退任した旨の登記がなされていない場合、この取締役の責任はどうなるのでしょうか

在任している他の取締役と同様に損害賠償請求を受ける場合があります。

ただし、判例では、登記を残存させることにつき明示的に承諾を与えていた場合や辞任したにもかかわらずなお積極的に取締役として対外的又は内部的な行為をあえてした場合でなければ、取締役の責任を負わないと判示しています。

退任後に生じた損害について責任を負う場面は少ないかもしれませんが、トラブルに巻き込まれる可能性はあります。

会社が退任登記をしてくれない場合


登記の申請権限は代表取締役にあります。そのため退任した取締役が自ら登記申請をすることはできません。
取締役を退任したにも関わらず、会社が退任の登記をしてくれない場合には、会社に対して登記手続きをするよう求める裁判することができます。

まとめ


取締役には、適切に業務を行う義務があり会社や第三者に対して、取締役という職責に応じた責任があります。仮に業務に関わっていないとは言っても責任を負わされる可能性はあります。

また、取締役として登記がされていれば、第三者は取締役であると判断して損害賠償請求がなされる可能性はあります。取締役の責任と役員変更登記を放置することのリスクを認識し、法定の期間内に登記をすることをお勧めします。

なお、登記すべき事項に変更があり、登記の義務があるにも関わらず、長期間登記をしなかった場合には、100万円以下の過料を課される可能性があります。

何が登記すべき事項なのかという事が分からない場合もあると思います。迷われたら、早めに専門家にご相談されることお勧めします。

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