パワハラをした従業員に対する対応の注意点
法務


昨今話題となっている、パワーハラスメント。
各企業ごとに、それぞれ注意を払いながら対応に苦慮されていることと思います。 今回はパワハラを従業員から告発された際に、企業がパワハラを行った加害者従業員へ解雇などの処分をする場合の注意点について触れたいと思います。

この記事の目次

1.加害者側と被害者側の双方の言い分を聞く


必ず双方からの事情を聴く、ということが1つ目の注意点です。その際もパワハラがあったという先入観で聞かず、「あったのかなかったのかどちらが真実なのだろうか」という気持ちを常に持って話を聞くことが重要です。判断をするのは最後です。

2. どちらの主張がより自然で具体的か
という視点を持って聞く


双方から話を聞いているうちに、どちらが真実か悩むことがあると思います。その場合は、「どちらの話がより具体的で、自然な話か?」という視点で聞くことが2つ目の注意点です。 裁判では、当事者の話を聞くということ(証人尋問と言います。)があります。 ここでも「どちらの話がより具体的で自然か」という視点で聞き、その人の話が信用できるかどうかを考えますが、それを応用するような形ですね。

3.懲戒処分を考えるときは就業規則を確認しながら考える


懲戒処分をする際は、就業規則の規定に従って手続きを行わなければ、後になって処分が無効といわれてしまうことがありますので注意です。これが3つ目です。 また、どのような重さの処分をするかについても注意です。
重すぎる処分を下してしまうと違法・無効と言われる可能性があります。どういった場合がセーフなのかは、ケースバイケースなので裁判例を調べて判断しないといけません。

4.パワハラの加害者を懲戒解雇する際の注意点


パワハラをしてしまう人というのは、何度も繰り返し行ってしまう可能性が高いため、企業としては解雇したいと思うケースもあると思います。しかもパワハラというもっともらしい理由もあります。

しかし、この場合も就業規則にのっとって手続きを踏むことと、解雇するしかないくらいに加害者が悪いと言える証拠を揃えておくことが必要です。

この点について争いになった裁判例が、前橋地判平成29年10月4日事件です。
この事件では、国立大学の教授がパワハラやセクハラを部下複数名に繰り返し行った結果、1年半の間に10名の助教授等のうち6名が退職し、3名が移動する事態となりました。

これを重く見た国立大学が懲戒解雇としたのですが、裁判の結果解雇が無効となりました。 加えて懲戒解雇の違法性を認め15万円の賠償を命じられました。
何がいけなかったのか?
問題となった点は数点ありました。

① 懲戒解雇の手続きに不備があった
② パワハラ・セクハラの程度・回数が軽かった


① について

今回のケースでは、企業側は、加害者を呼び出し、退職願を出さないなら懲戒解雇処分にする、と述べました。加害者が持ち帰って検討したいと言ったものの、企業側はこれを拒否し、そのまま懲戒解雇としました。

このケースでは、企業は、加害者が退職願を出すかどうか悩む時間を与えなければいけなかったのですが、それをしなかったことが、違法とされたのです。

② について

この点は正確にいうと、実際に行われたセクハラやパワハラの事実を一部しか証拠により立証できなかった、というのが原因です。
9名もの同僚が退職や異動をしている事実から、相当な回数のハラスメントがあったことがうかがえますが、そのハラスメントが行われている現場の録音や被害者の証言といった証拠を出すことができなかったということが原因と思われます。

なお懲戒解雇の有効性に関する裁判例として、東京地判平成27年6月8日、札幌高判平成24年3月16日といった事例が存在します。

このようにハラスメントの事実があったからと言って安易に解雇とすることは危険を伴います。懲戒処分を下す際は、弁護士や社労士の先生と相談しながら、証拠を一つ一つ丁寧に揃え、満を持して加害者に挑む、という態度が重要です。

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