ビットコインの規制動向① 【コインチェックショックを受けた、業者7社への行政処分】
法務


この記事の目次

第1.金融庁による業務停止命令などの発令


3月8日、金融庁(※①)は、仮想通貨交換業者(一部はみなし業者)7社に対し、業務改善命令等の行政処分を下しました。 うち2社は1か月の業務停止命令という厳しい処分となっています。処分の理由は、内部管理体制の不備、システムリスク管理体制の不備、利用者保護措置の不備、利用者財の管理に関する違反、経営管理体制の不備、法令遵守体制の不十分など様々ですが、顧客保護に関連する体制の不十分さを指摘するものが目立ちます。

今回の処分は、個別の業者ではなく、現在の仮想通貨業界全体の管理の甘さ・問題を浮き彫りにしたと言えるかもしれません。
そこで、今回は、一斉の行政処分の背景となった事実関係や、現状の規制について概観します。

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※①:正確には、金融庁の検査を踏まえて、各地の財務局により命令が下されました。

第2.コインチェックショック


1月下旬、仮想通貨取引所を運営するコインチェック株式会社から、時価総額約580億円相当の仮想通貨が盗難されたという衝撃的な報道がなされたのは記憶に新しいところかと思います。その損失額は、巨額のビットコインの消失によって破綻したマウントゴックス事件のそれをも上回っていたと言われています。コインチェック社の事件は、当然、海外でも大きく取り上げられています。先日、香港で海外の弁護士の講演を聞いた際にも、規制の動向に影響するであろう一つの事象として説明されていました。

コインチェック社は、問題の仮想通貨(NEM)を保有していたユーザーへの補償の方針を比較的早期に発表し、3月半ばには日本円を支払う形での補償措置を実行しました。(※②)また、事件の発覚後、日本円や仮想通貨の出金・売却等を凍結していたところ、一部について 出金等を再開しました。このように、ひとまずは業務を継続していますが、再開した業務は一部にとどまり、また、再度の業務改善命令を受けたことから、当面は同社の運営から目を離せない状態が続くでしょう。

今回の一斉処分は、2月に金融庁が各社に立入検査したことが端緒となっており、このコインチェック社の事件が立入検査実施の背景となっています。その影響の大きさもあり、コインチェック社の事件について注目が集まりますが、今回の一斉処分では、一部業者について、従業員による顧客の仮想通貨の私的流用やマネーロンダリングのリスク管理が行われていないことが見つかっています。コインチェック社だけでなく、他にも重大な問題が指摘されている業者があるということを知っておいて損はないでしょう。(※③)

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※②:3月12日の同社プレスリリースによれば、関係する顧客への補償措置の実行は完了したように見えます。
※③:一斉処分の内容は、金融庁の報道発表から、確認することができます。

第3.現状の仮想通貨取引所に対する規制


このようなことから仮想通貨取引所に対して、規制当局の姿勢・対応が厳しくなってきていることが見て取れますが、そもそも仮想通貨取引所に対しては、現状どのような規制の枠組みが存在しているのか、あらためて確認してみましょう。

業規制:仮想通貨交換業の定義


仮想通貨について資金決済法上に定義が設けられたことや、その定義の大まかな内容は、昨年の記事で解説しました。
仮想通貨の定義を導入した昨年施行の資金決済法の改正時に、仮想通貨交換業という新たな業概念が設けられました。これにより、仮想通貨交換業を行うた めには、資金決済法の下での登録を受けなければならないこととなりました。
仮想通貨交換業は、以下のいずれかを業として行うこと(=反復継続すること)と定義されています(資金決済法第2条第7項)。 仮想通貨の売買やその媒介等に限らず、その仮想通貨の管理が仮想通貨交換業の内容に取り込まれたのは、金融商品取引業者が証券等を預かることについて規制を受ける(※④)のと同様です。(※⑤)

1.仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換
2.前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理
3.前2号の行為に関して、利用者の金銭または仮想通貨の管理をすること



仮想通貨取引所の業務は、①仮想通貨の売買や、②仮想通貨の売買の媒介、取次ぎなどに該当しますので、仮想通貨交換業にあたり、業規制の対象となります。

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※④:金融商品取引法第2条第8項第16号
※⑤:これと異なり、前払式支払手段発行者は前払式手段の発行に際してその対価を受け取るのであって、顧客の財産を預かるものとはされません。

行為規制:仮想通貨交換業者の遵守事項


業規制が設けられたことにあわせ、資金決済法では仮想通貨交換業者が業務上遵守すべき行為規範を導入しました(行為規制)。例えば、名義貸しの禁止、委託先の指導、適切な情報提供などです。その中でも重要と考えられるのは、情報の安全管理義務と財産の分別管理義務です。(※⑥)
とりわけ、仮想通貨の分別管理については、電子情報であり物理的に存在のない仮想通貨の特性を踏まえて管理を分ける必要があり、具体的には、暗号鍵等の保管場所も区別すべきであるとされています。(※⑦)

また、資金決済法に仮想通貨交換業の概念が設けられたのとあわせ、犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)にも仮想通貨交換業者の概念が設けられました。仮想通貨交換業者は、犯収法上の特定事業者とされ、仮想通貨の売買を行うためのアカウントの開設など一定の取引を実施する際には取引相手についての本人確認等の手続の実施や確認記録の作成など、(※⑧)犯収法上の義務を果たすことが必要となります。

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※⑥:資金決済法第63条の8、第63条の11
※⑦:金融庁の事務ガイドライン(仮想通貨交換業者関係)Ⅱ-2―2―2-2
※⑧: 犯収法第4条、第6条参照

現状の規制と今後の課題


現状の法規制は、仮想通貨の資金決済手段としての面をとらえ、仮想通貨交換業を登録制とし、かつ仮想通貨交換業者に分別管理義務等の行為規制を課した点で、最低限の利用者保護の役割を果たすものとして評価できるといえます。

ところが、今回、コインチェック社のような事象が発生してしまったわけです。現状の規制に問題がなかったのか、次回の記事では、顧客財産保護との関係での現状の規制の到達点について解説したいと思います。

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