多くの中小企業の社長様は、会社の借入金について、連帯保証されていますが、連帯保証を外したいと思われたことはないでしょうか?
連帯保証は、転廃業や事業承継する際の社長様の重荷になってしまう場合がありますね。
平成26年2月施行の「経営者保証ガイドライン」を活用すれば、社長様が負担している個人保証を外したり、個人保証なしでの借入れが可能となる場合があります。また、個人破産せずに、しかも個人破産よりも多くの財産を残して個人保証の問題を解決することが可能な場合があります。
今回は、まだまだご存じでない方も多い「経営者保証ガイドライン」を用いて、社長の個人保証を外す方法/個人保証なしでの借入れを行う方法をご紹介します。
1.経営者保証ガイドラインとは?
経営者保証ガイドラインというのは、正式には「経営者保証に関するガイドライン」といいます。 平成26年2月から施行されているもので、まだまだ新しい制度です。ガイドラインの要件を満たした場合には、社長の個人保証を解除したり、減額したりすることができます。 個人保証が外れることによって、中小企業経営者による思い切った事業展開を後押ししています。 中小企業団体及び金融機関団体共通の自主的自律的な準則として、遵守が求められています。
2.経営者保証ガイドラインを用いて、社長の個人保証を外すための3つのポイント
では、どのような場合に、社長の個人保証の解除ができるのでしょうか? ガイドラインでは以下の3つの要件を定めています。
① 法人と経営者との関係の明確な区分・分離
主たる債務者は、法人の業務、経理、資産所有等に関し、法人と経営者の関係 を明確に区分・分離し、法人と経営者の間の資金のやりとり(役員報酬・賞与、 配当、オーナーへの貸付等をいう。以下同じ。)を、社会通念上適切な範囲を超 えないものとする体制を整備するなど、適切な運用を図ることを通じて、法人個人の一体性の解消に努める。
また、こうした整備・運用の状況について、外部専門家(公認会計士、税理士 等をいう。以下同じ。)による検証を実施し、その結果を、対象債権者に適切に開示することが望ましい。
②財務基盤の強化
経営者保証は主たる債務者の信用力を補完する手段のひとつとして機能している一面があるが、 経営者保証を提供しない場合においても事業に必要な資金を円滑に調達するために、主たる債務者は、財務状況及び経営成績の改善を通じた 返済能力の向上等により信用力を強化する。
③財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保
主たる債務者は、資産負債の状況(経営者のものを含む。)、事業計画や業績 見通し及びその進捗状況等に関する対象債権者からの情報開示の要請に対して、 正確かつ丁寧に信頼性の高い情報を開示・説明することにより、経営の透明性を確保する。
なお、開示情報の信頼性の向上の観点から、外部専門家による情報の検証を行い、その検証結果と合わせた開示が望ましい。また、開示・説明した後に、事業計画・業績見通し等に変動が生じた場合には、自発的に報告するなど適時適切な情報開示に努める。
①の「法人と経営者との関係の明確な区分・分離」は、例えて言いますと、「法人と社長のお財布が別に なっていますか?」ということです。
②の「財務基盤の強化」は「法人だけで返済可能な経営状態か?」ということです。
③の「財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保 」は「金融機関とコミュニケーションできているか?」ということです。
以上の3点を満たしていれば、経営者保証ガイドラインで、個人保証を解除できると規定されています。
如何でしょうか?
債務超過や赤字企業ですと、②を満たさないと考えられますが、そうでなければ、十分に個人保証を解除できる可能性はあります。
3.実際に個人保証が外れた事例について
では、実際にどのような事例があるのでしょうか。
金融庁は、事例集を公開しております。 例えば、事例4では、「①経営者への立替金勘定については近年減少しており、今後さらに解消に向けて減少を図る旨の意向が示されていること ②法人のみの資産や収益力で借入の返済が可能であること ③適時適切 な情報開示がなされ、従来から良好なリレーションシップが構築されていること 」という要件を充足している ということで、個人保証を求めなかったとされています。
また、中には、「ガイドラインの要件が十分に充足されていない」場合にも保証を求めなかった事例も発表されています。 従って、ご自身が個人保証をされている経営者様におかれましては、是非、この経営者保証ガイドラインに 基づく保証解除が可能かどうかご検討頂ければと思います。
4.まとめ
今回は経営者保証ガイドラインによる保証解除の方法について、お話させて頂きました。 このガイドラインは、知っておいて損はありません(知っておくだけで得です)ので、是非ご参考にして頂けますと幸いです。
なお、「実は会社を廃業したいが、個人保証があるから踏み切れない」と思われたことはないでしょうか? そのような場合の経営者保証ガイドラインの活用法については、またあらためてご案内させて頂きます。
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『【廃業時も破産を避けられる!】~廃業時における「経営者保証に関するガイドライン」の基本的考え方の公表~』
『【事業承継したのに、先代も後継者も保証人になっていませんか?】事業承継に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則について』