ビジネス経験がある方であれば誰でも、「契約書」というものを見たことがある方は少なくないのではないでしょうか?
契約書は今や本屋やインターネット上にひな形が載っていますので誰でも簡単に作ることができる世の中になりました。
一方で、契約書作成の専門家として、契約書作成に当たり考えていることがあります。行政書士は、契約書作成の専門家であり、事務所によっては1年間に何百程度の依頼をこなす事務所もあります。今回は、契約書の専門家である行政書士は契約書を作成するにあたり、どのような点を考えているかについて私の考えをお伝えしたいと思います。
契約書作成の流れ
契約書を作成するためには、まず依頼者の契約書に対するスタンスをきちんとヒアリングしなければいけません。
2.契約書は何のために作成するのか?
3.契約書をどのような人と締結しようと考えているのか?
4.契約書をどのようなプロセスとして締結したいのか?
契約書の内容で、これを書けば完璧であるというものは残念ながら存在しません。何故でしょうか?
契約書は、あくまで契約を締結する当事者どうして結ぶものだからです。当事者同士で締結行為を行う以上、「最適な契約書」は当該当事者間の事情・状況等により変動することになります。
当該契約書に係る関連法令はないのか調査
当事者のニーズを的確に把握した上で、契約書の構成案を練っていくわけですが、契約書の内容によってはいくつか確認することがあります。契約書には当然のことながら、法律問題にかかわる諸条件が記載されるわけです。
そして、依頼者からもある程度「このような点を意識して契約書作成をして欲しい」とご要望を頂くことがあるのですが、内容を整理していくと、その契約内容に対する主な関連する法令等は何か気づくことができるようになります。
慣れてくると、ヒアリングをしているだけで、これは「何々法が問題となる事案だな」ということがイメージできるようになるわけです。
ところが、ここからが専門家としての目の付け所だと思うのですが、その「何々法が問題であるな」という法令等を詳しく分析していると、更に別の法令等が関わっていることが見えてくることがあります。これは、実際に案件をこなして、慣れていかないとつかみにくいノウハウの一つです。
その関連法案をも押さえておかないと、その依頼者の抱える問題に対して、本当の意味で解決することができないということも充分に起こりえます。
契約書以外での法律手続きのアドバイス
契約書を書くだけでは、誰でもできるわけです。ひな形をみればいいだけなのですから。しかし、現実的な実務の観点から申し上げますと、残念ながら実際はそのようにうまくはいかないものです。契約書というものは、書面上の点にだけ気を付ければそれでよいということで終わるものではありません。
例えば、インターネット上で契約書(広義を含んで解釈するものとします)を見ていますと、いくつか誤りがあるものを少なからず見受けます。また、依頼者が契約書を作成してきたものを見てみましても、そもそもその契約書が有効ではないというケースもございます。
契約書は本来、法律手続きの重要な側面を担うものですから、かなりの法律知識を要求するものです。書籍やインターネットを見て、契約書を作成するのでも一向にかまいません。
しかしながら、そのような場合には、あなた自身が専門家と同程度のレベルまで周辺知識も含めて理解しておかないと思わぬところで、トラブルに合うかもしれないということを忘れないようにして下さい。
まとめ
契約書の作成は、厳密にいうと、様々な観点からのニーズを満たす作業となります。少ない分量にしたから余計なことを書いていないはずだという発想も正しくありません。また、偏見的な知識では、その他付帯関連する法令等に引っかかってしまうリスクもあります。もし契約書を専門家に依頼する場合でも、初めに予算を伝えておけば、ある程度柔軟に対応してくれることも多いでしょう。
契約書は見た目上は、たかが「紙切れ」ですが、そこにまつわる法律の知識について専門家の思考を少しご理解いただければ幸いです。