平成29年CFC税制改正のポイントを再確認! 「タックスヘイブン税制」その2
法務


この記事の目次

第1:前回のおさらい


以前、こちらの記事でタックスヘイブン対策税制の概要について解説しました。タックスヘイブン対策税制についてリスクがあるかどうかの初歩的判断のポイントとして、次のような事項を指摘しました。

①日本の会社と海外の現地法人との関係を確認する必要があること
②現地法人の業態や事業等を考慮する必要があること
③現地法人の所在国の属性を考える必要があること
④現地法人の受け取る所得の性質を考慮する必要があること

第2:平成29年度の改正について


平成29年度改正で変更された、新たなタックスヘイブン対策税制は、今年の4月1日に施行されており、今年(平成30年)の4月以降の事業年度より適用されます。そこで、再度平成29年度改正について検証されることもあろうかと思いますので、そのポイントを説明します。

平成29年度改正による変更点は、次のように説明できます。

①’日本の会社と海外現地法人との関係を判断するにあたり、議決権の保有割合等の形式的基準のみならず、実質的な支配関係の有無も考慮することが必要となった(上記①に関連)

②’海外現地法人の業態や事業等に関して、従来は、タックスヘイブン対策税制の対象となるとされていような事業のうち、航空機リースや来料加工等について特例を設けた(上記②に関連)

③’所在地国の属性等によっては、租税負担割合(税率のようなもの、改正前のいわゆるトリガー税率)が20%以上でも合算の対象になった(ブラックリスト国やペーパーカンパニー等、上記③に関連)

④’合算の対象となる所得が海外現地法人の所得の一部である場合に関して、その範囲が拡大された(受動的所得の範囲拡大、上記④に関連)

以上のうち、支配関係の判断や一部事業の特例(前者2点)は、タックスヘイブン対策税制による合算対象の範囲を拡大する方向で判断枠組みそのものを変えるものではないのに対し、租税負担割合の要件の緩和と受動的所得の範囲の拡大(後者2点)は、これまで予定されていなかった合算を可能にするもので、変更の影響が大きいと予想されるといえます。

第3:シェアオフィスや役員兼任等は注意


改正前はトリガー税制が20%未満であることが要件の一つでしたが、改正により、租税負担割合が30%未満まで、タックスヘイブン対策税制の適用があり得ることとなりました。海外現地法人がペーパーカンパニー、事実上のキャッシュボックス、ブラックリスト国に所在のいずれかに該当すること要件です。

ペーパーカンパニーとは事業用の施設や事業の管理・支配等の実体がない場合を、事実上のキャッシュボックスとは受動的取得や受動的所得を産む資産の割合が大きい場合を指します。大まかに言って、シェアオフィスは自前の事務所などに比べて事業用の施設の実体を弱めるものですし、また、役員兼任は専任に比べて事業管理の実体を弱めるものですので、ペーパーカンパニーという要件との関係で、リスクになるといえるでしょう。これらと同様に、社会的にみて現地法人の実体を弱めると思われるような仕組みを海外現地法人で採用する場合には、いったん立ち止まって検討するとよいでしょう。

ライセンス料や利子、その根拠となる無形資産や貸付金が多くなるとき、あるいは無形財産や有価証券の譲渡などで定例的でない所得が生じるときは、事実上のキャッシュボックスとみられるリスクが高まりますので、同様に気をつけましょう。

第4:無形資産の譲渡等により、定例的でない所得が生じる場合などは注意


タックスヘイブン対策税制の適用を受けるときでも、海外現地法人の会社単位の所得を日本の会社の課税計算に合算する場合(上述のペーパーカンパニー等に該当する場合や経済活動基準を満たさない場合)と、日本の会社の課税計算に合算される海外現地法人の所得が受動的所得に限定される場合があります。

平成29年改正では、海外現地法人の受動的所得のみが合算対象となるような場合(経済活動基準を満たすものの、租税負担割合が20%以上30%未満の場合)について、合算対象の受動取得の範囲が拡張されています。これはつまり、従前より、タックスヘイブン対策税制の適用を受けていた一部所得合算の海外現地法人では、合算される金額が増えることになるおそれがあるということです。

具体的には、改正前には資産性取得に列挙されていなかった、有価証券貸付の対価、デリバティブ取引の損益、為替差損益、無形資産の譲渡損益が受動的取得に追加されています。わかりやすい場面として、ライセンス料を得る根拠となっていた無形資産を譲渡したことで得られる収益は、追加された受動的取得にあたりますので、そのような定例的でない所得を生じる取引をする際には、前もって検討するとよいでしょう。

まとめ


タックスヘイブン対策税制は、平成29年度改正により、海外現地法人の所得が日本の会社の課税の計算に合算される場面や合算される所得の範囲が拡大しました。

平成29年の改正は、既に今年の4月から施行されていますが、実際に適用されるのは事業年度末の課税金額の計算の場面になりますので、問題となりそうな事情があれば、今からでも検討をするとよいでしょう。そして、本文で述べた通り、とりわけペーパーカンパニー等の認定のリスクや、受動的取得の範囲の拡大に気を付けるべきと考えます。

タックスヘイブン対策税制の適用がリスクとなる場合には、経済的効果を同じとするような別のスキームの取引を行う、前もってグループ内の会社の再編や取引の付け替えをするなどの対応策を講じられないか、必要に応じて専門家に相談するとよいでしょう。

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