日本企業の海外M&AとCFC税制、平成30年CFC税制改正 「タックスヘイブン税制」その3
法務


この記事の目次

第1:前回までのおさらい


前回までの記事で、タックスヘイブン対策税制の概要と、平成29年度改正による変更点を解説しました。 平成30年度税制改正で、タックスヘイブン対策税制にさらに若干の変更が加えられています。平成29年度改正が比較的大きな改正だったことに比べると、その影響度は小さいかと思いますが、この機会に簡単に説明しておきたいと思います。

第2:日本企業による国際的M&Aの後押し


近年、日本企業は海外企業のM&A取引に積極的で、ここ数年では、特に日本企業による海外企業の買収が増えていると言われています。特に件数的には、アジア各国の会社を対象とするM&Aが増えているそうです。

このように企業買収が行われると、買収後の企業の統合(いわゆる合併後統合=PMI:Post Merger Integration)のため、同一企業グループ内での資本構造の変更・再編(例、子会社や孫会社の株式の譲渡)が行われることがあります。こうしたグループ内再編の場面でも、タックスヘイブン対策税制の下では、海外子会社に生じた株式譲渡益が日本の親会社の収益として合算されてしまうことがあります。そのような合算がなされると買収後のPMIを阻害し、ひいては日本企業の海外M&Aにも水を差すことになりかねません。

そこで、平成30年税制改正により、そのような一定の場面での株式譲渡益はタックスヘイブン対策の合算対象から控除することとなりました。このような控除を受けるためには、譲渡に先立ち計画書を提出することや、対象株式の譲渡人となった外国会社は2年以内に解散を見込んでいることなどが必要となりますので、その適用を目指す際には、あらかじめ要件を確認するようにしましょう。

この改正が導入されたのは、とりわけ、平成29年度改正によって、トリガー税率の位置付けが変わったことと関係していると考えられます。つまり、トリガー税率の位置付けの変更により、外国関係会社について経済活動基準の適用について見込みを立てることが必要となりますが、ホールディングカンパニーなどについては疑義が残ることから、株式譲渡所得を除くための別の枠組みを認めたとものといえると思います。

第3:その他


受動的取得として合算の対象となる受取利子から金利スワップの損益を除外するなど、受動的取得の合算が問題となる場面(経済活動基準を満たし、かつ租税負担割合が20%以上30%未満の場面)での合算の範囲に若干の改正がなされています。

その他、外国金融子会社に関連する改正や、また、合算課税の適用を受ける内国法人と外国関係会社との間の二重課税調整について地方税(地方法人税及び法人住民税等)も組み込まれることとする改正、租税負担割合の計算方法を明確化するための改正などがなされました。

これらは、外資系の金融業界の会社など、一部の会社や業界にのみ関係するものであったり、形式的・事務的な改正であったりするなど、その重要性は会社一般との関係では限定的といえるだろうと思います。

なお、今回の改正は、前回解説した平成29年度改正と同様に、今年(平成30年)の4月以降の事業年度より適用されます。

まとめ


以上のとおり、平成30年度税制改正では、海外M&A後のPMIを円滑にし、日本企業の海外M&Aを後押しするための改正がタックスヘイブン対策税制に加えられています。その他の変更も含め、平成29年度改正などに比べると重要性が高くはないと考えられます。そのため、まずは、タックスヘイブン対策税制の適用についてご懸念がある場合には、まずは、前回までに述べたところをご参照のうえ、合算の可能性・合算の範囲がどの程度あるのかを見極めるのが重要といえるでしょう。

記事のキーワード*クリックすると関連記事が表示されます

メルマガ登録(毎週水曜配信)

SHARES LABの最新情報に加え、
経営に役立つ法制度の改正時事情報などをお送りします。