無料求人広告の営業にご注意ください!
法務


最近、人手不足を背景に、中小企業をターゲットとし、無料で求人広告を掲載するキャンペーンを謳う詐欺的手法によるトラブルが多発しております。
以下、被害の拡大を防ぐために、その事案の概要、契約の問題点、対処方法について情報提供をしますのでご注意ください。

この記事の目次


1.事案の概要について

トラブルが多発している事案の概要は次の通りです。
電話やFAXで、首都圏の求人広告を作って掲載していると主張する広告会社から営業の連絡が来て(通常は若い男性と思われる方から連絡があるようです)、今だけ求人広告をウェブサイトで無料で掲載するキャンペーンをしています、と求人広告掲載を執拗に勧誘してきます。最初に届くFAXは、A4で1枚であり、広告費用が無料であることが強調されており、有料広告に関する記載は一切ありません。また、実際に広告会社の担当者が会社を訪問することはないようです。

勧誘された会社が「無料なら」と思って勧誘に応じると、広告会社から申込のための書類をFAXで送るので、FAX等で押印をして返送するように依頼があります。
この書面はA4で2枚程度の大きさに納まっており、細かい字で契約の条件が記載されていますが、内容の説明は一切なく、広告会社の担当者からは、電話で盛んに早く返送するようにとの連絡があります。
(費用が発生するかのような記載に気付いて、説明を求めたところ、関係ないからとにかく早く返送するようにと説明されて返送をしてしまった事例もあるようです)

その後、広告会社から掲載する求人の条件を確認するのための事務連絡があります。掲載内容は、簡単なもので、条件が決まると、以後は広告会社から何の連絡も来なくなります。 また、実際に求人の紹介がされることもありません。
このため、依頼をした会社も求人広告のことなどすっかり忘れてしまいます。 3週間程度の期間が経過すると、突然、広告会社から無料掲載期間が過ぎたとして、1年分の広告掲載料を請求する高額な請求書が届きます。金額は概ね合計40万円程度に設定されています。
掲載を依頼した会社が、驚き、支払を拒否すると、求人広告の会社は、費用については契約書に書いてあります、法律上有効です、弁護士に対応を依頼して請求をすることになります、などと脅迫的な請求をしてきます。
それでも、支払を拒否すると、実際に弁護士に依頼をして請求をしてきたり、裁判を起こしたり(東京簡易裁判所が多いようです)することもあるようです。

2.契約の問題点について

広告会社が送付してくる契約条項では、3週間の無料掲載期間中のみ解約申入れができるようになっており、その後は解約ができず、1年間の有料の広告掲載期間が開始することになっています。
また、広告料は、無料掲載期間満了直後に1年分が全額発生することになっており、依頼をした会社は直ちに一括で1年分の広告料を払うことになっています。
しかし、求人広告は、採用が決まれば不要になるはずであり、1年間に渡り一括前払で広告料を払って有料広告を掲載するという契約形態は不自然・不合理です。

また、広告会社の担当者は、有料広告について一切説明をしませんが、契約の条項には、上記のような有料広告掲載期間が記載されており、事前の説明と契約書の内容は一致していません。

更に、広告会社は、効果的な求人広告を実施するかのような謳い文句をFAXに記載しており、営業担当者はそのような営業を行いますが、実際に応募者が紹介されることは無いようです。
そして、求人広告が掲載された広告会社のウェブサイトは一応存在するものの、求人をしている会社名は全て匿名化されており、一見してどこの会社が広告を掲載しているかはウェブサイトからは分かりません。このようなウェブサイトを見て、実際に求人広告に応じて応募者が現れることはまずないと考えてよいでしょう。
このため、事前の勧誘時の謳い文句とは、実際の広告はかけ離れていると言えます。

このように、広告会社が有効であると主張する契約には問題点が多々あり、その法的効力を争う余地があります。

3.対処方法について

全くリスクなく無料で何かしてもらえる、ということは通常ありえないので、安易に全く知らない会社からの勧誘に応じることは危険です。
もっとも、仮に勧誘に応じて申込用紙が送られてきたとしても、今回問題となっている事案では、書面を返送して申し込みをしなければ広告掲載が開始することはなく、トラブルに巻き込まれることはありません。
そこで、内容を確認せずに書面に押印しない、内容に少しでも不明な点があったら押印しない、疑問を感じる点があれば会話を録音して証拠化しておく、疑問を感じたら専門家に相談する、といった対応が重要です。

また、今回問題となっている事案では、書面上は、広告会社が1年分の広告掲載料を法律上有効に請求できるかのような外形が整えられてしまっています。 そこで、申込書類に押印して返送してしまった場合には、速やかに解約の通知を送付する必要があります。
その場合には、指定してある解約の方法(例えば、書面で解約)に従い、指定の期間内(例えば、申込日の翌日から3週間以内)に解約通知を送らなければ、相手方がその効力を争ってくる可能性があります。そこで、指定の方法で解約通知を送っておく必要があります。 また、解約通知を送付したとしても、相手方に送付した解約通知が届いていないと主張され、トラブルになる可能性があります。そこで、解約の通知は、「配達証明」付の「内容証明郵便」で送付することをお勧めします。

更に、広告会社によっては、マンションの一室に事務所を構えており、広告会社がFAXに記載していた住所宛に解約通知を送付したとしても、部屋番号が特定できていないと郵便物が届かないこともあります。
このような事態に備えて、FAX番号やメールアドレスが分かれば同時に送付をしておき、送付をしたことの証拠を残しておくことをお勧めいたします。 なお、広告掲載の効果はゼロと言っても過言ではないので、気付き次第、すぐに解約通知を送付しておくことをお勧めいたします。

万が一、無料掲載期間が経過してしまった場合でも、実際に支払をするまでは、弁護士等の専門家が対処することにより、被害の発生を防ぐことができる場合があります(支払をしてしまったら回収することはほぼ不可能です)。
ただし、事件処理を有償で依頼する必要がありますので、一定の経済的負担は覚悟して頂く必要があります。

このような詐欺的手法を取るグループは、情報を収集し、共有しているのが通常です。そこで、専門家がどのような対応をするかについて具体的な記載をすると、手口を変え,専門家の対応を先取りした防衛策を取る可能性があるため詳細は記載しませんが、契約不成立、錯誤無効、詐欺取消、公序良俗違反による無効,債務不履行といった法的主張が可能と考えられます。

まとめ

今回の事案では、書面上は有効な契約が存在するかのような形式が整えられており、広告会社側は、積極的に訴訟手続を利用してきています。このため、請求を無視していると、訴訟提起される可能性があります。この場合、裁判所から届いた書類を無視していると広告会社の主張に従った判決が下され、確定してしまう可能性がありますので、必ず対処する必要があります。
具体的には、答弁書を提出したり、移送申立をしたりする必要があります。

また40万円程度という支払が不可能ではない程度の金額を請求する、一見契約が有効に成立しているかのような外観を整える、訴訟手続や弁護士を利用する等、かなり巧妙な手法が取られています。
このため、争うことを断念してしまっている被害者の方が多数いるようです。 被害に遭った場合には、諦めず、すぐに弁護士等の専門家に相談し対処をすることをお勧めいたします。

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