平成30年6月末の在留外国人数は、263万7,251人で、そのうち、約30%に相当する75万9,139人が「永住者」の在留資格を取得しております。
在留外国人の10人に3人が取得している「永住者」ですが、令和元年7月1日からその申請に必要な立証資料が増え(変更され)、これから永住許可申請をお考えの方は、その内容をよく調べてから申請することが求められます。
本稿では、その変更内容の解説とともに、そもそも「永住者」の在留資格とはどういったものかについてもご説明させて頂きます。
1.「永住者」とは
「永住者」とは、在留資格を有する外国人が永住者への在留資格の変更を希望する場合に、法務大臣が与える許可であり、在留資格変更許可の一種と言えます。永住許可を受けた外国人は、「永住者」の在留資格により日本に在留することになります。在留資格「永住者」は、在留活動、在留期間のいずれも制限されないという点で、他の在留資格と比べて大幅に活動の制限が緩和されます。このため、永住許可については、通常の在留資格の変更よりも慎重に審査する必要があることから、一般の在留資格の変更許可手続とは独立した規定が特に設けられています。
永住申請は、いきなり申請することは出来ず、原則として他の在留資格で10年以上日本に滞在し(日本人の配偶者等、定住者 等、一部期間短縮の特例があります)、「永住者」へ変更の永住許可申請をする必要があります。
2.在留資格「永住者」のメリット
「永住者」の在留資格を取得すると様々なメリットがあります。以下、主なメリットを挙げます。
① 在留資格更新の手続きが不要
「永住者」は無期限の資格のため、期間の更新をすることなく日本で安定的、継続的に生活することが可能となります。(ただし、在留カードは7年毎に更新が必要)
② 在留活動の制限がない
永住者には活動制限がありません。そのため、法令に違反しない限り、自由に仕事を選ぶことが出来ますし、自ら起業することも可能です。
③ 社会的信用が増す
「永住者」は、原則10年間、日本で生活していたことの証明ですので、社会的信用が増すため、住宅ローンや銀行の融資などが受けやすくなります。
④ 離婚をしても資格が失われない
「日本人の配偶者等」と異なり、離婚、死別により在留資格が失われることはありません。
⑤ 「永住者」の家族にもメリットがあります
「永住者の配偶者」や「永住者の子」が、永住許可申請をする場合、一部審査要件が緩和されます。また、「永住者の配偶者等」には、就労制限もありません。
3.永住許可申請の立証資料が変わります
さて、ここからがようやく本題ですが、令和元年7月1日以降の申請については、これまでの資料に加え、提出資料が増えます。今回、明示された立証資料について、現在の在留資格が【技術・人文知識・国際業務】の方を例に以下のとおりご説明致します。
技術・人文知識・国際業務
①住民税について・直近5年間の課税・納税証明書(これまで:3年間分)
・直近5年間において住民税を適正な時期に納めていることを証明する資料(通帳の写し,領収証書等)(これまで提出義務なし)
②所得税について
・源泉所得税にかかる納税証明書(その3)(これまで提出義務なし)
③年金について
・直近2年間の「ねんきん定期便」または「ねんきんネットの年金記録」の印刷画面(これまで提出義務なし)
・国民年金保険料領収証書(写しで可) ※提出の場合は、前項の資料は不要(これまで提出義務なし)
④健康保険について
・国民健康保険被保険者証(写し)または健康保険被保険者証(写し)※現在加入しているもの(これまで提出義務なし)
・直近2年間の国民健康保険料(税)納付証明書 ※区役所などで発行(これまで提出義務なし)
・直近2年間の国民健康保険料(税)領収証書(写し) (これまで提出義務なし)
4.まとめ
今回の永住許可申請の提出資料の変更は、令和元年5月31日に改定された「永住許可に関するガイドライン」に基づくものと思われます。令和元年6月30日までに申請された方についても、審査の過程においてこれらの資料を求める場合があることも明記されています。ただ、今回、明示された資料等は、これまでも、その資料の提出を追加で求められることがあったことから、出入国管理局の審査基準においては以前から存在していたものと思われます。在留外国人の方の増加に伴い、「永住許可申請」も数多く申請されているものの、同じような理由で審査基準をクリア出来ず、許可が得られない方が多いことから、審査基準に沿った資料の提出を予め明示したものとも考えられます。
今回の変更は、社会保険に加入している外国人の方にとっては、さほど影響は無いかもしれませんが、国民健康保険に加入している方は、申請の際、提出資料等、十分に注意する必要があります。
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