外国人の採用に関するフローチャートについて解説します!
法務


この記事の目次

1.外国人を採用する場合

最近、「当社で初めて外国人を採用したいのですが、どのような手続きが必要でしょうか?」というご相談をよく受けるようになりました。 外国人の採用と一言で言っても、その方の背景や在留資格などで手続きは様々です。就労資格が無い人を雇ったり、就労資格外の活動をさせたりしてしまうと、不法就労助長罪(出入国管理法第73条の2)で三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金、又はこれを併科される恐れがありますので、企業の側も十分注意する必要があります。

2.採用前にすべきこと


※上記チャートは、一例です。今後の法改正や採用予定者、企業の状況によって異なる場合があります。(今回は分かりやすくするため、「資格外活動許可」については割愛しております。)審査期間も目安となりますので、余裕をもって手続きを進めてください。

①在留カードを確認


まずは、採用予定者の在留カードを確認しましょう。このカードに在留期間や在留資格などが記載されています。しかし、その企業で働くことのできる資格か判断することは難しいこともあります。

また、在留カードが偽造カードや失効していないかの確認も必要です。法務省入国管理局のホームページでは、在留カード等番号失効情報照会ができるようになっていますので、まずは、採用予定者のカードを確認し、こちらのサイトで確認されることをお薦めいたします。
法務省入国管理局 在留カード等番号失効情報照会
在留カード見本(出入国在留管理庁HP)

また、こちらのホームページでは、偽造カードの見分け方も載っていますので、提示されたカードが本物かどうかのチェックもするこをお薦めいたします。
(法務省入国管理局HP)
※出入国管理局は、2019年4月1日から「出入国在留管理庁」となりました。

②在留カードの資格で雇用できる場合→「就労資格証明書」を取得

やったぁ!この資格のまま雇用できる!と安易に採用するのは危険です。前の会社と御社は全く同じ企業ではありません。本当にその資格で働くことができるのか、更新のときに不許可にならないか、その判断はなかなか難しいものです。
そこで、お勧めするのが、「就労資格証明書」の取得です。

就労資格証明書とは、我が国に在留する外国人からの申請に基づき、その者が行うことができる収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動(以下「就労活動」といいます。)を法務大臣が証明する文書です。(出入国管理庁HP)


いわば、法務大臣のお墨付きです。ただ、ご注意いただきたいのが、これは就労を許可するものではないということです。また、「就労資格証明書」を提示しないことにより、雇用の差別等の不利益な扱いをしてはならない旨が入管法第19条の2第2項に規定されていますので、その点もお気をつけください。

③現在の在留資格では働くことができない場合→「在留資格変更許可申請」

現在の在留資格では採用できない場合、「在留資格変更許可申請」手続きに進みます。この手続きは、必要書類が多く、書類を揃えるのに1か月、審査に最低1か月かかることから3ヶ月ほどの余裕をもって、手続きをされてください。

④在留カードが無い場合

「短期滞在」などで在留カードが無い場合もあるかと思います。この場合は、「在留資格変更申請」などの手続きが必要です。しかし、「在留資格変更申請」は審査に1か月以上かかるのが通常である上、必要書類も多く、3ヶ月ほどかかることも多いため、現実的に「短期滞在」の方が「在留資格変更申請」をすることは難しいのが現状です。

その場合は、一度帰国していただき、「在留資格認定証明書」の申請を行い、就労資格を取得した上で日本に来て頂くことが望ましいです。以下が簡単な流れとなっていますが、3ヶ月程かかると考えてください。


(外務省HP)

⑤採用通知書(もしくは労働契約書)に記載すべきこと

以上から、外国人の採用には時間がかかることがお分かり頂けたかと思います。また、採用を決めた後に、就労資格を取得できない可能性もゼロではありません。そのため、下記の条件を追加するとよいかと思います。

採用条件当社で就労する資格があること。
契約期間例)20〇〇年〇月〇日より1年
ただし、就労資格の取得が遅れた場合、当該就労資格を取得次第就労開始。
解雇条件当社で就労する資格を失った場合

※労働条件は、労基法に基づいて作成される必要があるため、こちらのチェックは社労士などの専門家のチェックがあるとより安心です。

3.採用後の流れ

就労資格を取得し、採用という段階となってもまだまだ手続きはあります。

※上記チャートは、一例です。今後の法改正や外国人、企業の状況によって異なる場合があります。


①外国人雇用状況の届出(ハローワーク)

外国人雇用状況の届出」は、全ての事業主の義務であり、 外国人の雇入れの場合はもちろん、離職の際にも必要です。そして、届出を怠ると、30万円以下の罰金が科されますのでご注意ください。厚生労働省への届け出になりますので、社労士にご相談されることをお勧めします。 (厚生労働省HP)

②中長期在留者の受入れに関する届出(入国管理庁)

「外国人雇用状況の届出」の対象外の場合は、「中長期在留者の受入れに関する届出」が必要な場合があります。 (法務省HP)

③「活動機関に関する届出手続」もしくは「契約機関に関する届出手続」(入国管理庁)

在留資格によって届出手続きが異なりますが、外国人が転職した場合、14日以内に入国管理庁に届出をする必要があります。 (入国管理庁HP)

4.まとめ

以上が、外国人を採用する場合の簡単な流れになります(2019年7月現在)。
え?簡単ではない?実は、この手続き一つ一つもまた採用する方の背景や企業の状況で様々な場合分けがあります。
また、今回は割愛しましたが、外国人留学生をインターンシップなどで雇う場合などは全く違う手続きが必要となります。(この場合は、「資格外活動の許可」が必要となります。)

そして、この在留資格関係の手続きは、法改正やガイドラインの刷新が多く、専門家でも常に最新の情報を取り入れることが必要な分野でもあります。 慣れない単語、多くの手続きの羅列でうんざりしたのではありませんか?そのような場合、まずはお近くの申請取次行政書士や弁護士にご相談ください。

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