ZOZOのM&Aを左右した、『仕事を一生懸命やる集団』の定義とは!?
法務


この記事の目次

1.M&Aの実像

みなさんのM&Aに対するイメージはどのようなものでしょうか?
ちょっと最近の大きなM&Aとしてこちらを見てみましょう。

参考記事:ヤフーがZOZO買収に至った理由とは? ヤフー・ZOZO・前澤氏、三者三様の思惑

ZOZO前澤氏

「僕の経営手法は感性に基づいている。時代の匂いや皆さんの動きや考え方、雰囲気を野性的に感じ取って事業に生かすが、時に読み違えるし、調子が悪い時は失敗する。(現場スタッフの)チーム力、総合力も生かし切れていなかった。現場の裁量を十分に与えてこなかった。抜本的に変わるタイミングだった」



「(ヤフー傘下に入ることを決めた理由について)前澤は既成概念をぶっ壊して進んでいくカリスマ経営者だった。その結果として、今のZOZOがあるというのは事実。だが会社はすごく大きくなり、業界・社会に与える影響も大きくなった。今は革新だけでなく、安定感が重要だ。安定的に成長するためのパートナーとして、ヤフーがベストだと判断した」


「(今後の経営ビジョン)前澤によるトップダウンの経営から、社員1人1人の力を生かす経営にする。今のZOZOは、前澤の強烈なインスピレーション、リーダーシップで作り上げてきた。だが、それに振り回されながら、社員たちは地に足を付けて、事業を磨き上げてきた。華やかな経営者の裏で、足場を固めることが大事であることを私たちは知っている。それこそが私たちにとって誇れるものであり、非常に大きな武器だ」


→前澤氏の方針とは異なり、堅実な路線を進むことを明言した。

2.日本におけるバイアウトファンドの歴史

M&Aという一つの新たな「市場」を作ってきたバイアウトファンドの歴史をここで振り返ってみましょう。

1990年後半

・1990年後半から日本ではバイアウト案件が増えはじめ、アドバンテッジパートナーズやユニゾンキャピタルが第1号ファンドの組成し、すでにベンチャー投資を行っていたみずほキャピタル、ジャフコ、東京海上キャピタルなどが後に続いた

・海外プレイヤーの参入もこのころから活発化し、ローンスターやサーベラスなどの不動産投資、不良債権投資を主体としたプレイヤーに続き、リップルウッドやカーライルが日本にオフィスを開設

2000年前半

・2000年に入ると、CVC,ゴールドマンサックス、シティック、ペルミラ、KKRなど有名ファンドプレイヤーの日本参入などで,日本で活動するファンド数は一気に増えた

・CVCは2003年に日本オフィスを開設しタワーレコードや昭和薬品化工への投資、ゴールドマンサックスは当初ベンチャー投資を行っていたがその後バイアウトに参入、2003年にソフトバンクテレコム(日本テレコム)の案件に参加、シティックは2004年に丸紅、新生銀行、住友信託などを投資家として第1号ファンドを組成

2000年中盤

・2000年代中盤,「再生ファンド」と呼ばれるでは、新しいスタイルのファンドが登場

・債務超過や法的整理の企業に対して積極的に投資を行う動きが増え、日本政策投資銀行では複数の民間再生ファンドや特定の企業の再建を目的として出資を行ったり、2003年には産業再生機構が設立されカネボウやダイエーなどの大型案件から地方案件まで幅広い再生案件を手がけた(この背景には日本政府の企業再生ファンド設立促進を盛り込んだ方針が大きな要因となっている

2000年後半以降

・2000年代中盤以降では、J-STARやニューホライズン、CLSA、ヴァリアントなど数々のプレイヤーが参入し、2010年付近ではリーマンショックの影響もあり、クローズしてしまったファンドも出てきたが、景気回復・案件数増加と共に、新しいプレーヤーが出てきている

・大手ファンド出身者が立ち上げたファンド、銀行・政府系金融機関をはじめとした金融機関を母体とするファンドに加えて、大手商社によるPE事業の強化も顕著な傾向

出典:日本におけるファンド市場の歴史

3.M&Aに関わるプレーヤー

・事業会社
・仲介会社
・バイアウトファンド(プライベート・エクイティ(PE)ファンド)
・銀行
・メザニンファンド
・その他(プライベートデットファンド)

これは例えば不動産でも同じであろうと思います。

4.ファンドのビジネスとは?

他人の金を運用して報酬をもらうビジネスです。ただし、ファンドの運営パートナーたちは身銭も切ります。

バイアウトファンド界の著名人: 佐山展生氏

佐山氏率いるインテグラルの投資アプローチ
ハートのある信頼関係を事業全ての基礎とします。 企業は人です。信頼関係があれば、企業は潜在能力を最大限に発揮して発展できるはずです。 長期的な企業価値の向上を愚直に追求します。 同じ目線に立ち、時間をかけて挑戦し続ける事で改革を着実に進めていきます。 最高の英知を結集し、「新しい何か」の創造に挑戦します。 『業界並』では競争に勝てません。革新への積極果敢なチャレンジをサポートします。

参考:インテグラル株式会社 事業内容

5.概念

M&Aとは、企業の所有権を対価を払って取得することといえます。その「所有権」の基礎になっているのが株式の移転です。そもそも「株」とは、株主が保有する権利の束であり、その権利の内容としては,議決権、配当を得る権利、残余財産分配請求権といった本質的な権利、その他会社の経営を監視できるようにするなどの目的で会社法上政策的に付与された権利となります。

6.目的

M&Aは何のためにするのでしょうか。
事業会社によるM&Aであれば、その目的は事業の拡大や独占によるバーゲニングパワーの取得となります。
バイアウトファンドによるM&Aであれば、その目的はLP(ファンドへの出資者)へのリターンを生み出すことになります。基本的には、転売が前提となります。

7.資金調達

M&Aの資金調達については、まずエクイティとデットの違いを理解しておかなければなりません。エクイティは株です。デットはローンです。
また、エクイティは,資金の出し手に応じて、コーポレートとファンドを分けて理解しておくことが有用です。 デットについても、ストラクチャーの観点から、コーポレート(買収後の親子間貸付など)、プロファイ(ノンリコースでの借入によるLBO)を分けて考える必要があります。

8.レバレッジ

レバレッジとは、よく聞く用語ですが、機能的に定義すると、借入を増やすことによってエクイティを圧縮し、投資対リターンの「比率」を高める仕組みです。
これは、リスクの切り分けとリターンの適正化によるものです。
また、複利と単利の違いもポイントになります。もしデット資金の資本コストがエクイティ資金の資本コストと構造上同等でかつ水準も等価であれば、構造上、レバレッジは成り立たないでしょう。

9.M&Aによる価値創造と収益実現の本質

M&Aが、単なる財貨の帰属変更にすぎないとなると、価値創造上意味はなく、単なる資金調達との違いはなくなり、M&Aを論じる意味はなくなります。

M&Aにより、簿価純資産より高い金額で会社が売り買いされるのはどういうことでしょうか。
端的に言うと、潜在的な超過収益力の実現にあると思われます。

のれんの償却スピード以上で利益を出し続けることを要求されます。 M&Aによる価値創造を分解すると以下のようになります(コストも価値創造に対する対価ということで、ここではコストと利益は同列で扱います。)。

①案件開発コスト(エージェントの利益)
②DDコスト
③資本コスト(デット・エクイティ)
④改善による利益(オーガニックな成長によるバリューアップ)
⑤ビジネス利益(シナジー創出によるバリューアップ)
⑥売却利益(アンダーバリューvs.フェアバリュー)


→実際は⑥も多いが、バイアウトファンドの場合、④はかなりしっかりやっています。

10.投資ストラクチャーの選定と効果的な買収提案

効果的な買収提案を考える上では、まずは、売却オーナー側のメリットの内容を考えることが近道です。その上で、⑥の成長性の獲得による将来プロフィットのシェアについて考える必要があります。

売却オーナーメリットの分類

①資金調達
②支配権プレミアムの創出
③流動性プレミアムの創出
④のれん(超過収益力)の顕在化
⑤利益確定による事業リスク回避(「利食い」)
⑥成長性の獲得による将来プロフィットのシェア

→タイミングやスピード感にもよるが、「単にお金を出す」(①)では売却オーナーに響かないことが多いと感じます(社会的にも歓迎されないものと思われます。)。

11.オーナーや従業員や債権者など各ステークホルダーが納得する提案とは

やはり、各ステークホルダーが抱くであろう「なぜ?」の部分に答えることだと思います。統一的な答えはないですが、例えば上記のZOZOの記事を参考にしていただければと思います。

12.企業価値はどのようになれば向上するか

要は、「仕事を一生懸命やる集団」になるかどうかといえます。
ただそれは、100人いて、皆が台風が来ても地震が来ても毎日毎日会社に行っていても、社内の会議の調整や資料や稟議を通すための資料を作っている時間が9割では、たとえそのことを一生懸命やっていても絶対潰れます。

ここでは、決めの問題としてまずは、以下を追求する必要があります。

・「仕事」とは?
・「一生懸命」とは?
・「集団」とは?
・どうすれば「仕事を一生懸命やる集団」になれるか?


ピッチャーが一生懸命ボールを投げるのは、ストライクゾーンがはっきりしていて、ストライクゾーンに投げればアウトが取れて試合に勝てるからというたとえがあります。
「より直線的に」、目指す成果が明確で、成果を出した人が正当に評価される仕組みに近づけ、主観情報や矛盾や理不尽や情実の割合を減らしていくことが、企業価値向上の源泉といえるでしょう。

13.価格について

このあたりまで考えていくと、相当精緻に価格(Fair Value)が見えてくると思います。
ここではよくごちゃごちゃになってしまうのは、買い下がるためにあらを探していて、本当のバリューと混同してしまう点です。
表向きのロジック(ターミノロジーとしての”Valuation”)と裏側のロジック(アンダーバリューの認識ツールとしての”Valuation”)の区別は、取引において常に意識しておかなければいけない視点です。

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