そもそもM&Aってなに?どんなことをすることなのか?(後編)買収後の施策について解説します
法務

中小企業あるいは個人事業主にとり、大手企業同士のM&Aは別世界の話ではなく、後継者不足による「大廃業時代の到来」と言われている現在、中小企業にとり「事業承継」は最も大きな課題となっています。
そもそもM&Aはどういうことをすることなのか、プロセスエンジニアリングの観点で(前編)では、買収前までの施策を中心に解説いたしましたが、ここでは、買収後の施策ついてフォーカスしてまいりたいと思います。

この記事の目次

企業買収後の施策について

まず施策を以下の3つに区分してみたいと思います。

①Post Closing
②Monitoring
③Exit


①Post Closing

企業売却時にオーナーが表明した内容の正確性の確認(買収直後監査)、買収時に想定していたストラクチャー(組織再編や資産売却やLBOに伴う手続)の遂行、株券の確保や除却など必要な手続、会計監査など組織体制の変更にともなう事務的な対応

②Monitoring

買収後の会社が、買主の投資判断時の仮説(財務予測)にミートしているかどうか、買収後の株式価値がどう推移しているか、その他リスク要因がないか・現実化していないかを把握するために必要となるMonitoringの実行

③Exit

ファンドであれば通例5年程度ですが、投資時に想定していた「投資課題」が解決し又は解決しないことが確定すれば売ることになります。投資課題は買い手が目標とするバリューアップのスピードに勝つような解決であるようなものである必要があります。株式価値を年で1.1倍にするにはそれにミートしていないと「タイムバリューに負けている」状態と評価され、巻き返しができない限り、「売って他の投資に回す方が良い」となります(あくまでも純投資としては)。事業会社においては通例Exitとしては売却はないですが、今後は焼け太る一方のM&Aではなく、刻々と変化する経済環境との関連で適さなくなった投資先企業の保有を手放すという、健全な新陳代謝が、生物の動的平衡システムを見てもわかる通り必要です。

投資に関するガバナンスと評価

投資に関するガバナンスをどう考えるか、あまり論じられているテキストを見ませんが、重要な課題です。

買収時の時間感覚は重要です。アメフトで言えば、スクランブルプレーではなく、デザインプレーの領域をどこまで広げるかという話がまず一つあり、その上で、スクランブルプレー時の決め事(デザインされたスクランブルプレー)がどれだけあって臨機に対応できるかが問題となり、それが、lost controlとunder controlの領域の境界を決めると思います。時間がなく、個別性が高く、lost controlになりがちなM&Aをどうガバナンスするか意識していきたいものですし、そのあたりの想定準備をどれだけできるかに、経営者は腐心する必要があります。

また、買収前後を統御する「投資課題」の解決とバリューアップのコントロールがガバナンスの課題です。
投資課題は正しく定義され意識されていればあとは心構えで何とかするところだと思いますが、本体がゆるめなガバナンスの会社であればM&Aに関してはもっと緩くなりがちだと思います。

投資後その会社のバリューがどうなっているか、バリュエーションを外注している場合は特に、社内で把握する人間がいない状態になりやすいだろうと思います。これは、「時間軸」の話です、月次業績をエクセルシートで並べて、投資時と同じバリュエーションでリアルタイムで評価し続けて株式価値の推移を把握し続けることが必要となります。

M&Aに関連するコンプライアンス・職業倫理

ここに至ってはさらに研究が進んでいない領域かと思います。

金と心の問題が絡むM&Aでは、売る側、買う側、買われる側、貸す側など、先鋭に関係当事者が分断されます。遂行の過程で情報共有もなされませんし、対立構造も生じます。
さらに大きなお金が絡むことも相まって、レントシーキングでいろいろな人がいろいろなポジショントークや利益誘導や脅しを行ってきます。従業員の間では、どうせオーナーはすごく儲かったんでしょ、ファンドの方も儲かるんでしょ、というようなシニカルな見方が先行し心が荒みがちです。

そういう欲得に突き動かされているだけの人間観はどうしてもしんどく、だれにとっても特はないので、こういう場面でこそ、物事を両面から見る必要があり、最後の良心というか、人間に備わっている、清廉性、天網恢恢疎にして漏らさず、ロジカルさ、買収の大義と個人の立ち位置という正議論の部分は、大事にしたいですし、関係者全員にも常日頃啓蒙して持ってもらう必要があります。

私は会社の買収については、常に上記及び下記の問題を意識しています。そうであるからこそ、「動機の純粋さ」がないM&Aは成功しないと信じていますし、(前編)でも触れた前澤氏のnoteを拝見してまだM&Aに関する希望を持つことができました。

参考:
(引用)【U-NOTE】お金で何でも買える世界とは?——マイケル・サンデル:これからの「お金」の話をしよう Michael J. Sandel
あらゆるものに値段を付けたときに深刻な害を被るのは、「共通性」です。つまり、みんなが一緒にいるという感覚です。生活のあらゆる側面が自由市場化したらどうなるでしょうか?裕福な人とそうでない人が、離れて生活するようになってしまうのです。/私たちは別々の場所で暮らし、働き、買い物をし、遊ぶのです。子供達は別々の学校に通います。これは民主主義にとって良くない状況です。誰にとっても満足できる生き方ではありません。貧乏な人だけでなく、お金を払って列の先頭に行くことができる人々にとってもです。/
なぜなら、民主主義は市民が共通の生活を共に送る必要があるからです。完全な平等は必要ありませんが、これは守られなければなりません。大切なことは様々な社会的背景を持つ様々な階層の人々が普段の暮らしの中で顔を合わせたり、知り合ったりすることです。そうなれば、私たちはお互いの違いを乗り越え、受け入れられるようになります。こうしてみんなに共通する善が維持できるのです。/
つまるところ、市場の問題の中心にあるのは経済についてではありません。本当に大切なのは、私たちがどう共に生きるかという問題です。私たちはすべてに値段が付く社会を望んでいるのでしょうか?それとも、お金では買えない道徳的な何かがあるのでしょうか。...

※参考:
そもそもM&Aってなに?どんなことをすることなのか?(前編)買収までの施策について解説します

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