ボーダーレスな時代において経営者が知っておきたい英文契約書の基礎知識
法務


一昔前までは、英文契約書が必要な取引をするような会社は、限られた大企業や商社というイメージがあったかもしれません。しかし、今日では、少子高齢化による日本市場のシュリンク、外国人労働者の流入、インターネットの爆発的な普及などから、中小企業や個人事業主も海外の取引先と英文契約書を締結する必要が出てくる状況も珍しくなくなりました。
この記事では英文契約書にこれまであまり触れたことがない経営者の方向けに、英文契約書とはどういうものか、日本語の契約書とはどのように違い、何に注意すればよいのかをご説明します。

この記事の目次

1.英文契約書の必要性

国際取引、つまり取引先が日本企業でない国の企業と取引をして契約書を取り交わす場合、多くの場合は英文で作成されることになります。英語が母語の国はもちろんのこと、アジア諸国やBRICKSのような国についても、英語が選択されることが一般的です。
契約書はお互いの権利義務を定めるものですので、当事者のどちらかが読めないようであれば機能を果たせません。そこで、世界共通言語とされている英語であれば、一応どちらの当事者も理解可能でしょうという判断のもと、英語が選択されることが多いのです。日本語での契約締結に対応してくれる海外の取引先は、日本支社があるような一握りの取引先かもしれません。

国際取引でよく必要となる英文契約書には、NDA(秘密保持契約)、Distribution Agreement(販売代理店契約)、Purchase Agreement(販売契約)、License Agreement(ライセンス契約)、Service Agreement(業務委託契約書)などがあります。

ちなみに、日本での取引は、信頼関係をベースに正式な契約書が締結されないということもままありますよね。ところが、こういった慣習は、英米諸国での取引にはなく、ほぼ必ず英文契約書が締結されることになるのです。口頭でも契約が成立するのが原則の日本法と比べ、英米法では、基本的には契約は文書がなくては成立しないのです。また、性善説というよりは契約書で相互の権利義務を細かく文言で定めておき万一の訴訟に備えようという考え方が日本よりも強いといえます。

2.和文契約書との違いや英文契約を読むときの注意点

日本語の契約と英文契約では、言い回し、スタイル、ボイラープレートといわれる一般条項すべてにおいて大きく内容が異なります。英文契約書は比較的一定のスタイルやテンプレートに沿って作られているものが多いですので、構造に慣れてしまえば、意外とすらすら読めるようになってきます。

以下に代表的な構造例をあげてみます。

1.頭書:
Effective Date(契約発効日)、当事者の名称とその住所、設立準拠法(State of Incorporation)

2.前文:
本契約締結の経緯や当事者の目的

3.本文:
定義条項や、ビジネス条件、一般条項が記載されます。一般条項は和文契約にも似た概念がある条項もありますし、英文契約特有の記載もあります。たとえば、force majoreという条項は不可抗力による当事者の免責を定めた者ですが、これは和文契約でもよく見ると思います。
一方、indemnification(求償)という条項は、相手方の表明保証違反で損害を被ってしまった場合に後から相手方に求償できるというものなのですが、なかなかぴったりする和文契約の概念はないかもしれません。

4.後文と署名欄:
署名者の氏名と肩書きが印字されている欄がありますので、ここに署名者が肉筆でサインをします。和文契約の場合は通常登記簿印を押印しますので、この点にも差がありますね。


3. 重要な英文契約については専門家のサポートも検討しよう

上述のように英文契約は和文契約とは異質なものですので、読みこなすには相当時間の訓練が必要です。
また、英米社会は権利義務を細かく文書におとす文化ですので、ボリュームがかなり大きい契約が多く、英文ライセンス契約などは100ページ近くにのぼるものも少なくありません。こうした契約を経営者の方が一字一句読んでいくことは現実的ではないですので、英文契約に精通した外部の弁護士事務所などに読解や交渉、赤入れなどをお願いすることも有効な手段です。

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