契約交渉超入門~取引先との契約交渉を上手に進めるための3つのポイント
法務


取引先との契約交渉を上手に進めるためには、どのような点に留意すればよいでしょうか。
必ずしも正しい答えがある問題ではありませんが、私のこれまでの経験からすると①相手を知ること、②自社の提示条件を検討すること、③適切なコミュニケーションをすることが重要と考えます。以下、基本となる部分を解説します。

この記事の目次

①相手を知る

契約が締結できるかどうかは、相手方が納得して合意するかどうかにかかっているため、まずは相手方を理解することが重要です。具体的には、相手方の意思決定プロセスを知ること、相手方の意思決定の基準を知ることが重要です。

意思決定プロセスは、会社の規模、契約の内容等から推測することができます。具体的には、事業部長の決裁なのか、社長の決裁なのか、取締役会決議が必要なのか、などによって、採るべき対策が変わってくる、ということになります。
意思決定基準は、取引の検討に至る経緯、相手方から伝えられた要望、相手方から提示された契約条件、コメントバック等から推測することができます。契約交渉の場合は、法律や業界慣行のようなある程度客観的な基準がありますが、そうした基準からどの程度離れているかによって、相手方の意図を推測できることがあります。

その他、契約交渉においては、相手方の交渉スタイルや、法的な事項の理解度等も、相手方とコミュニケーションするにあたって、考慮すべき要素となります。

②自社の提示条件の検討

①を前提として、②自社が相手方に対して、どのような条件を提示すべきかを検討する必要があります。
自社が契約によって獲得したい事項を洗い出して、獲得目標とする条件を適切に設定する必要があります。
どの程度自社に有利な契約条件を提示できるかは、基本的には、相手方との力関係などの関係性に大きく依存します。

③のコミュニケーションを適切に行えば、同じ状況でもより有利な条件を獲得できる可能性はありますが、現実の取引上の関係性から大きく離れた条件を提示することは基本的には難しいです。

提示する契約条件は複数あることが多いようですが、その中でどの条件を重視するのかという優先順位付けを行う必要があります。ビジネス上の条件と、法的な条件の、どちらをどの程度優先するかについて、適切な判断が必要です。

また、しない方が良い契約をしてしまうことを防ぐため、契約上最低限譲れない条件(最低限の価格、一定の権利の確保等)も検討しておく必要があります。契約外で契約が成立しない場合の代替的な選択肢を用意しておくことで、最低限譲れない条件を引き上げることができます。

相手方から条件の提示がある場合には、その提案が有するリスクを検討する必要があります。リスクのないよう、性質、インパクトの大きさ、想定される発生頻度を正確に評価して、自社として受け入れるか、それとも、相手方に対して別の条件とするよう交渉するのか、その他のリスクを回避するか等の検討をする必要があります。

自社が提示する条件は、交渉が進むにつれて、絶えず見直す必要があります。
自社にとって重要な条件にこだわることは良い結果を得るために重要ですが、企業間の取引の契約交渉の場合、自社の希望する条件を無理に押し付けるような形で交渉することは、あまりお勧めしません。今後も継続的な関係を築いていくことが前提とされる場面が多く、相手方に嫌な思いをさせてしまうことは、長い目で見れば良い結果を産まないからです。

③適切なコミュニケーション

良い契約条件を獲得するためには、適切な条件を、適切な理由をつけて、適切なタイミングで提示することが重要です。

契約条件は、②で検討した条件を、契約条項の形で適切に文案に落とし込む必要があります。これを正しく行うためには、契約書に記載された文言の法的な意味を理解していなければならず、法的な素養が必要です。

契約条件を提示するにあたっては、少なくとも重要な部分には適切な理由をつけて丁寧に説明することが経験上特に重要です。相手方に納得してもらうことは、今後の取引関係を円滑に進めるためにも重要な要素となります。

理由は、ビジネス上の理由となることもあれば、法的な理由となることもあります。また、相手方との関係その他の諸事情によっても適切な内容が変わってきます。経験豊富な弁護士等の専門家のサポートを得て適切に行うのが望ましいです。

契約交渉の実務において、一度提示した条件を巻き戻して提示することは基本的にできないため、自社の条件の提示は、適切なタイミングで行う必要があります。交渉全体の内容、プロセスを把握して、全体感をもって交渉を進めることが重要です。

契約をめぐるコミュニケーションに関しては、契約の類型ごとに、ある程度は標準的な内容、型があり、経験が大きくものをいう部分でもあります。これから締結しようとしている契約類型について、交渉、アドバイスの経験が豊富な弁護士等の専門家のサポートを得て行うことが、比較的簡単に良い結果を得るためには重要です。

まとめ

孫氏の兵法に「彼を知り、己を知れば、百戦殆うからず」という言葉がありますが、これは現代の契約交渉にもだいたいあてはまります。相手方を知り、適切な提示条件を検討して、さらに適切な弁護士等の専門家のアドバイスを得れば、より良い結果を獲得できる可能性が高くすることができます。

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