人生100年時代と言われ、超高齢化社会を生きる私たちの不安のひとつ。それは「認知症発症後の生活」ではないでしょうか。
多くの人が「認知症を発症すると、生活はどうなってしまうのだろう……」と不安を抱えているのではないでしょうか。
それは、自身が認知症となる場合のみならず、高齢の両親が認知症になった場合の不安も大きいはずです。
この不安に対して、事前に対策や準備ができるとしたらどうでしょうか。
もし万が一、自らが、または高齢の両親が認知症を発症した場合、資産や生活を守る準備が事前にできるとしたら、際限のない不安が、多少なりとも軽くなるはずです。
今回は、認知症になった場合の資産凍結対策としても有効となりえる「家族信託契約」についてご紹介します。
1.家族信託契約という選択
近年、注目を集めている「家族信託契約」ですが、みなさんも、一度は聞いたことがあるかもしれません。家族信託契約は、“委託者”が“受託者”に金銭資産や不動産などの資産を預け、契約に基づき、受託者に資産を管理してもらう制度です。 家族信託契約を結ぶ多くの人が、自らの老後に向き合い、自分の生活と資産を守り、そして繋ぐことを目的にしています。 家族信託とは一体どのようなものなのでしょうか。
“委託者” “受益者” “受託者” など、聞きなれない用語が少しわかりにくいかもしれませんが、以下で、簡単にご説明したいと思います。
2.「家族信託」の活用方法
まず、信託は大きく分けて二種類あります。一つ目が「家族信託」(民事信託)と言われるもの。
もうひとつが「商事信託」です。
行政書士や司法書士がサポートを行っているのは、一つ目の「家族信託」です。 家族信託の主な登場人物は、「委託者」「受託者」「受益者」です。
例えば、認知症対策のために結ばれる家族信託の場合は、 “委託者” 兼 “受益者” が高齢のお父様、“受託者” には、息子さんなど信頼できる親族がその役割を担います。
3.家族信託契約手続きの流れ
まず、委託者兼受益者である高齢のお父様と、受託者との間で“家族信託契約”を結びます。この契約に基づき、お父様の有する金銭や不動産などの資産を、受託者である息子さんなどに移し、受託者の名義とします。このとき、お父様が所有していた資産は、“信託財産”となり、息子さんの名義になりますが(不動産は受託者名義となり、金銭信託の場合にはお父様の金銭が信託受託口座に移されます)、かといって、息子さんが信託財産の所有者になるわけではありません。
委託者であるお父様のために家族信託契約を結び、認知症発症後に、契約の内容に従い、息子さんに移転された資産から、月々、委託者であるお父様に必要な生活費などを支払っていくことになります。
信託財産の名義は受託者(息子さんなど)になるのに、受託者個人所有の資産ではないという点が、なかなかわかりにくい部分ですが、信託財産がこのように「誰のものでもない財産」となることで、認知症発症後の資産凍結の対策となります。
4.信託財産を守る
「受託者名義となった財産を、受託者が勝手に使ってしまったらどうするのか…」と心配になる方も多いですが、信託財産は、家族信託契約に基づき、信託契約の条項で示された目的以外には利用することができません。息子さんが私用のために勝手に利用することはできないのです。
もしも、受託者が、家族信託契約に反する行為を行った場合には、現状に回復させる義務を負いますので、資産を守ることができます。
5.「監視機関」で信託財産を守る
また、受託者である息子さんが家族信託契約を正しく履行することを監督する、信託監督人などの監視機関を設定することで、より、資産の管理を安全に行うことが可能となります。家族信託契約は、相互監視機能を強化させることによって、認知症対策や、老後の資産管理を安心しておこなうことができるのです。
いかがでしたか?
家族信託契約を活用することで、認知症発症による資産凍結対策をすることができる場合があります。一度、検討してみてはいかがでしょうか?