1.はじめに
速く安く質のよい契約書作成・レビューをお願いするためには、見積り段階で、依頼の趣旨を上手に伝える必要があります。 趣旨がうまく伝わらない結果、引き受けられない、又は引き受けられても予算オーバーになるとなってしまうとお互いにとって損です。例えば、有名シェフの高級料理がほしいのか、味は二の次でとりあえず腹を満たすファーストフードが食べたいのかによって、弁護士としても、対応の仕方が変わります。
契約書に即して言えば、ネットに落ちている程度のとりあえずの契約書でよいのか、案件特有のリスクを分析した上で、テーラーメイドされた契約書が必要なのかによって、対応に必要な費用や時間が大きく変わります。
これらを整理せずに、漠然と「利用規約を作ってほしい」と言われても、弁護士はうまく対応できません。
「早かろう悪かろう」で、その辺にある雛形を送って終わりにしたいと考える方が安値でビットし、その結果、全然リスクをヘッジできなかったということにもなりかねません。
2.ポイントは3つ
それでは、具体的にどのように見積りを依頼すればよいのでしょうか。ポイントは、以下の3つです。
(1) 納期を明確に伝える。
(2) 作業内容や懸念点を明確に伝える。
(3) 取引の内容を明確に伝える。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
(1) 納期を明確にしましょう!
弁護士は多数の案件を抱える中で、納期や金額を見ながら受任できるか否かを判断します。 2営業日以内の案件と1か月の案件では、報酬金額が同じでも雲泥の差があります。「弁護士は忙しそうだから、どこまでお願いしてよいのだろう・・・」
このように遠慮される方もいらっしゃいますが、まずは率直に希望を伝えてみましょう。 弁護士としても、空気を読んで進めるのはなかなかつらいところがあります。 納期を明確に伝えることで、ミスマッチを防ぐことができます。
(2) 作業内容や懸念点を明確にしましょう!
作業内容は見積もりを行う上でとても重要です。2ページのリース契約書のチェックか、50ページ近くにもなるM&A契約書のゼロベースでのドラフティングかによって、作業時間や費用が大きく変わります。
契約書業務といっても、ゼロから契約書を作成する業務なのか、相手方から提示され、ほぼ修正できない契約のチェックなのか、契約交渉上のアドバイスがほしいのか、依頼者様によってニーズが異なります。
また、契約書の作成・チェックを弁護士に依頼する場合、何らか懸念があってのことだと思いますので(例えば、納期遅延による損害賠償リスクが気になる等)、その懸念も明確にお伝えしましょう。具体的であればあるほどよいですが、どこをチェックしていいかわからないため、ひとつずつレクチャーしてほしいといった要望でもよいです。
これらをうまく伝えられれば、より精度の高い見積りが期待できます。
(3) 取引の内容を明確に伝えましょう!
「利用規約を作ってください」こういったご依頼は非常に多いです。 ただ、利用規約といっても、BtoC取引の利用規約なのか、英語塾の利用規約なのか、無償アプリの利用規約なのかによって作成する内容は大きく変わります。
①有料サービスか否か、②国内取引に限定されるのか、③契約の相手方は消費者か事業者か、④取引によってどのようなことを実現したいか等を正確に伝えないと、保守的な見積もりを出すということに繋がります。
逆に、取引のイメージが湧けば、「過去に似た取引で契約書を作ったことがあるな。安く速くできそうだ」という判断にも繋がります。
3.さいごに
意外に思われる方が多いのですが、契約書はリスクをゼロにするものではありません。 限られた時間や費用の中で、相手方との交渉を通じて、リスクを最適化するものです。 リスクを最適化するには、状況やリスクを整理し、取捨選択をしていく必要があります。今回の記事において述べた点はリスクの最適化を上手に行うための視点でもありますので、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。 本記事を読んでくださった方が上手に法的リスクと付き合うことができるようになることを心より祈念しております。