フリーランスの方が契約書を作成すべき理由
法務


働き方としてフリーランスという形を選択した場合、自分自身が事業主として発注者等との間で契約を締結する機会が増加します。
このような契約の機会において、フリーランスの方は、契約書の作成を行うべきか否かを検討することになると思います。

フリーランスの方の中には、(i)契約書を作成する手間や(ii)契約書の内容を交渉する中で案件を失注してしまう可能性を考慮し、契約書を作成しないという選択をする人も少なくないように思います。
しかし、基本的にはフリーランスの方も契約書を作成すべきであると考えます。

本記事では、フリーランスの方が契約書を作成すべきであると考える理由と、契約書作成の際に留意すべき点を記載します。

この記事の目次

一般論としての契約書を作成する理由

そもそも何故契約書は作成されるのでしょうか。

民法の原則に従えば、契約書という書面を作成しておくことは、基本的に、契約の成立のために必要不可欠の要件ではありません。

契約書が作成される主要な理由としては、次の2つが挙げられると考えます。

・契約書が存在することに「契約書に記載された内容の契約が締結されたことを示す機能」があること

・契約書の作成という行為に「契約書を作成する過程で契約条件に関する認識の擦り合わせを行い、それによって将来のトラブルを防止する機能」があること


まず、契約書を作成しなくても契約が成立することが民法の原則であるとしても、事後的に契約成立の有無が争われた場合には、契約の成立を容易には証明できない事態に直面する可能性もあります。

契約書を作成する主要な理由の1つとして、契約書を作成することで、事後的に契約がなかったこととされる事態を避けられる可能性があることがあげられます。

次に、フリーランスの方に限らず、契約を締結しようとする際には、契約内容の大枠については互いに合意しているものの、細かい部分についてまでは意識が向いていないことが少なくありません。

契約書を作成することで、契約内容の細部に意識を向けて契約条件の擦り合わせを行い、それによって将来的なトラブルを防止できる可能性があります。これも契約書を作成する主要な理由の1つであると考えます。

フリーランスの方が契約書を作成しない場合のリスク

本記事の冒頭で「フリーランスの方も契約書を作成すべきである」と記載した理由も、上記の「一般論としての契約書を作成する理由」の2つと関係します。

まず、フリーランスの方が、発注先等から発注を受けて契約書を作成しないまま業務を開始してしまった場合、事後的に契約がなかったことにされるリスクが存在します。

事後的に契約がなかったこととされてしまうと、既に開始していた業務に費やした時間や費用が無駄になってしまいます。また、機会損失も生じます。

また、フリーランスの方が契約書作成を通じた契約条件の擦り合わせを怠ってしまうと、フリーランスの方が予期せぬトラブルに巻き込まれてしまうリスクがあります。

実際に、内閣官房日本経済再生総合事務局が公表しているフリーランス実態調査結果によれば、発注先等とのトラブルを経験したことのあるフリーランスの方が約4割に達しているようです。

そのため、フリーランスの方にとっても、契約書の作成を通じて発注先等との間で契約条件に関する認識の擦り合わせを行っておくことは重要であると考えます。

フリーランスの方が契約書に記載すべき内容(損害賠償額の制限など)

上記のとおり、フリーランスの方は契約書の作成を通じて発注先等との間で契約条件に関する認識の擦り合わせを行う方が良いと考えます。

特にフリーランスの方が認識の擦り合わせを行っておく方が良いと考えられる契約条件は、次のとおりです(ここでは特に重要と考える3つを紹介します。)。

・業務の内容
・報酬の支払条件及び支払期限
・損害賠償責任


まず、基本的な契約条件として、フリーランスの方がなすべき業務の内容は確認しておく必要があります。

業務の内容としては、「何をする必要があるか」だけではなくて「何が業務の対象外か」も確認する必要があります。

また、厳密には「業務の内容」には含まれないかもしれませんが「フリーランスの加が何らかの結果を保証するか否か」という点についても、認識の擦り合わせを行う必要があると考えられます。

次に、フリーランスの方に支払われる報酬の支払条件及び支払期限についても認識の擦り合わせが必要になります。

この点の認識の擦り合わせを怠ってしまうと、修正作業等を何度も要請され、いつまで経っても報酬が支払われない状態に陥ってしまう可能性があります。

フリーランスの方に限らず、契約を締結する際には、報酬の金額には自然と意識が向く一方で、その報酬が、いつ、どのような条件のもとで支払われるのかには意識が向きにくい側面があるため、注意が必要です。

そして、万が一、発注先等に損害を与えてしまったような場合に備え、損害賠償責任の範囲や損害賠償額の制限についても認識を擦り合わせておく必要があると考えます。

損害賠償責任の範囲に関しては、フリーランスの方が損害賠償責任を負担する場面を主観によって限定する方法と、賠償範囲を客観的に限定する方法が考えられることから、その2点を意識すると良いと考えます。

たとえば、損害賠償責任を負担する場面をフリーランスの方に「故意又は重大な過失」がある場合に限定した上で、賠償範囲を「通常の損害」に限定することなどが考えられます。

また、フリーランスの方が負担する損害賠償額の上限については、「損害が発生するまでに発注先等から実際に受領した金額」を上限額とすることなどが考えられます。

最後に

本記事では、フリーランスの方も契約書を作成すべきであると考える理由を記載すると共に、契約書を作成する際に検討すべき事項を3つ取り上げました。

契約書を作成することで、将来トラブルに遭遇するリスクを軽減又は回避できる可能性があります。

本記事が、これから契約を締結しようとするフリーランスの方の参考になれば幸いです。

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