取引先から訴えられた場合 (訴状が届いたらどのように対処していくか1・確認編)
法務


ビジネスを行っていく上で取引先とトラブルになることは、ないに越したことはありませんが、どうしても起こり得るものです。
このようにトラブルになった場合、(例えば)契約上の報酬や損害賠償を巡ってお互い粘り強く交渉をするも、お互いの妥協点を見出せなければ、結果として、取引先から訴訟を提起されることがあります。また、突然、相手方から訴訟の提起をされて訴状が届くということもないとまでは言えない話です。

取引先など相手方から訴えられた場合(民事訴訟)、どのような流れになるのか、概要だけでも知っているのと知らないのでは、その後の対処に違いが出てくるかもしれません。ここでのマインドとしては、楽観的になってはいけませんが過度に不安になる必要もない、ということが重要です。

この記事の目次

1.訴状の送達(裁判所から郵便が届いたら、、、)

訴訟の提起は、原告が裁判所に訴状等の必要書類を提出し、裁判所が受理・審査をして、裁判所から被告に訴状(副本)等の一式を特別送達という方法により郵送します(訴状の提出から被告のもとに訴状が届くまで、通常およそ1~3週間程度かかります。)。
なお、140万円以下の請求は簡易裁判所、140万円を超える請求は地方裁判所に訴訟を提起するという管轄による違いがあります。

そして、裁判所からの封筒には、訴状、証拠説明書(提出された証拠の内容や立証趣旨などが記載されています。)、証拠(それぞれ「甲第〇号証」とナンバリングがされています)、参考としての答弁書の雛形(なお、使用は必須ではありません)、裁判手続などの説明書の他、「口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」(以下、単に「呼出状」といいます。)が封入されています。
まずは、この呼出状を見ることが重要です。

2.呼出状を確認

呼出状には、答弁書を提出するよう指示が記載されているほか、事件の担当部、第一回口頭弁論期日(裁判手続が行われる日のことを「期日」と呼びます。)の日時・場所・答弁書の提出期限(提出期限は期日の一週間前であることが通常です)などが記載されています。
第一回期日は、被告が訴状を受け取ってから1カ月~1カ月半程度先に予定されていることが多く、これを前提に、答弁書の提出期限や期日に間に合うよう対応していくこととなります。

ここで、「1カ月程度もある」と思われるかもしれませんが、訴状などの内容の検討や事実確認・証拠収集(これらを含む社内調査)をして、本業と並行してしっかりとした答弁書を作成・提出することは容易ではなく、それなりに時間がかかるものだと考えた方がよいです。
なお、弁護士に依頼する場合であっても、相談・受任から答弁書の提出までに、弁護士との相談・打ち合わせが少なくとも1~2回、打ち合わせ間にも電話・メール等によるヒアリングなどが必要になることを考えると、できる限り余裕をもってスケジュールを組む必要があります。

3.訴状の記載内容(概要)

訴状には、冒頭部分に事件名・原告・被告等の表示の他、主に請求の趣旨(これは原告が裁判所に対して求める判決の結論部分が記載されています)と請求の原因(契約成立を基礎づける事実など、請求の趣旨を根拠づける具体的な主張)が記載されています。
答弁書は、これらに対する反論や自己の主張を記載することになります。

4.答弁書提出の重要性

答弁書を期日前に提出した場合であれば、「擬制陳述」(被告が、第一回期日に出席して、答弁書の内容を主張したのと同様の扱いになります。)が成立するので、第一回期日については欠席することが認められます(この場合、次回期日について後日裁判所から日程調整の連絡が来ます。)。

一方、答弁書を提出せず、かつ、第一回期日を欠席した場合、擬制自白が成立し、訴状に記載された原告の言い分が認められたものとみなされ、欠席のまま判決になってしまいます(訴状において原告が請求の趣旨及び請求原因を適切に記載している限り、証拠による立証がなくとも、原告の請求が認められることになります。)。これは絶対に避けなければなりません。

そのため、呼出状記載の締め切りを徒過しないよう、まずは呼出状を必ず確認するようにしましょう。そして、答弁書の提出に向けて、事情の整理や関連資料の取得といった調査を進めていく必要があります。

また、対応の方針(原告の請求内容について反論すべきか、請求内容を認めた上で和解を希望するのかなど)を考えておく必要があります。例えば、後者であれば、ケースバイケースですが、第一回期日の前にでも原告に連絡を取って、一定の譲歩を求めた和解交渉をすることなどが考えられます。

期限までに答弁書提出が難しい場合

なお、答弁書提出期限までに、十分に事実確認ができず、答弁書の内容を記載することが困難な場合、やむを得ず、請求原因の認否について「おって認否する」などと記載して、次回期日に実質的な認否を行うことが実務上行われています。

また、もし答弁書提出期限を徒過した場合であっても、第一回期日までに答弁書を提出できれば、法的な不利益は生じませんので、最悪でも第一回期日までに答弁書を出すようにしてください。ただし、その場合には事前に、提出期限を徒過する旨を裁判所(担当の裁判所書記官)に申し出ておくようにしましょう。

このように、訴状等が届いた後のスケジュールから逆算すると、呼出状や訴状を確認した時点で、できるだけ早期に、弁護士に相談することが望ましいです。(確認後の対応の流れについては別稿にて解説致します)

※関連記事:
『取引先から訴えられた場合 (訴状が届いたらどのように対処していくか2・対応編)』

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