2021年12月24日、政府は「SDGsアクションプラン2022」を発表しました。このSDGsアクションプランは、SDGsの中で日本において特に重点的に取り組むとされる内容が掲げられています。本稿では、政府のこれまでのSDGs推進に向けた取り組みを紹介しつつ、「SDGsアクションプラン2022」の内容についてもご紹介します。
1.政府のSDGs推進に向けた取り組みの遷移
2015年9月に国連でSDGsが採択された後、日本政府は国内の体制づくり、方針づくり、そして活動の見える化に向けた施策を随時行ってきました。▼主な取り組みの遷移
2016年5月 | 総理大臣を本部長とする「SDGs推進本部」を設置 |
同年12月 | 「SDGs実施指針」を決定 |
2017年12月 | 「SDGsアクションプラン2018」発表 「第1回ジャパンSDGsアワード」開催 ※以降、毎年12月にジャパンSDGsアワードの選出と翌年向けSDGsアクションプランの発表を実施 |
2018年6月 | 「SDGs未来都市」の選出開始 ※以降、毎年6月にSDGs未来都市を追加選出 |
2019年12月 | 「改訂版SDGs実施指針」の発表 |
2021年6月 | SDGs進捗に関する自発的国家レビューを発表 |
最初に日本として重点的に取り組む内容が示された「SDGs実施指針」では、8つの重点テーマが掲げられ、各テーマに毎に国内外に向けた様々な具体的取り組み施策が計画されました。
8つの重点テーマ
①あらゆる人々が活躍する社会の実現・ジェンダー平等の実現
②健康・長寿の達成
③成長市場の創出,地域活性化,科学技術イノベーション
④持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備
⑤省・再生可能エネルギー,防災・気候変動対策,循環型社会
⑥生物多様性,森林,海洋等の環境の保全
⑦平和と安全・安心社会の実現
⑧SDGs実施推進の体制と手段
この8つの重点テーマは、毎年発表されるSDGsアクションプランでも同じようにカテゴライズされ、その時の国内外の状況に適応した具体的な取り組み施策がアップデートされてきました。
そして、「ジャパンSDGsアワード」といった民間のSDGsへの取り組みを政府が表彰する(いわゆる民間を巻き込む)施策や、「SDGs未来都市」といったSDGsへの取り組みを推進する自治体を政府が選定する(いわゆる自治体を巻き込む)施策を行い、SDGs推進の土壌形成を行ってきました。
2.SDGsアクションプラン2022の概要
参照資料:SDGsアクションプラン2022 全体版(PDF)SDGsアクションプラン2022では、従来の地球の課題解決に向けた方針に加え、新型コロナウイルスによって新たな課題が生じたことを踏まえた内容になっています。本稿ではまずテ重点テーマに応じた施策方針の基本的な考え方をご紹介します。
People 人間:
感染症対策と未来の基盤づくり(上述の重点テーマ①②)
新型コロナウイルスの感染拡大に抑え込みつつ、新たなパンデミック・脅威を予防するための「グローバルヘルス戦略」を策定することが掲げられています。そして、感染症により厳しい影響を受けた女性や非正規雇用の方々、生活困窮者、孤独・孤立状態にある方々などへのきめ細かい支援を継続することが掲げられています。
また、女性活躍・男女共同参画のさらなる推進や、学校におけるICT環境整備による教育のデジタル・リモート化を促進、次世代のSDGs浸透に向けた教育などが方針として挙げられています。
Prosperity 繁栄:
成長と分配の好循環(上述の重点テーマ③)
地域が抱える、人口減少、高齢化、産業空洞化などの課題を、デジタルの力を活用することによって解決していくことを目指し、自動配送、ドローン宅配、遠隔医療、教育、防災、リモートワーク、スマート農業などのサービスを実装していくことが掲げられています。
また、デジタルトランスフォーメーションを推進し、誰もがデジタル化の恩恵を受けられる体制を整備するとされています。
Planet 地球:
地球の未来に貢献する(上述の重点テーマ④⑤⑥)
2050 年カーボンニュートラルの実現に向けてクリーンエネルギー戦略を策定し、大胆な投資を含め強力に推進していくことが掲げられています。
また、年々増加・激化する自然災害に対応すべく、防災・減災に向けた「国土強靱化」の推進及び経験値の海外への伝授を推進したり、感染症によりマスクを始めとするプラスチック廃棄物量が増加していることを踏まえ、途上国における支援や技術協力を含め、海洋プラスチックごみ対策を推進することなどが掲げられています。
Peace 平和:
普遍的価値の遵守(上述の重点テーマ⑦)
新型コロナウイルス感染症に伴う経済的影響や生活様式の変化により、脆弱な環境に置かれた人々に影響が深刻化していることを踏まえ、DV・性暴力対策の強化や、児童虐待や子どもの性被害の防止のための取組を国内実施・国際協力の両面において推進していくことなどが掲げられています。
Partnership パートナーシップ:
絆の力を呼び起こす(上述の重点テーマ⑧)
2023年のSDGs実施指針改定を念頭に、2022年中に幅広いステークホルダーとの意見交換を行うことが予定されているほか、開発途上国・新興国に対する日本企業の進出支援等を掲げ国際的なSDGs目標達成と民間企業のSDGs推進に向けた取組を後押ししていくこととされています。
3.SDGsアクションプランが指し示すもの
SDGsアクションプランは政府のSDGsに対する取り組みの基本的な方針と各省庁主管の様々な施策が詳細に掲げられており、その中には、令和4年度予算が組まれているものもあります。政府が掲げる施策は、特にトレンドとして推し進められるものであり、課題解決に向けた社会のニーズがあるほか、補助金や助成金の対象となる可能性もあります。
つまり、SDGsアクションプランに掲げられた方針・施策は国が後押しするビジネスチャンスでもあると言えます。また、補助金・助成金に限らず、特にSDGsの取り組みにおいては官民連携でビジネスマッチングを行う動きが活発化している状況です。
4.まとめ
SDGsは2030年の達成に向けた目標ですが、その道筋は時々の情勢によって変化します(いわゆるバックキャスティング)。SDGsアクションプランは毎年更新され、新たな社会課題やニーズに対応した施策が掲げられており、新たなビジネスが生まれる可能性を持っているとも言えます。ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
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