2021年12月末現在、49の自治体(都道府県・市町村)でSDGsに関する登録認証等の制度が展開されています。
本稿ではSDGs登録・認証等制度の背景・概要と、企業目線での活用メリットをご紹介します。
- 1.自治体によるSDGs登録・認証等制度の背景
- 2.SDGs登録・認証等制度の概要(地方創生SDGs登録・認証等制度ガイドライン)
- 3.SDGs登録・認証制度の先にある「地方創生SDGs金融」
- 4.企業目線での活用メリット
- 5.まとめ
1.自治体によるSDGs登録・認証等制度の背景
2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)。日本でのSDGsの取り組みにおける重要キーワードとして地方活性化(地方創生)が挙げられています。地方創生とは地方の人口減少・過疎化に歯止めをかけて、それぞれの地域で住みよい環境の確保し、地方活性化から日本全体の活力を上げる(いわゆる持続可能なまちづくり)ための取り組みのことを指しています。
そしてこの地方創生は、地域が抱える課題を、国のトップダウンではなく、地域の自治体・地域金融機関・地域事業者が中心となって解決に向けて取り組み、そこから生み出された利益をさらに地域(地元)に投資するという「自律的好循環」によって推進することが重要とされています。
※内閣府地方創生SDGs金融調査・研究会「地方創生SDGs金融の自律的好循環形成に向けて」より抜粋
具体的には、
①自治体がSDGsに積極的に取り組む地域事業者を「見える化」し、地域金融機関からの融資やビジネスマッチングにつながりやすい環境を促し
②地域金融機関は融資(金融支援)をはじめとして地域課題解決をビジネス本業で取り組む地域事業者をサポートし
③地域事業者は地域課題解決によって得た収益を、さらに地域の活性化に投資する
この①→②→③のサイクルを通じて、地域の課題を地域中心に解決し、地域に仕事を生み、人口が増加し、まちが活性化することを目指しています。
※内閣府地方創生SDGs金融調査・研究会「地方創生SDGs金融の自律的好循環形成に向けて」より抜粋
こうした地方創生の考え方がベースとなり、上記①の具体的なアクションとして、自治体によるSDGs登録・認証等制度が誕生することになりました。 国はSDGsの登録認証等制度について、地域によってSDGsの取り組み状況や取り組み方(地域の課題とその解決へのアプローチ)が異なることを考慮し、制度に画一的な基準を設けるべくガイドラインを定め、実際の運用はそれぞれの自治体が主体となって行うよう整備しています。
2.SDGs登録・認証等制度の概要(地方創生SDGs登録・認証等制度ガイドライン)
2020年10月に内閣府から自治体に向けて「地方創生SDGs登録・認証等制度ガイドライン」が発表されました。このガイドラインの中で、SDGs登録・認証等制度は「宣言」「登録」「認証」の3つのモデル類型の中から自治体が地域の状況やSDGsの取り組み状況に応じて選択して制度構築するとされています。
各モデル類型の比較一覧は次の表のとおりです。
宣言 | 登録 | 認証 | |
概要 | 地域事業者等が地方創生SDGsに取り組む意思を宣言する | 地域事業者等が地方創生SDGsの取り組みを表明・自己評価し登録する | 第三者が、地域事業者等の地方創生SDGsの取り組みを評価し、認証する |
目的 | 地方創生SDGsへ取り組んでいる、または今後取り組もうとしている地域事業者等の奨励 | 地方創生SDGsへ取り組んでいる地域事業者等の奨励 | 地方創生SDGsへ取り組んでいる地域事業者等に対する金融機関等の支援機会の拡大 |
要件 | 地方創生SDGsに取り組む意思及び方針がSDGsの17のゴールと関連付けて明確化されていること | ||
SDGsの169のターゲットに関連した目標及び取り組み計画が示されていること | |||
目標に向かって取り組みを推進する能力・体制が整っており、それを第三者が確認できていること |
2021年12月末時点で49の自治体による制度展開がされていますが、多くの自治体が「登録」を選択している状況です。一方SDGsの取り組みを早くから行ってきた自治体では認証制度を取り入れているところもあります。
※制度展開している自治体及び類型の一覧はこちら
「登録認証等制度 構築自治体一覧」
なお、この自治体によるSDGs登録・認証制度は、制度展開が国から強制されていないことから、地域によって制度の有無に差が生じていますが、現時点でも制度導入自治体が増加しており、今後も多くの自治体で導入が見込まれることが想定されます。また、この3モデル類型にとらわれない自治体主体のプラットフォームも今後増加してくるものと想定されます。
3.SDGs登録・認証制度の先にある「地方創生SDGs金融」
自治体によるSDGs登録・認証制度は、SDGsに積極的に取り組む地域事業者の「見える化」を図ることで、地域金融機関が金融支援(融資)をはじめとしたサポートをより活発に行えるようにし、地域中心での経済循環(自律的好循環)を生み出すことがねらいとされています。そこで、地域課題の解決と経済循環に対して効果を生み出した事業モデル(スキーム)を内閣が表彰する「地方創生SDGs金融表彰制度」が2022年からスタートします。
この表彰制度によって、画期的な事業モデルが発表され、他の地域へ横展開していくことで、地方創生の具体的な動きが促進されることが期待されています。
(当該表彰制度の第1回(2022年表彰)は1月21日に募集〆切となりました)
4.企業目線での活用メリット
ここまで解説してきました自治体によるSDGs登録・認証制度ですが、企業(地域事業者)にとって、どんなメリットがあるかをご紹介します。(1)SDGsの取り組みの外部への見える化
自治体のSDGs登録・認証制度では、SDGsに取り組む地域事業者を「見える化」するべく、ホームページ等で事業者の名称や取り組み、リンク情報などを掲載しているところが多くあります。企業にとって、事業を通じたSDGsの取り組みが自治体のホームページに掲載されることは、外部のステークホルダーに対する大きなアピール材料になります。
(2)ビジネスマッチングの機会創出
自治体によっては、登録・認証を受けた事業者間で交流できる機会を創出したり、ビジネスマッチングにつなげる活動をしているところもあります。また、自治体のSDGs登録・認証を受けていることをPRすることによる事業拡大機会の創出も期待されます。(3)官民連携の機会創出、入札時の加点項目の可能性
事業者同士の連携に留まらず、産学官民のビジネス連携の機会が創出されたり、官公庁入札案件等での加点項目となる場合もあります。対外的な評価やビジネスマッチング機会創出など、自治体によるSDGs登録・認証制度には多くのメリットが存在します。地域課題の解決と社会価値を生み出す産学官民の共創プロジェクト事業が生み出される可能性をも秘めています。
5.まとめ
SDGsや地方創生に向けた取り組みは今後もさらに加速していくことが予想され、自治体によるSDGs登録・認証制度もさらなる拡大と活用が見込まれています。地域の経済発展を掲げて活動されている事業者の方々、SDGsに取り組んでいる事業者の方々、そしてこれからSDGsに本格的に取り組もうとしている事業者の方々、SDGs登録・認証制度の活用を是非ご検討ください。
ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
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