他社の「利用規約」をそのまま流用することは違法?
法務


コロナ禍になって2年が経過し、コロナ前と比較すると、私たちの生活様式は大きく変わりました。消費者動向という観点から見ると、これまで実際の店舗において対面で行われていた購買活動は、通信販売(ECビジネス)などの非対面での購買活動にシフトしつつあります。
実際に、特に物販系分野におけるECビジネスのマーケットは、2019年の10兆515億円から2020年には12兆2,300億円(伸長率約21%)と大きく拡大しております。

出所: 経済産業省「令和2年度電子商取引に関する市場調査」

物販系分野でも特にEC化率の高い「書籍、映像・音楽ソフト」(42.97%)、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」(37.45%)、「生活雑貨、家具、インテリア」(26.03%)等の販売を目的として、これから新規参入される事業者も多いものと思われます。 そこで、今回の記事は、これからECビジネスを開始するにあたって「利用規約」を作成する意義や他社の「利用規約」をそのまま流用することのリスクについて、分かりやすく解説いたします。

この記事の目次

ECビジネス以外の取引における契約書

まず、事業者と消費者との間で特定の物品の売買について合意がなされた場合、「申込の意思」と「承諾の意思」が合致したことになりますので、たとえそのやり取りが口頭であったとしても契約(この場合には、「売買契約」になります)は成立していることになります。

ただ、口頭だけの合意であれば、後日「返品できる・返品できない」「送料込みの価格である・送料別の価格である」など当事者間で係争に発展するリスクがあります。そのため、このようなリスクを回避するために、「契約書」を取り交わして、後日「言った」「言わない」の問題が生じないようにするのが一般的かと思います。

しかし、ECビジネスにおいては、このような「契約書」を不特定多数の方一人一人と締結することは現実的ではありません。そのため、多くの事業者が予め取引の条件を全て「利用規約」に規定しておいて、消費者はその「利用規約」を理解し、これに「同意」することによって、契約を成立させているのが一般的です。

「利用規約」を作成する意義・改定する意義

では、私たちが消費者の立場に立って、特定の商品をECサイトで購入しようとする時、「利用規約」の全ての条文に目を通して納得してからでなければ「同意」しないという方はいらっしゃるでしょうか。多くの方が「利用規約」は読まずに「同意」ボタンをクリックしているのではないか、と思われます。

では、どうせお客様に読まれない「利用規約」なのであれば、作成しなくても良いのではないか、と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。仮に「利用規約」がない状態で売買がなされ、後日当事者間で見解が異なった場合に、これを解決する手段は当事者による「話し合い」しかなくなってしまいます。

しかし、ここで、「利用規約第〇条にこのように書いてあります」と根拠を示すことができれば、お客様との間で円満に解決する大きな助けになると思われます。
そのような観点から、

ECビジネスにおいて「利用規約」を予め作成しておくことの重要性は高いと言えるでしょう。



また、ECビジネスを進める中で、「利用規約」作成当初は想定できなかったクレームがお客様よりなされることも少なくありません。一度「利用規約」を作成したからそれで完成とするのではなく、現在の「利用規約」で対応できない場合には、対応可能なように随時改定しておくことも忘れないようにしましょう。

他社の「利用規約」を流用したことが著作権侵害となった事例の紹介

ここで、「利用規約」の無断利用に関する裁判例がありますので、ご紹介させていただきます(平成25年(ワ)第28434号「著作権侵害等差止請求事件」)。この事件は、時計修理サービス業を営んでいた原告が同じく時計修理サービス業を営んでいた被告に対して、原告の「利用規約」を無断で使用したことについて、著作権侵害を根拠として差止及び損害賠償を求めた事案になります。

ここで、著作権侵害の前提となる「著作物」とは、著作権法上「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されております(著作権法第2条1項1号)。

裁判において、「利用規約は著作物に該当するのか」という点が争われましたが、裁判所は、「規約としての性質上、取り決める事項は、ある程度一般化、定型化されたものであって、これを表現しようとすれば、一般的な表現、定型的な表現になることが多いと解される。このため、 その表現方法は、おのずと限られたものとなるというべきであって、通常の規約であれば、ありふれた表現として著作物性は否定されることが多いと考えられる。

しかしながら、・・・・その規約の表現全体として作成者の個性が表れているような特別な場合には、当該規約全体について、これを創作的な表現と認め、著作物として保護すべき場合もあり得るものと解するのが相当」と判示され、本事案では、被告による著作権侵害が認められました。

「利用規約」には、定型化された表現も多く存在する一方で、そのサービス特有の規定など、作成者の個性が表れている場合も多く存在するものと思われます。特に、これまで存在しなかったような新しいビジネスにおける「利用規約」の場合には、定型化された表現ではなくそのサービス特有の独特の規定が設けられていることが多いため、特に留意が必要かと思われます。

まとめ

今回は、拡大するECビジネスにおいて、主に新たなに事業展開をされようとする事業者の方を対象に「利用規約」の重要性や著作権侵害について解説をさせていただきました。これから「利用規約」を作成される方にとってご参考にしていただけますと幸いです。

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