【相続登記はお済みですか月間】相続手続きをスムーズにするための“終活”について、手続面を中心に解説します。
法務

日本司法書士会連合会(日司連)と各都道府県の司法書士会では、毎年2月を「相続登記はお済みですか月間」と定め、相続登記の促進を図っています。
本稿では、相続が発生したときに、相続人の方々がスムーズに手続きできるようにするための事前の準備、いわゆる「終活」について、手続面を中心に解説します。

この記事の目次

1.人が亡くなった後に行う手続きの内容

死亡届
まず人が亡くなった後に行う事務手続きを一覧でご紹介します。

主な手続名 期限 手続先
各種届出 死亡届
死体火葬・埋葬許可申請
死亡を知った日から7日以内 死亡地・本籍地・住所地の市区町村役場
年金受給停止 死亡後、速やかに
(国民年金は14日以内)
社会保険事務所
市区町村役場
後期高齢者医療資格喪失届 死亡から14日以内 市区町村役場
国民保険保険資格喪失届 死亡から14日以内 市区町村役場
介護保険資格喪失届 死亡から14日以内 市区町村役場
雇用保険受給資格者証の返還 死亡から1カ月以内 受給していたハローワーク
(雇用保険を受給していた場合)
公共料金の名義変更 相続確定後速やかに 電力会社・水道局等
運転免許証の返却 死後速やかに 最寄りの警察署
パスポート 死後速やかに 都道府県旅券課
各種請求 生命保険金の請求 死亡から2年以内 保険会社
国民年金の死亡一時金請求 死亡から2年以内 市区町村役場
(生計が同一である等要件があります)
国民健康保険加入者の葬祭費請求 葬儀から2年以内 市区町村役場
健康保険加入者の埋葬料請求 死亡から2年以内 健康保険組合
社会保険事務所
高額医療費の死後申請 対象の医療費の支払から2年以内 市区町村役場・健康保険組合・社会保険事務所
国民年金の遺族基礎年金請求 死亡から5年以内 市区町村役場
(支給には対象者要件があります)
国民年金の寡婦年金請求 死亡から2年以内 市区町村役場
(支給には対象者要件があります)
厚生年金の遺族厚生年金請求 死亡から5年以内 社会保険事務所
遺産整理 遺言書の検認 遺言書の発見後速やかに 被相続人の住所地の家庭裁判所
(公正証書遺言は検認手続不要)
預貯金の名義変更 相続確定後速やかに 金融機関
株式の名義変更 相続確定後速やかに 証券会社
不動産の名義変更 相続確定後速やかに 法務局
自動車所有権移転 相続から15日以内 陸運局支局
電話加入権の名義変更 相続確定後速やかに NTT
相続放棄 死亡を知ってから3カ月以内 被相続人の住所地の家庭裁判所
税務申告 所得税準確定申告 死亡から4カ月以内 住所地の税務署
(準確定申告が必要か否かは税務署へご確認ください)
相続税の申告 死亡日の翌日から10カ月以内 住所地の税務署

様々な手続きがあり、期限も定められていることから、出来ることについては事前の準備がされていると、相続人がスムーズに手続きを行うことができます。 そして遺産整理については、財産を誰にどれだけ承継させるか想いを形にして、相続人が揉めることがないような準備をすることが重要になってきます。

2.相続がスムーズに進むための終活の全体像

ペン
亡くなった後の相続手続きがスムーズに進むようにするためのキーワードは「整理」です。

(1)財産の整理

まず、ご自身の財産(資産)を一覧にしておきましょう。相続人からの相談でよくあるのが「被相続人の財産がどれだけあるのかわからない」といったお悩みです。亡くなってから数年経ってから発見されるということもあります。また、積極財産(貯金や資産)だけでなく、消極財産(債務や借入)も一覧にしておきましょう。相続開始後に債権者からの督促連絡で被相続人に債務があることが判明したという相談を受けるケースもあります。

なお、債務は遺産分割の対象ではなく、相続人が法定相続分の割合に応じて承継します。(遺言で相続分の指定をした場合や遺産分割で債務の承継割合を決定したとしても、債権者が承認しない限りは、債権者は法定相続分の割合で相続人に請求することができます)

(2)身の回りの整理

続いて、身の回りのモノやデータの整理整頓をしていきましょう。何でも保管してしまう方は、終活のタイミングで思い切った「断捨離」が必要かもしれません。また、パソコンや携帯電話、外部記憶媒体に保存されているデータも整理しておきましょう。前項の債務に関連して、サブスクリプションなど利用している有料サービスなどもまとめておいた方が良いでしょう。

(3)亡くなる前、亡くなった後に希望することの整理

介護・認知症・終末期医療など、人生の最期に向かって様々な状況がおきる可能性があります。
・認知症になったら、介護が必要になったらどのようなサポートを受けたいか
・終末期医療になったら、告知や延命治療、臓器提供を希望するか
など、ご自身の希望をエンディングノートに記したり、あらかじめ大切な人に伝えておくと良いでしょう。

また、亡くなった後に葬儀はどのようなスタイル(家族葬・一般葬など)で行いたいか、葬儀には誰を呼ぶのか、お墓を希望するか、お墓の管理を誰に託すかなど、ご自身の想いや希望をエンディングノートに記して大切な人に伝えたり、あらかじめ連絡先リストを作成する・葬儀場の見積や事前契約しておく等の行動をしておくことも、ご自身の最期に向けた整理になってきます。

3.老後の財産管理と亡くなった後の財産の振り分けの手段

遺言書
最後に、終活における様々な「整理」の中でも大きなテーマとなる老後の財産管理と亡くなった後の財産の振り分け手段について解説していきます。 財産管理と財産の振り分け手段には大きく以下の方法が挙げられます。

(1)生前贈与

対象の財産の所有権(管理する権限と処分する権限の両方)を相手に贈与することを指します。一番シンプルでイメージしやすい方法ですが、留意ポイントがあります。

まず、贈与する人が認知症など意思表示が困難な場合は手続できない点、そして相続による取得に比べて税金が多く発生する可能性がある点です。贈与に伴って発生する税金は「贈与税」のほかに不動産の場合「登録免許税」「不動産取得税」も発生します。(登録免許税は相続の際に比べ贈与は税率が高く、不動産取得税は相続によって不動産を取得した場合には発生しません。)

なお、贈与税については、相続時精算課税という制度があります。贈与財産が2500万円以内で被相続人の総財産が基礎控除内である場合などは贈与税・相続税ともに発生せず有効な制度活用が出来ますが、暦年課税が利用できない等注意する要件もあるため、事前に要件をしっかり整理することが肝要です。

また、要件に適合する場合に贈与税が非課税となる制度(住宅取得資金贈与・教育資金贈与・結婚子育て資金贈与・夫婦間の居住用不動産の贈与など)もありますので、ご自身の家族構成や用途、想いに沿った制度を活用することで生前に財産の整理を図ることが出来ます。

(2)任意後見・死後事務委任

任意後見とは、本人に十分な判断能力があるうちに、判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ本人自らが選んだ人(任意後見人)に、代わりにしてもらいたいことを契約(任意後見契約)で決めておく制度です。

後見人は財産の管理や、老人ホームの入所手続きや病院の入退院手続きなどの「身上監護」を行うことが出来ます。
留意ポイントとしては、「判断能力が低下したとき」から効力を発揮する点(判断能力がある元気な時には財産管理を任せられない)、後見制度の性質上、財産の引き出しや、売却は本人の生活に必要な場合にしか行うことができない点、家庭裁判所の関与(監督が入ったり報告が義務付けられている)がある点などが挙げられます。

死後事務委任とは、亡くなった後の諸手続、葬儀、納骨、埋葬に関する事務等についての代理権を付与して、死後事務を委任することを指します。身近に頼れる家族が居ない場合に活用される契約です。

(3)遺言

遺言は、本人(遺言者)が自分の財産について誰に何を残したいのか、最終の意思表示をするものです。ご自身で作成可能な自筆証書遺言や公証役場にて作成する公正証書遺言などがあります。公正証書遺言で作成する場合でも、法律の定めの範囲で遺言者の自由な意思を反映させることが出来るため、亡くなった後の財産の振り分け方法として最も活用しやすい方法です。
遺言は遺言者の亡くなった後に効力が発生します。そのため、生前の財産管理に活用することはできません。

(4)民事信託

民事信託は、本人(委託者)がある特定の財産を信頼できる人(受託者)に託して名義を移転し、信託契約で定めた目的に従って財産管理、財産活用や財産承継を行うことが出来る制度です。生前の財産管理と亡くなった後の財産の振り分け(承継)をあらかじめ契約で定めて、元気なうちから財産の管理を任せることが出来るハイブリットな仕組みになっています。

留意ポイントとしては、契約内容を柔軟に定めることが出来る反面、ご自身で自力で契約書を作成するのは困難な点、後見制度にあるような身上監護の機能は信託契約には無い点があります。

大きく4つの方法をご紹介しましたが、財産の状況や終活に対する思いは人それぞれです。ご自身の状況に合った方法を選択することが終活の実現に大きく前進します。

4.まとめ

令和6年4月1日から相続登記が義務化されることが決定しましたが、所有者不明土地の問題を解決させることが主目的であり、民法の原則(私的自治)の例外措置にあたることから、相続手続きをスムーズに行うための「終活」が重要なのは今後も変わりません。
出来ることから終活をはじめていきましょう。

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