1.事業が立ち行かなくなったときに考えること
コロナ禍やそれ以外の環境変化で事業が立ち行かないという会社様もあるかと思います。環境が変わる中で、事業が立ち行かなくなるのは、社長様の責任ではなく、ひとえに、時流ということかと思います。ただ、やはり、責任はどうであれ、家族、従業員、取引先のことを考えると、頭を抱えてしまわれる社長様も多いのではないかと思います。それだけ、経営者というのは、上手くいっているときは良いですが、立ち行かなくなった際には孤独で大変かと思います。
しかし、上手くいかなかったとしても、再度チャレンジすれば良いと割り切ることも必要です。
家族、従業員、取引先も、今まで誠実に経営を続けてきた姿勢は見てくれていますので、きっと、応援してくれるはずです。 このように、事業が立ち行かなくなった時にも、いったんリセットし、再度チャレンジできるという選択肢があることを思い出して頂ければと思います。
2.会社も個人も破産しない方法とは
経営者の多くの皆様は、会社の事業が立ち行かなくなった際に、破産という言葉がよぎるのではないでしょうか。確かに、破産することによって、今までの債務を支払わなくてよいというメリットが得られますが、同時に、多くの方に迷惑をかけてしまうというイメージがあるかと思いますので、避けられるのであれば越したことはありません。会社も個人も破産をしないで良い方法というのは、「私的整理」です。
私的整理というのは、金融機関と話し合いを行って、支払える範囲で返済し、それ以外の債務を免除してもらうという方法です。その際には、金融機関にとっても、破産より有利である(経済合理性)という条件が必要になります。そのために、会社の事業をスポンサーに譲渡する形で事業を残すという方法が主流といえます。
また、個人(保証債務)についても、経営者保証ガイドラインに基づく債務整理により、破産せずに、しかも、事情によっては破産よりも多くの財産を残せたり、ご自宅を残すことも可能となります(別稿をご参照ください)。
事業が立ち行かなくなった場合も、すぐに破産と考えるのではなく、「私的整理」という選択肢を思い出して下さい。なお、私的整理に関するご相談は、お近くの中小企業再生支援協議会または弁護士等の専門家にお問い合わせいただければと存じます。
3.事例
(1)当職が経験した事例の一部をご紹介します。小さな出版社を営んでいた会社がありましたが、出版不況の折に、コロナ禍も重なり、資金繰りが厳しくなったしまったことから、金融機関に相談して、返済猶予を受けておりましたところ、それでも返済が難しくなってしまったことから、会社の事業を譲渡し、私的整理によって、金融機関と協議の上、会社も破産せず、個人も破産せずに、ご自宅を残すことができました。
(2)また、精密機械を製作する会社についても、同様に、資金繰りが思わしくなく、金融機関に相談して、経営改善計画に基づいて、利息だけの返済を続けていましたところ、コロナ禍による環境変化に耐えられず、返済が厳しくなり、同じく、会社の事業を譲渡し、私的整理により、金融機関と協議し、会社も破産せず、個人も破産せずに、ご自宅を残すことができました。
4.最後に
冒頭にも記載しましたが、事業が立ち行かなくなったとしても、それは再チャレンジのきっかけともいえます。是非、社長様には、破産せずに事業もご自宅も残せる可能性がある「私的整理」という解決策も頭に入れて頂ければと思います。
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